<特別区>論文模範解答例2024

特別区の論文で出題が予想されるテーマの模範解答例(合格者答案)を公開しています。

現在公開しているテーマは下記の通りとなっています。

・男性の育児参加
・高齢者の社会的孤立
・行政の効率化
・少子化対策
・健康寿命の延伸
・防災対策(災害対策)
・高齢者が住みやすい街
・健康づくり
・地域コミュニティの活性化
・子どもの成長支援
・人口減少
・食品ロスの削減
・AIの利活用

特別区以外の地方公務員試験でも出題頻度が高く、重要なテーマです。

論文の対策方法としては「予想されるテーマの模範解答を何度も読み込むこと」が最も効率的であるため、特別区Ⅰ類の受験生はこの記事をぜひ参考にしてください(Ⅲ類・経験者・氷河期・障害者採用は出題傾向が大きく異なるため責任を負いかねます)。

ちなみに、下記の記事では「公務員試験の論文頻出テーマ」をまとめています。

全国の市役所・県庁の出題傾向を徹底的に分析しているので、ぜひ読んでみましょう。

男性の育児参加

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日本においては、家事や育児の負担が依然として女性に偏っており、女性が自身のキャリアの継続と家庭での家事・育児を両立することが容易ではない状況が続いている。このことは、社会における女性の活躍を妨げ、労働力人口の抑制や出生率の低下、ひいては将来的な社会保障負担の増加につながる。

近年、育休を取得したいと考えている男性は増えているが、実際の取得率を見ると、以前より大きく上昇してはいるものの10%台にとどまっており、80%以上が取得している女性との差は依然として非常に大きいのが現状である。一方、夫の平日の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高くなるというデータもある。男性の育休取得の推進は、男女双方のワーク・ライフ・バランスの実現のために重要なテーマである。

男性が育休を希望していても希望どおり取得できていない背景としては、企業の経営層の意識改革の遅れと、育児休業制度のしくみの不十分さがあると考えられる。

私は、特別区の職員として、特に次の2点に取り組みたい。

1点目として、企業の経営層の意識改革の推進である。男性本人が育休取得を希望しても、経営側が協力的でなければ実現は難しい。経営層が男性の育休取得に否定的なのは、自社の生産性低下に対する懸念が主な理由だろう。しかし、生産性低下というのはイメージに過ぎず、企業が男性の育休を積極的に推進した結果生産性が低下したという明確なデータは見当たらない。むしろ、男性の育休取得を推進することにより働き方改革もが進み、業務の効率化を目指した創意工夫が行われ、社員の帰属意識が高まったという調査報告もある。子育てに協力的な企業として、社会的なイメージアップも期待できる。男性の育休の取得推進は企業にとっても望ましい効果が見込めるものである。

そこで行政としては、企業経営層の不安を払拭するために、男性の育休取得に積極的な企業の事例を周知するとともに、取得推進による業績への影響についての統計資料を提供するなど、積極的な情報発信・啓発を行いたい。男女共同参画や女性活躍推進のモデルとなる企業の認証や、関係機関と連携したインセンティブの導入も目指し、特に人手不足が懸念材料となりやすい中小企業を意識した手厚いサポートを目指したい。

2点目として、育休手当や育児サポートの充実とその周知の徹底である。企業が育休取得に協力的になったとしても、家計収入減少の心配が大きければ、社員が積極的な育休取得に踏み切れない恐れがある。2022年10月に創設された「産後パパ育休」のような制度を区としても今後も拡充するとともに、広く周知して区民による活用を促す必要がある。さらに、家事・育児に関する悩みに対応するために、父親も参加しやすい「家事・育児教室」や相談窓口を充実させ、安心して育休を取ってじっくりと育児に向き合える環境を整えたい。

むろん、こうした取組には財源も必要であり、一朝一夕に実現できることばかりではない。しかし、子育て世代にとって魅力的な区として認知されるよう充実した取組をしていくことが、ひいては地域経済の活性化、安定した財源確保につながる。私は、特別区の職員として以上のことを念頭に置き、男性の育休取得推進をはじめとするさまざまな子育て支援に全力で取り組みたい。

高齢者の社会的孤立

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日本において、65歳以上の高齢者のいる世帯は増加し続けている。内閣府の調査によると、三世代世帯は減少傾向にある一方、一人暮らしの高齢者の増加は男女ともに顕著である。こうした単身世帯の高齢者は周囲の人々と会話する機会も少ない傾向にあり、「家族以外の人と交流のない人の割合」は、他国と比較して特に多いという調査結果もあった。つまり、単身の高齢者が増えるということは、誰とも交流しない人が増えるということである。困ったときに頼れる相手がいないという人も少なくない。

日本においてこの問題が指摘され始めたのは、核家族化が進んだ高度成長期と重なる。長寿化に伴い配偶者に先立たれた後の寡婦(寡夫)の期間も長期化し、また、何より地域の人間関係の希薄化が進んだと言われている。

こうした高齢者の孤立は、生きがいの低下を招くのはもちろん、高齢者の消費者被害や孤独死などにつながるおそれも高く看過できない問題である。しかし、本人が公的な支援を自ら求めなかったり、支援の申し出を拒否したりするなどの場合もあり、こうなると見守りは極めて困難となる。したがって私は、特別区職員として、孤立を事前に「予防」する方策を積極的に進めたいと考える。

1点目として、地域における高齢者の見守りネットワークの構築に取り組みたい。足立区ではすでに「あんしんネットワーク事業」が行われている。これは、高齢者が抱える問題を早期発見し、見守りや声かけ、連携機関との協力等により、安心して暮らせる地域社会づくりを目指す取組である。協力員となった地域住民や、商店街、老人クラブ、郵便局、電力会社、ガス会社、新聞配達店などの協力機関が地域の高齢者を見守り、必要に応じて地域包括支援センターの支援を求め、民生委員などとも協力しながら必要な支援を行っている。地域を巻き込んだこうした取り組みを特別区全体に広げる必要がある。また、新潟県の事例では、県内2000か所にも及ぶ「地域の茶の間」という取組もある。これは子どもからお年寄りまで誰でも、行けばいつでも人と話をしたり一緒に食事をとったりして過ごすことができる場所として開かれている。こうした異年齢の人々が交流できる居場所づくりを推進することは、高齢者が自ら外に出ようという気持ちを起こすために有効であると考える。

2点目として、高齢者自身がボランティアなど社会的な活動に取り組むきっかけづくりを進めたい。横浜市では、施設入居者の話し相手や補助のボランティアを高齢者が担う取組が行われている。ボランティアに参加することでポイントが貯まり、1ポイント1円で換金できるというものである。同様の取組は目黒区でもすでに行われているが、高齢者の社会参加の意欲を促し、自己有用感を高めることが期待できる。高齢者施設に限らず、保育園や学童保育などでも行うことができれば、子どもたちと触れ合える楽しさも高齢者の励みとなるのではないか。また、こうした多世代交流は、若者が地域社会のあり方を考えるきっかけともなり、希薄化している地域の人間関係を再生するために積極的に進めるべきものであると考える。

私は特別区の職員として、区内の高齢者の現状を把握するとともに、地域の人々と連携して上記のような方策を推進し、高齢者効率化の防止に貢献していく決意である。

行政の効率化

特別区は、区民に最も身近な基礎自治体として、地域の実情に合ったサービスを提供することが求められている。児童相談所の設置もその一例で、児童の健やかな発育の実現可能性を高めることを目的としている。それに加えて、新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、感染者の情報発信や給付金の支給など、多様な業務に追われた。一方、特別区は人口減少に伴い、少子高齢化が進行しており、今後大幅な歳入増加は見込めない。このような中で、区民の多様なニーズに応えることが期待されている。特別区の職員は、人員や財政状況を踏まえながら、限られた行政資源で効率的な区政運営をすることが求められる。

特別区職員として取り組むべきことの一つ目は、行政のデジタル化の推進である。現在、特別区では、パソコンやスマートフォンを利用した電子申請の受付やコンビニエンスストアでの証明書類の交付など、行政手続きの電子化が進められている。このような取組は、効率的な事務運営を可能にするだけでなく、仕事で時間内に区役所に来訪できない勤労世代や、1人で区役所に来訪することが困難な高齢者や、障害を抱える方へのきめ細やかな対応にも繋がる。今後も更なるデジタルサービスの拡充に取り組む必要がある。

一方で、電子機器の使用に不慣れな人々へのサポートも忘れてはいけない。情報通信白書によると、60代、70代のスマートフォンの使用状況は、それ以下の世代の約半分であり、使い方がわからず、活用できていないという声が多く上がっている。区は、電子申請の操作が単純明快なものとなるよう、システム調整を重ねていく必要がある。また、高齢者向けに、スマートフォンの使い方や電子申請方法を学べる講座を積極的に実施し、デジタル端末への苦手意識を取り払うことも求められる。

特別区職員として取り組むべきことの二つ目は、業務の民間委託の推進である。足立区では、窓口業務、保険料計算、徴収などを一括して民間企業に委ねる取組が導入されている。これらの民間委託により生み出した人員や財源は、新たな課題に重点配分していくとしており、限られた行政資源を適切に活用していくことに繋がっている。また、指定管理者制度を導入し、図書館や児童館の運営を民間委託する自治体も見られる。経費削減だけでなく、民間のノウハウを生かした、より専門的で質の高いサービスの提供に繋がるため、こちらも積極的に導入すべき取組ということができるだろう。外部委託が可能な業務については、安全管理やサービスの質に留意しつつ、積極的に委託していくことを検討するのが良いだろう。

区民が生涯住みたいと思える地域にするため限られた行政資源の中で、多様なニーズに応えていく必要がある。特別区の職員として、区民の立場に立った様々な取組を提案し、実行していきたい。

少子化対策

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日本では1997年に子どもの数が高齢者人口よりも少なくなり、少子社会と入ったとされる。2022年の出生数は、統計開始以来初めて80万人を下回り、推計よりも約10年早いペースで少子化が進行している。

特別区全体の人口はいまだ増加局面にあるが、近年、生産年齢人口の構成比が減少し、老年人口の構成比は増加の一途をたどっている。こうした状態が続けば今後の人口減少、超高齢化は明らかである。労働力不足や財政負担の増加、社会保障の持続可能性の問題など、地域経済に多くの影響を及ぼすことは言うまでもない。児童・生徒数や学校の減少も懸念され、地域社会全体の活力低下を招きかねない。もちろん国が国策として取り組むべき課題だが、特別区の少子化の現状は待ったなしであり、区としてできうる対策に早急に取り組む必要がある。

少子化はさまざまな要因が絡んだ構造的な問題だが、子どもを持つことの負担感の大きさから未婚化、晩婚化が進んでいること、そして、結婚しても子どもを設けにくくなっていることが最大の原因だと考えられる。安心して結婚し、出産、育児ができるまちづくりを進めるため、結婚・妊娠・出産から、生まれた子どもの成長段階に応じて、切れ目のない支援を行うことが求められる。特別区では近年、こうした負担を軽減する対策が次々に打ち出されている。そこで私は特別区の職員として、こうした対策をさらに推進することに全力を注ぎたい。

第1に、保育環境のさらなる整備・充実である。5歳未満の人口は全国的には急減することが推計されているが、特別区ではその減少が今後30年ほどは緩やかであり、保育ニーズは減少しないとされている。特に保育所のニーズは、女性の就業率の上昇を受けてむしろ増加が見込まれており、特別区ではすでに待機児童解消のために保育所を新設するなど、受け皿を増やす施策が進められている。今後はさらに、保育時間の延長などに柔軟に対応可能な民間への委託を拡大するとともに、テレワークの普及をはじめとする就業形態の変化に対応すべく、ベビーシッターや保育士が子どもの自宅を訪問して保育を行う居宅訪問型保育サービスを充実させるなど、多様な保育ニーズに対応できる方策を進めたいと考える。

第2に、経済的支援の充実である。特別区では2023年度から高校生相当までの子どもの医療費が無償化されたほか、一部の区では小・中学校の給食費の無償化も始まっている。今後もこうした支援を拡充し、妊娠・出産・育児に関わる経済的な不安を和らげることを目指したい。ただし、特別区各区で競争のように支援額を増額して子育て世帯を奪い合うような状況になることは好ましくない。各区によって異なる事情もあるが、情報共有を密にして連携を図り、特別区全体として少子化にいかに歯止めをかけるかという意識で取り組みたい。

第3に、精神的サポートの充実である。墨田区では2023年度から「家事・育児サポーター制度」を始めている。幼児を抱える家庭や妊婦を対象に家事・育児の支援サービスを提供することで、出産や子育てに関わる不安感・孤独感の軽減をねらったものだ。また、特別区ではないが東京都日野市では宿泊型の産後ケアサービスや、産婦人科・小児科オンライン健康相談事業を始めている。身近に親族がいない状態で出産や育児をする都市部の核家族世帯にとって、専門家に気軽に相談できるこうした仕組みは大きな支えとなる。こうした他自治体の事例にも学び、安心して出産・育児ができる方策を提案し実現させたい。

私は特別区の職員として、上記のような少子化対策に力を尽くし、地域活性化に貢献したいと強く決意している。

健康寿命の延伸

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日本の社会保障制度は、「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」の4つからなっている。個人の責任や努力だけでは対応できないリスクに対してのセーフティーネットとして私たちの生活を支えるものである。

しかし、急激な高齢化の進展を背景に、社会保障給付費は年々増加している。特別区においても、ここ数年の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業などのため、社会保障の一環である扶助費の支出が増加している。今後も、急速に進むと予想される高齢化のため、生産年齢人口の大幅な減少と扶助費や介護・医療関係の経費の増加が見込まれており、区の財政を圧迫していくことが懸念されている。社会保障制度の持続可能性の確保と機能強化は喫緊の課題である。

この課題に特別区職員としてどう取り組むべきか。私は特に、高齢者をはじめあらゆる世代の区民に向けた健康増進・介護予防に取り組むべきだと考える。高齢化が進む中、介護・医療関係経費の増加を抑えるためには、未病・未介護の早い時期から健康寿命を延ばす方策を打つことが必須であるからだ。国も2019年に「健康寿命延伸プラン」を策定し、健康寿命を2040年までに男女とも75歳以上とすることを目指しているが、特別区としてもこの流れを強力に推進していかなければならない。

私は、特別区職員として、特に次の3つの取組を強化したい。

1つは、生活習慣病予防の取組強化である。高齢化の進行とともに、がんや心臓病、脳卒中といった生活習慣病に罹患する人や、それによって要介護になる人が増えることが懸念される。したがって、それを未然に防ぐために、若い世代からの食育や、生活習慣改善の意識を高める取り組みを行いたい。区内の学校や企業と連携した食生活に関する啓蒙活動や、健診を周知するための工夫をするとともに、区民が自らの健康について気軽に相談できる場を充実させたい。

2つ目は、運動しやすい環境づくりである。健康の維持・増進のためには、適切な運動が欠かせない。特に近年は筋力が低下して虚弱な状態になることが要介護状態につながるとされ、フレイル予防の重要性が注目されているが、区民に広くこのことが認知されているとは言い難い。また、知識として知ってはいても実際には運動をしていない人も多い。そこで、地区ごとの健康教室やスポーツ教室の活性化はもちろん、ハード面として、誰でも気軽に運動できる健康器具を備えた公園やウォーキングコース等の整備を推進し、区民の意向を把握しながら、気軽に運動できる環境を整えたい。さらに、すでに大田区が行っているような健康ポイント事業を各区でさらにブラッシュアップし、区民が楽しみながら運動に取り組めるきっかけづくりを進めたい。

3つ目は、地域活動の活性化である。「東京都健康増進プラン21(第二次)」によれば、地域とのつながりの豊かさが心身の健康にもつながることが報告されている。年齢問わず参加できる地域のイベントを充実させるとともに、保育園や学童保育所での保育補助や地域の美化に取り組む活動など、就業やボランティア参加を希望する女性や高齢者がその力を発揮できる場を増やすことで地域とつながる人々を増やしたい。

これらの取組は、いずれもすでに特別区においてある程度行われていることではあるが、その徹底や区民への浸透が求められる。私は特別区の職員として、ソフト・ハード両面における区民の状況を把握し、健康増進、介護予防を推進したいと決意している。

防災対策(災害対策)

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地球温暖化の影響で近年頻発している集中豪雨や、いつ起こってもおかしくないとされる首都直下型地震などの災害に対して、我々は被害を想定して備えておかなければならない。減災社会の実現を目指す取り組みは、区として総力を挙げて推進する必要がある。その範囲はハード面ソフト面さまざまあり、すでに各区で進められてはいるが、私は今後特に、地域防災力の向上を目指した取り組みを強化すべきだと考える。災害発生時に区民の生命を守るためには、行政の力だけでは限界があり、区民一人ひとりの「自助」と近隣住民間の「共助」が欠かせないからだ。以下に、具体的に3点を挙げたい。

1点目は、地域防災の担い手の育成支援である。3点挙げる中でもこれが大前提であると言ってよい。現在、地域防災の担い手の高齢化が進んでおり、一部の人への負担が大きい状況がある。また、取り組みの地域差もあり、新しいマンションが多い地域では新住民と旧住民とのコミュニケーションが十分でないなど、地域全員参加による防災活動が思うように行えないのが現状ではないだろうか。そこで、区民の防災組織をいかにつくるか、行政はその支援に積極的に取り組む必要がある。活動の中心となる防災専門知識のあるリーダーを育成し、活動に必要な様々な情報や資材を提供するとともに、消防署等関係機関との協力のもと、防災計画や訓練の中心として配置できるよう進めたい。

2点目は、要支援者に対する支援体制の確立である。都市部は、農山村地域と比べて地域コミュニティが脆弱な傾向にあり、災害時に要支援者に対して必要な支援が行き届かない恐れが高い。しかしながら、地域ごとの防災訓練は行われているものの、具体的な要支援者の把握や支援計画立案が十分進んでいないために、対象者への支援方法を意識した訓練や対策が十分に行われているとは言い難い。県によっては、自主防災組織が地域内を巡回し、地震に備えた家具の固定などをサポートする取り組みなどが行われていると聞くが、そのような草の根的な取り組みが必要だろう。在宅で介護を必要とする人などを把握して名簿を作成するなどし、どこに住んでいる誰にどのような支援が必要なのか、ニーズを把握・整理し、避難が必要な際の避難支援者、避難方法などを確認しておく必要がある。プライバシーの問題も絡むため情報の扱いには慎重さも求められようが、区の福祉部局・各地区の防災リーダーや自主防災組織、消防署等が連携して必要な情報を共有しておくとともに、災害発生時には外部ボランティアにどのような支援を依頼するかについても、事前に検討しておくべきだと考える。

3点目は、災害に備えた食料等の備蓄の啓発促進である。最低3日分の備蓄を行おうという啓発は以前から行われているが、それができていない家庭がまだ3割程度残っているという調査結果もある。備えていない人の中には依然として「避難所に行けば食料をもらえる」というイメージを抱いている人も多いのではないだろうか。この対策として、たとえば地区や学校で防災啓発・教育を行う際に実際の食料品を用いて、個人の備蓄がある場合とない場合で1日あたりの1人分の食料を具体的に見てわかるように示すなど、区民が危機感を持って自助を進めるきっかけとなる取り組みを行ってはどうだろうかと考える。また、区内の各事業所や学校においても、災害時の帰宅困難者対策として必要な備蓄を徹底するよう、啓発や必要な情報の提供を行いたい。

災害は明日起こらないとも限らない。私は特別区の職員として災害対策の重要性を認識し、区民の自助と共助が円滑に進むよう、行政としての役割を果たしたいと考えている。

高齢者が住みやすい街

我が国の高齢化はとどまることがなく、高齢者人口が総人口の約30%を占めるという、世界でも類を見ない超高齢社会となっている。特別区においても高齢化は深刻な問題となっており、「介護が必要になったら子どもに負担をかけてしまうのではないだろうか」「自分が倒れたとき、誰かに気づいてもらえるだろうか」といった身体的、精神的不安を抱えながら生活している高齢者は数多く存在する。区は、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるように、生活環境を整えていく必要がある。また、高齢者が自分らしく生き生きと暮らし続けられるように、社会全体で高齢者を支える仕組みも求められるだろう。このような状況で、特別区の職員として取り組むべきことを二つ挙げる。

第1に取り組むべきことは、医療、介護、高齢者支援団体との連携を強化することである。区では、誰もが住み慣れた地域で安心して生涯暮らしていくことができるように、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を進めている。病気で通院が必要になったり、介護が必要になったりしても、容体の変化に応じて切れ目なく医療、介護等のサービスが提供される環境であれば、長年親しんだ地域社会の中で暮らしていくことが可能になる。そのため、区は各機関と瀬極的に連帯し、新たな施設の増加を促していく必要がある。

さらに、江東区では、地域包括支援センターやかかりつけ医等、医療、介護、福祉等の多職種が連帯しながら、円滑に支援を進めるための情報共有ツールとして、多職種連携シートを作成し、活用している。このような情報連携ツールの利用、関係機関に促すことによって、高齢者へのより適切な支援に繋がることが考えられるため、区は積極的に普及を図るべきである。

第2に取り組むべきことは、地域の見守り体制を強化することである。練馬区では、運送会社や新聞社、ボランティア団体などと高齢者見守りネットワーク協定を締結し、地域の人々の協力を得ることで、高齢者の見守り体制を強化している。例えば、配達員が高齢者宅に訪問した際、異変を感じた場合は、高齢者相談センターへ通報することとしている。

近年は高齢者の孤独死や介護疲れによる高齢者への虐待が深刻な問題となっており、不安を感じる高齢者や虐待に遭っていること、誰にも相談できない高齢者も少なくない。民間事業者も含めた、地域全体で高齢者を見守ることで、異変の早期発見に繋がり、高齢者の尊厳が保たれることになる。そのため、高齢者の見守り体制を構築していくことが、区には求められていると言えるだろう。

今後も高齢者の増加が見込まれている。高齢者が自分らしく生活を送ることができるように、特別区の職員として、高齢者を支えられる街の実現に向けて、全力で取り組みたいと思う。

健康づくり

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人生100年時代とも言われるように平均寿命が延び、人口の高齢化が進み続けている。このような時代においては、人々が人生のそれぞれのライフステージで生き生きと自分らしく活躍・生活できていることが大切である。

それぞれが生き生きと活躍し続けるための前提となるのは、健康だろう。健康とは、心身ともに良好な状態を指す。心身の健康を維持し、できるだけ医療や介護に頼らず自立した生活を送るのが理想であると私は考える。特別区では、とりわけ高齢化率が高いことから、健康施策を早急に充実させる必要に迫られている。健康を保つためには、区民一人ひとりの意識と行動が基本であるが、区民への健康づくりへの取組のきっかけ作りやサポートを行っていくことが特別区の重要な役割である。ここで、特別区で健康施策を進めるにあたり、私が重要だと考える課題を3つ挙げる。

第1の課題は、運動不足の人の割合が増えていることである。インターネットやSNSの普及にともない、そのことに時間を費やす人々が急増した。結果として、外出しない人や、運動不足の人々の割合が増えた。日常生活に定期的に運動を取り入れてもらい、体力づくりを進めていくことが課題となっている。
第2に、食生活が乱れがちな人の割合が増えていることである。現代は、レトルト食品やコンビニ品の普及もあり、生活習慣病が増加傾向にある。そのため、栄養や食生活について見直す機会を作っていく必要がある。
第3に、心の健康問題である。特別区のみならず、日本全体で自殺率や若者のうつ病罹患率が増加している。健康を保つためには、体だけでなく、心の健康づくりも不可欠である。
こうした課題を踏まえ、健康施策を講じるために、特別区がどのように取り組むべきか、以下に述べる。

1点目は、ライフステージに合わせた運動習慣の定着の支援が大切である。具体的には、幼児期からの運動の定着を目指し、区のスポーツ施設で親子体操教室を開催し、子どもに体を動かすことの楽しさを体験してもらう。また、働き世代向けに、生活の中に手軽に取り入れることができる運動やストレッチをそこから得られる効果も含めて、区の広報誌で紹介するのも有効だろう。さらに、春や秋の気候の良い時期に、ウォーキング大会や高齢者向けのスポーツ大会を開催し、高齢者の運動参加を促していく。

2点目に、食育の推進が大切である。区民の食についての関心を高めるため、食育フェアを学校や企業と協働して開催する。また、イベントに参加する時間を作りにくい社会人に対しては、食育に関する冊子を配布する。特に働き盛りの社会人は食生活が乱れやすいため、手軽に試すことができるレシピを紹介する。また、地域の飲食店に対し、栄養素の表示や、健康に配慮したメニュー提供を行う、「健康づくり協力店」への参加を呼びかける。

3点目に、心の悩みの相談窓口のさらなる充実である。特別区では、社会人、高齢者ともに単身世帯が多いこともあり、孤独感を抱きやすい人々も多いと考える。心の悩みの相談を担当する専門職の配置をさらに充実させることが大切である。また、ストレスの対処法をテーマにした講演や講座を行うことで、心の悩みを予防していくことも大切である。

区民の健康の維持推進は、区の活力にも影響する重要な課題である。以上のような、関係機関との連携しながらの複数の視点からの取組により、区民が心身の健康づくりをサポートしていくことが大切である。

地域コミュニティの活性化

community

地域コミュニティは、地域住民が助け合って生活を営む基盤であり、人々が暮らしやすい住環境を保つために重要な役割を果たす。そこでは、人々は共助の精神のもと、子育てや高齢者をともに見守り、また、困った時には支え合うなど、様々な機能を果たす。

しかし近年、特別区においては地域コミュニティが衰退傾向にあるとされる。こうした状況が生じる主な要因として、価値観の多様化や一人暮らし世帯の増加により、人々が個々人の生活やプライバシーを重視する傾向が強まったことが挙げられる。とりわけ特別区では、人口の転入転出が流動的であるため、他者との持続的な関わりを持つことが難しいということもこの傾向に拍車をかけている。こうしたコミュニティの希薄化により、以下の問題が生じることとなる。

1つ目は、災害時の共助体制の脆弱化がある。人口が密集する特別区においては、災害時に共助の果たす役割は極めて大きい。しかし、地域コミュニティが衰退している現状では、区民の間で、地域が一体となり災害に立ち向かうという意識が共有されにくくなっている。
2つ目は、子育てにおいて、親が孤立しやすいという問題である。核家族の増加もあり、子育てにおいて親世代が祖父母世代の知恵を借りたり、子どもの面倒を見てもらったりといったことが難しく、子育てでの負担を親のみで抱え込みやすいといった現状がある。このように、特別区における地域コミュニティの活性化は喫緊の課題といえる。ではこの問題に対し、特別区はどのように取り組むべきか、以下に具体的に述べる。

第1に、地域住民の交流機会を増やす取組が必要であると考える。例えば、関係機関と連携し、近隣住民が集まる居場所を提供する試みが有効であると考える。区内の大学と連携し、大学の既存施設を活用することもひとつである。港区では、区内の大学と協力して喫茶店を運営し、近隣住民の交流のスペースを提供するという取組を行っている。これにより、若者と高齢者という、世代を超えた交流を作り出すことができる。また、空き家のオーナーと、NPO法人や社会福祉法人などをマッチングさせ、空き家をブックカフェに改修し、近隣住民の交流の場として提供することもひとつである。これにより、地域コミュニティの活性化だけではなく、空き家率の減少にも繋げることができる。

第2に、高齢者の地域参加を促す取組に力を入れていくべきであると考える。特別区内においても高齢化は進んでいるが、元気な高齢者も多く在住している。区としては、こうした高齢者が地域参加できるよう促していくことが大切である。例えば、目黒区では、65歳以上の方が、特別養護老人ホームなどで活動すると、商品券と交換可能なポイントが付与されるという取組を実施している。このように、地域活動への参加にインセンティブを与えることで、高齢者もイベントに継続参加しやすくなるだろう。また、高齢者がシニアボランティアとして、子育て世代をサポートする取組や、交流イベントを定期的に開催することも有効だろう。これらの地域活動の情報はインターネットなどで発信し、広めていくことが大切である。その際には、高齢者のデジタルデバイドの問題に留意する必要がある。そこで、特別区は、高齢者向けのICT教育にも取り組み、全ての高齢者に情報が行き渡るよう努めていくことが重要だと考える。

地域コミュニティは、地域住民が暮らしやすい住環境を保つ上で重要な役割を果たす。特別区は、関係機関と連携しながら、上記の取組を粘り強く行うことで、地域コミュニティの活性化を目指していくことが大切である。

子どもの成長支援

国はこども家庭庁を設置し、全ての子どもが自分らしく幸せに成長できる社会の実現へ動き出した。しかしながら、令和3年度の児童相談所における虐待の相談対応件数や、全国の学校が把握した不登校、いじめの発生件数は過去最多となっている。家庭や学校に居場所のない子どもや、経済的な貧困に苦しむ子どもが多く存在するのが実態だと言えよう。核家族や共働きの家庭が増加している今、子どもが健やかに成長していくためには、保護者だけではなく、地域全体で子どもの成長を支えていく必要がある。特別区は、区民に最も近い基礎自治体として、子どもの権利や意思を尊重し、健やかな子育てを支える環境を整備していかなければならない。そのために特別区の職員として取り組むべきことは二つあると考える。

第1に取り組むべきことは、子どもの学習・生活支援である。学習支援に関して、家庭の経済格差が子どもの大学進学率に大きく影響し、それが次世代に引き継がれてしまう負の連鎖が問題となっている。地域の子どもの学習を手助けするボランティア活動の支援や進学、通塾費用の経済的支援に取り組み、全ての子どもが希望する環境で勉強できるようにしていく必要がある。また、学習面だけでなく、生活面での支援も大切だ。例えば、食への取組が挙げられる。具体的には、1人で食事をすると、食前食後の挨拶の習慣や、正しい箸の持ち方が身につかないこと、食事のバランスが偏ってしまうことが問題視されている。そこで、子ども食堂を運営しているNPO法人に助成を行うとともに、区が広報などで活動を発信し、活動の担い手増加に取り組むことができるのではないだろうか。これらの取組を推進していくことは、家庭や学校で悩みを抱える子どもの居場所作りにもなるため、区が積極的に進めていく必要があると言える。

第2に取り組むべきことは、子どもの視点に立って施策を立案することである。保護者や関連施設の職員の声を聞く姿勢も当然重要であるが、子ども自身が本当に望むものではなく、大人の意見になってしまう恐れがある。したがって、区職員自身が子どもの視点に立つ姿勢が求められる。また、子どもの考えを知るために、子どもが区に相談や意見をしやすい環境を作ることも重要である。例えばスクールカウンセラーや、区の相談窓口、パブリックコメントの仕組みを紹介したポスターやリーフレットを学校や児童館に掲示してもらうなど、子どもが大人に悩みや意見を伝える仕組みを知る機会を作っていくことが求められる。さらに、墨田区では、中学生が区議会議員となる模擬議会を行っている。中学生が提案した意見が採用され、区の取組として実現した前例もある。このような子どもの意見を聞くことができれば、子ども自身も、意見を発信することの大切さを実感できるだろう。

子どもは地域社会の宝である。特別区の職員として、全ての子どもが健やかに成長できるまちづくりを進めていきたい。

人口減少

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日本の総人口は、平成20年をピークに減少が続いている。一方、特別区では、大学や企業が多いことや、進学や就職に伴う移住が多いことなどから人口増加が続いている。しかし、今後は特別区においても、人口減少に転じる可能性があり、楽観視はできない。人口減少の原因には、若者の婚姻率低下や、それに伴う出生率の低下などがある。結婚後も、経済的な問題から共働きを選択する世帯も多くなっており、子どもを持つことに消極的な若者が増えている。また、第2子を希望していても、そうした理由から踏み切れない子育て世代も多い。都市部においては、核家族化が進み、子育てについて頼りにできる親類が近くにいないことも、現在若者が子育てに不安を感じやすい要因のひとつである。

人口減少は、様々な分野に多大な影響を与えうる。そのひとつに、2025年問題がある。これは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる時期に生産年齢人口の減少が重なることで、特別区民税などの歳入が減少し、現在の社会保障制度の持続が困難になるという問題である。その結果、現役世代への経済面での負担がさらに大きくなり、現役世代の生活水準や、幸福度が低下する可能性が懸念されている。

これらを踏まえ、特別区においても、今後予測される人口減少をできるだけ抑えるための政策が必要であると考える。そのためには、若者の子育てへの不安をできるだけ減らし、出生率を上昇させることが大切であると私は考える。特別区においては、進学や就職を理由としての外部からの移住が多く、もともと単身の若者層が多いため、こうした出生率の増加への取組から得られる成果も大きいだろう。

若者の出生率を上昇させるために、特別区は、子育てしやすい環境整備を積極的に行うことが必要であると考える。例えば、子育てスペースの拡大がそのひとつである。具体的には、子どもの一時預かりサービスの提供や、子育ての不安や悩みを共有・解消できる居場所を提供していくなどがある。子育て講座や、絵本読み聞かせなどのイベントを取り入れていくのもよいだろう。関係機関と連携し、公共施設の一部や、空き店舗の既存施設を、こうしたスペースの場として有効活用するのもひとつである。そこでは、子育て経験のある主婦や、過去に保育の仕事に携わったことのある人材、時間に余裕のある高齢者などに積極的に参加してもらうとよいと考える。このように幅広い人材を活用することは、子育て世代にとっても、子育ての悩み対して幅広い視点から、助言や知恵を得られる、という点において非常によい試みだと考える。また、区民同士の交流が生まれる、高齢者に生きがいや居場所を見つけられるなど、地域全体の活性化も期待できる。

さらに、上記のような取組について、区民全体に積極的に情報提供していくことが必要だと考える。ホームページやSNSでのPR動画、広報誌などで、子育てスペースや子育て支援サービスを利用する若者や子育て世代はもちろん、スタッフとして参加しうる、大学生や高齢者などの幅広い層に周知していくことが大切である。

人口減少は日本が直面している喫緊の課題である。人口減少は、国全体の経済力や活力を低下させるなど、幅広い分野に影響を及ぼすことが懸念されている。特別区は、積極的に人口減少をできるだけ抑えるための試みを率先して行うことで、他府県や地域に成功例を示し影響を与え、日本全体の活力の維持・発展に寄与していくことが大切だと考える。

食品ロスの削減

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食品ロスとは、売れ残りや食べ残しなどにより、本来は食べることができたはずの食品が廃棄されることを指す。食品ロスから生じる問題として、次の3つが考えられる。第1には、食料を生産し、食品を製造、流通、販売するまでにかかった労力、エネルギー、費用が無駄になってしまうということである。第2には、廃棄焼却や埋め立て処分をする労力、エネルギー費用がかかってしまうということである。焼却の際には二酸化炭素が排出されるため、地球温暖化の加速も懸念されるほか、埋め立てによる土壌汚染の悪化も懸念される。第3に、廃棄の際に発生した温室効果ガスが、農作物の生育に悪影響を与え、農作物の生産量が減少してしまう問題がある。その結果、食品の価格を引き上がる可能性もある。

特別区は、人口や食品関連事業者が特に集中する地域であり、食品ロスも多いことから、早急な対応が求められている。特別区は、食品ロスの削減のため、リデュース、リユース、リサイクルの3Rを軸に取り組んでいくことが大切であると考える。

まず、リデュースの方法として、食品ロスの発生量に応じた課税がある。これは国際的にも有効性が認められているものである。例えば、韓国では自治体レベルで、各家庭や小規模飲食店に対する重量化税制が導入されている。ソウル市では、2011年から有料化が始まったことで、約6年で50%程度のゴミ削減効果があったとされている。現在、特別区では、一般廃棄物処理の際、小規模事業者に対してはゴミ処理券の購入が求められており有料だが、各家庭では無料となっている。今後は、各家庭の一般廃棄物処理の有料化も視野に入れることもひとつと考える。

次に、リユースとしては、フードバンク活動の推進がある。フードバンク活動とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を安価で購入できるようにした上、食品を必要としている人を支援する団体に無償で配布するというものである。これに関して、近年自治体でも実証実験が行われているのが、フードシェアリングアプリの活用である。これは、事業者側が売れ残る可能性の高い商品をアプリに掲載し、アプリ上でそれを見つけたユーザーがアプリ内決済を行った上、店舗で商品を受け取る、という仕組みである。私は、特別区もこのアプリを積極的に導入していくのもよいと考える。アプリを活用してもらうためには、事業者に対してアプリを周知し、利用を働きかけていくのはもちろん、区民側にも、期間限定の割引クーポンを配布するなど、利用へのきっかけやモチベーションづくりの工夫を行うことも大切だと考える。

最後に、リサイクルとしては、生ゴミの肥料化が考えられる。生ごみは、有機資源であり、肥料として農業に役立てることができる。足立区や練馬区では、家庭用のコンポスト容器使用への補助金制度を整備している。コンポスト容器とは、生ごみを分解し、肥料にするための専用の容器である。また、港区では、庁舎から出る生ゴミを回収して、肥料化して配布するという試みを行っている。こうした取り組みを特別区全体に広げていくのが望ましいと考える。廃棄される食材や生ごみを農業に活用することで、食品ロス削減だけでなく、持続可能な農業の実現にも近づくことができる。

特別区は、人口や食品関連事業者が集中する地域であり、食品ロス削減は重要な課題である。私は、上記のように、リデュース、リユース、リサイクルなどの幅広い視点から取り組んでいくことで、食品ロスを確実に減らしていくことが望ましいと考える。

AIの利活用

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近年、人工知能をはじめとするICT技術が急速に発展しており、日本においても、教育や医療の現場、交通機関など、様々な場面で活用されている。特別区においても、AIを効果的に取り入れることで、行政のさらなる効率化や、区民の利便性の向上を目指していくことが大切だと考える。AIの導入にあたり、特別区がどのように取り組むべきか、行政内部の効率化、区民の利便性の向上の2点に分けて以下に述べる。

第1に、行政内部の効率化について述べる。これまで行政事務は、会議の議事録作成の文字起こしなど、事務作業職員がすべて手作業で行うことが多かった。しかしながら、近年、行政の課題や区民のニーズは複雑化、多様化しており、区職員の担う業務も煩雑となっている。そして、これらの業務を職員の手作業のみで、素早く正確に行うことは困難になっている。そこで、区の職員は、AIを活用し、業務の効率化に取り組むとよいと考える。港区では、AIを利用した議事録作成支援ツールを導入することで、AIの音声認識機能により自動でテキスト化し、議事録を作成するという取り組みを行っている。また、千葉市は、道路管理システムにAIを導入した実証実験を行っている。これは、自治体の公用車にスマートフォンを取り付け、道路の損傷状態をスマートフォンに自動撮影させ、道路の補修が必要かどうかを自動で分類させるというシステムである。このAIを活用した道路管理システムは、目視による点検より、短期間かつ広範囲に、効率よく道路の状態を把握することが可能である。こうした取り組みは、参加する自治体が増加すればするほど、システム運用費も抑えられる。そのため、こうした技術を特別区全体で、積極的に導入していくのがよいと考える。また、上記のような例以外にも、特別区職員は、日頃の中から、このようにAI化できる業務を見つけ出す姿勢をもっておくのも大切であると考える。

第2に、区民の利便性向上について述べる。区民が行政に申請や問い合わせをする場合、現状では、区民が区役所の窓口に訪れるか、窓口に電話をかける必要がある。しかしながら、近年では業務が複雑化していることもあり、区民が窓口で待機する時間も長くなる傾向にある。そこで、特別区は、区のホームページの問い合わせ窓口に、チャットロボットによる対応も組み入れていくのがよいと考える。これにより、区民は素早く必要な情報を手に入れることができるようになる。また、こうしたAIによる対応システムは、24時間365日いつでも応答可能であるというメリットもある。多言語AIチャットボットを活用し、外国人向けにも情報提供できるようなシステムにするとさらによいだろう。

ただし、特別区のサービスにこうしたAIを導入するにあたっては、セキュリティ面への注意も必要である。特別区の業務では、区民の個人情報を扱うことも多く、どこまでAIに業務を担わせるかといった線引きについて、慎重に検討していく必要がある。また、AIにシステム上の問題が発生した場合などを想定しておく必要もある。民間企業と緊密に連携し、安全かつ長期的に運用しやすいシステムを模索していくことが重要だと考える。

ICT技術やAI技術を有効活用していくことは、区民と区職員双方に大きなメリットがある。特別区は、個人情報や安全性などリスク面にも十分配慮しつつ、柔軟にAI技術を取り入れ、区民にとってさらに住みやすい特別区にしていけるよう努めていくことが大切である。

特別区の過去問

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なお、特別区の過去問は下記の記事で紹介しています。

特別区は論文対策が極めて重要となるため、過去問で出題があったテーマは一通り目を通しておきましょう!

裁判所の模範解答例を公開中

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なお、下記の記事では「裁判所の論文模範解答例」を公開しています。

この記事を読んでいる特別区受験生の中には、裁判所を併願している人もかなり居るでしょう。

裁判所の論文対策として、ぜひ参考にしてください。

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