公務員に転職してステップアップをしたいと考える社会人のみなさん、試験対策は進んでいますか?
忙しく働きながらの試験勉強ですから、ポイントをしっかり押さえてできるだけ効率的に行いたいものですね。
特に論文試験は、合否を決めるうえで大きなウエイトを占めることが多いものですが、教養試験と比べると対策しづらいと感じる人もいるようです。
そこで今回は、社会人採用(経験者採用)試験の論文対策について詳しく解説します。
ぜひ参考にして、合格を勝ち取りましょう!
職務経験論文の出題例
経験者採用の職務経験論文では、どのようなことが問われているでしょうか。
出題例をいくつか見てみましょう。
2023年
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた職場での取組について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。
※採用区分とは、1級職は係員の業務を行う職、2級職(主任)は係長職への昇任を前提とした係長職を補佐する職、3級職(係長級)は係長、担当係長、主査又はこれに相当する職とする
<特別区>論文過去問を参照
2022年
あなたが千葉市職員として採用された場合、千葉市のどのような課題の解決に貢献できますか。
これまでの職務経験を通し、あなたが培ってきた能力・技術を交えて述べなさい。<千葉市役所>論文過去問を参照
2022年
(1)あなたのこれまでの民間企業等における職務経験を述べなさい。
(2) その中で、「もっとも成果を上げたと考える事例」と「その時期」を挙げ、その事例において「あなたが果たした役割」、「苦心した点や創意工夫した点」、「得られた評価や能力・強み」などについて、具体的に述べなさい。
(3)(1)、(2)を踏まえて、あなたの職務経験、能力などを、県行政のどの分野で、どのように活かしていきたいか、県の施策を例に挙げて具体的に述べなさい。
<福岡県庁>論文過去問を参照
こうして見てみると、共通項が見えてきます。
職務経験論文では、
②職務経験を活かして、入庁後にどのような課題解決を図れるか
この2点を整理して述べることが求められているのです。
職務経験の分析
社会人のあなたは、これまで様々な職務経験を積んできたことでしょう。
まずはこれまでを振り返って、職務で経験したこと、成し遂げたこと、学んだことなどを思いつくままに書き出してみましょう。
ただし、そのすべてをそのまま羅列しても論文には使えません。
職務経験論文に書く経験は、「何を求められているか」を考えた上で厳選する必要があるのです。
求められていない経験をいくら書いても評価されることはありません。
自治体が社会人経験者に求めているもの、それは言うまでもなく「即戦力としての貢献」です。
新規事業や強化したい事業、抱えている課題の解決などについて、豊富な知識や経験を持ち、職員のリーダーとして働ける人材が求められているのです。
上で挙げた過去問でも、
とありましたね。
ですから、自分の職務経験を分析するには、まず「その自治体が何についての即戦力を求めているか」を知り、それに沿って考えることが必要です。
それを把握していることは、その自治体の職員になって貢献したいという意欲の表れとしても評価されます。
また、職務経験を分析するにあたり、事前準備として以下の方法をおすすめします。
志望する自治体の現状や動向を把握する
志望する自治体の現状や動向について詳しく調べ、「どんな課題を抱えているか」「どんな事業を行おうとしているか」などをしっかり把握しましょう。
例えば、インターネットで「千葉県 課題」と検索すると、「千葉県が目指す姿(基本構想編)」「千葉県を取り巻く現状・課題等」など、千葉県が出している情報がヒットします。
こうした情報を読み込んでおくことで、志望自治体の現状や課題を把握することができるようになります。
そして、それに対して自分の職務経験をどう活かせそうか、という流れで考えていくと良いでしょう。
受験する選考区分の職務内容を把握する
自分が志望する選考区分の「職務内容」を把握していることも大前提です。
例えば、特別区の一般事務では、主な職務内容として「企画調整業務、システム関連業務、広報広聴関連業務、産業振興関連業務、教育関連業務、福祉関連業務、公会計事務等」と示されています。
この業務の中で、特に自分の職務経験を活かせそうな分野について、可能な限り複数考え、経験を整理しておくと良いでしょう。
もちろんその際、前述した「自治体の課題・施策」についても念頭に置いておきましょう。
リーダーとしての経験・資質をアピールする
経験者採用の職務経験論文では、経験者ならではのリーダー性をぜひアピールしたいものです。
特に、採用区分が「主任」や「係長級」であればなおさらです。
まずは、これまでの職務経験の中で、あなたがリーダーとして業務にあたった経験を洗い出します。
管理職の経験がなくても、大きなプロジェクトでなくても構いません。
業務管理、シフト管理、後輩の指導など、自分が責任者となって他のメンバーとともに業務を果たした経験があれば、材料としては十分です。
複数部署との情報共有の経験、顧客折衝などの経験も振り返ってみましょう。
謙遜は日本人の美徳と言われますが、ここでは謙遜は不要です。
「こんな経験じゃ大したことない…」と卑下することなく、自分の経験を客観的に分析して堂々とアピールすることが大切です。
分析する際は、以下の4点を押さえましょう。
②どんな業務を(会社にどう貢献するものか、どんな問題点のあるものかなど)
③どんな風に進めて(行った工夫、問題解決方法など)
④どんな成果を得たか(具体的な成果、成果を表す数字、第三者からの評価など)
これをつないで文章化すると、以下のように職務経験をアピールすることができます。
この業務は会社の〇〇〇のためには喫緊の課題でしたが、〇〇〇の影響で推進が滞った状態でした。(①②)
そこで、〇〇〇や〇〇〇を改善し、新たな試みとして〇〇〇を導入するなど、現状の打破に努めました。
当初はチーム内でも意見が分かれるなど難航しましたが、〇〇〇を意識して取り組むことで次第に成果が表れ(③)、1年後には〇〇〇という結果を出すことができました。(④)
文字数の目安は、300~400字程度と考えれば良いでしょう。
書いてみると分かりますが、「こんな小さな仕事…」と思っていても、きちんとした文章に書いてみると立派なアピール文になるものです。
まずは諦めずに、文章にしてみることを意識してください。
その際、困った経験や失敗したことに触れても構いませんが、そこから学んで成長したことに結びつけるのを忘れないようにしましょう。
本番でどんな出題をされても、この部分はたいてい使い回せるはずです。
暗記する勢いで書き込んでおきましょう。
事前練習を徹底する
志望自治体について調べ、自分のアピールポイントを洗い出したら、あとはひたすら実際に書いて練習しましょう。
まずは過去問にあたり、本番どおりに時間を計って書いていきましょう。
文字数は最低でも指定字数の8割以上は埋め、可能であれば9割以上を目指したいところです。
もし、時間内に書き終わらなかった場合には、少し時間をおいて、書けるまで再トライしましょう。
手に入るすべての過去問の練習が終わったら、次は最新の参考書などを参考に、出題されそうな時事問題を取り入れて書いてみることをおすすめします。
また、傾向の似た近隣自治体の過去問を使って書いてみるのも一手です。
なお、下記の記事では公務員試験での論文の書き方をまとめています。
公務員試験受験生は是非参考にしてください。
次に、問題にあたる際に意識すべきこととしては、以下のものが挙げられます。
何を問われているのかを押さえる
問題にあたるときは、問題文をよく読んで、「何を問われているのか」をはっきり押さえてから書きはじめましょう。
例えば、先ほども例に挙げた以下の問題文について考えてみます。
2023年
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた職場での取組について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場として論じてください。
※採用区分とは、1級職は係員の業務を行う職、2級職(主任)は係長職への昇任を前提とした係長職を補佐する職、3級職(係長級)は係長、担当係長、主査又はこれに相当する職とする
<特別区>論文過去問を参照
この問題文を読むと、回答にあたってのポイントは以下の3点であることが分かります。
②テーマについて、まず「自分の職務経験」を述べる
③経験を踏まえて「採用区分における立場」から述べる
「そんなことは見れば分かるし当たり前だ!」と思われるかもしれませんが、書くことに夢中になってしまうと、意外と「抜け」や「ズレ」が生じやすくなるものです。
上記の例で言えば、しっかり読まないと「ワーク・ライフ・バランスの実現」というテーマが飛んでしまって、ワーク・ライフ・バランスとは関係ない業務の経験や意気込みなどを書いてしまうことになりがちです。
また、「採用区分における立場として」とあるのに、主任の立場で書くべきところを係員的な立場の経験に終始してしまう、ということもあり得ます。
過去問でも、もちろん本番でも、問題にあたるときには問われていることに線を引くなどして、明確に意識しながら読んでいきましょう。
論文対策は面接対策にもなると心得る
過去問を解く練習とは別に、以下のものも文章としてまとめておくことをおすすめします。
・最も力を入れて取り組んだ仕事
・最も大きな仕事上の失敗とそこからの学び
・自分の長所と短所
なぜこれらについてまとめておくべきなのかと言えば、これらが職務経験論文に活かせる場合が多くあり、後々面接対策としても非常に役立つことになるからです。
少しずつで構いませんので、志望先の職務内容や求められている人物像などとリンクさせながらまとめておきましょう。
第三者のアドバイスを受ける
せっかく練習で書いた論文も、書きっぱなしでは不十分です。
信頼できる第三者に読んでもらい、アドバイスを受けることで、初めて意味のある練習となります。
まわりに適当な人がいない場合は、公務員試験のオンライン講座などもありますので、利用してみてもよいかもしれません。
アドバイスをもらったら、それに沿ってもう一度書き直します。
再度見てもらえるようなら、ぜひ何度でも見てもらって、ブラッシュアップを図りましょう。
模範答案集の紹介
今回は、社会人採用(経験者採用)試験の論文対策の方法について解説しました。
「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」と言います。論文対策も同じです。
まずは、志望自治体の現状と課題を知ること、そして、そこで役立てられる自分の経験を分析・整理することが、合格への近道です。
そのためにはある程度の時間が必要ですので、受験を決めたらすぐにでも対策を始めましょう。
この記事がその一助となれば幸いです。
ご検討をお祈りしています。
なお、論文対策が遅れている人は、社会人採用専門予備校Gravityさんが提供している模範答案集が参考になるかと思います。