東京都庁の論文模範解答例を公開しています。
現在公開しているテーマは下記の通りとなっています。
・安心安全な東京
・震災時の安全確保と復興
・東京の食の安全
・少子高齢化と低経済成長
・温室効果ガスの排出量削減
・ニート、フリーター対策
・東京都のモノづくり産業
・行政の役割
・首都東京の職員として
・広域化する都市問題
・都民の雇用確保
・子育て支援
・高齢者がいきいきと暮らせるまちづくり
東京都庁以外の地方公務員試験でも出題頻度が高く、重要なテーマです。
論文の対策方法としては「予想されるテーマの模範解答を何度も読み込むこと」が最も効率的であるため、東京都庁の受験生はこの記事をぜひ参考にしてください。
ちなみに、下記の記事では「公務員試験の論文頻出テーマ」をまとめています。
全国の市役所・県庁の出題傾向を徹底的に分析しているので、ぜひ読んでみましょう。
安心安全な東京
私が日頃感じる東京の治安の問題点には、いわゆるトー横キッズと呼ばれるような、居場所のない少年少女たちの存在、そして彼らによる犯罪と彼らに対する犯罪の増加、外国人犯罪の増加などがある。
このような東京都における治安悪化の背景としては、新型コロナウイルス感染症を契機とした世界同時不況の影響などにより、国内の景気や雇用環境などが悪化し、貧困家庭が増えたことがあると考える。貧困家庭では、親に心理的な余裕がもてないことも多く、子どもとの関係性が不安定になり、家庭に居場所を見いだせない子どもが増えやすいと考える。また、東京都は日本の首都であり経済の中心地でもあることから、多くの外国人が集まるため、外国人犯罪が他自治体と比較して多くなりやすいといったことなどがあると考える。
こうした状況を踏まえ、東京都はこれまで、「治安の維持こそ最大の都民福祉」との認識に立ち、安全・安心まちづくりの推進する取り組みを行ってきた。例えば、外国人による犯罪増加に対しては、警視庁、入国管理局と連携し、外国人滞在適正化連絡会議を設置し、様々な対策を講じてきた。また、防犯ポータブル、大東京防犯ネットワークなどによって地域の防犯ボランティア活動の支援を行ってきた。加えて、ボランティアによる防犯パトロールや子どもを見守る活動の推進に取り組んできた。
このような取組により、犯罪件数は減少し、治安は回復傾向にある。しかし、依然として、犯罪件数は他県と比較して多い。私は、東京都の治安の回復のためには、子どもの安全対策の推進、若者の犯罪を防ぐためのアプローチ、外国人犯罪対策などの面から、様々な対策を講じていくことが重要だと考える。これらの対策について、以下に具体的に述べる。
まず、子どもの安全対策の推進のためには、防犯設備を整えることや、日頃から治安情報を発信していくことが大切であると考える。具体的には、防犯カメラや照明の設置台数を増やすなど、公共の場所や住宅地域にセキュリティを向上させるシステムを整備することが有効である。とくに、小学校の玄関先などに防犯カメラを設置することは非常に有益と考える。また、犯罪情報を家庭や学校に向けて迅速に発信し、市民の警戒心を高めることが大切である。それだけでなく、いざという時に身を守るための行動や対応方法について子どもに教育しておくことが重要である。
次に、若者による犯罪を防ぐためのアプローチについて述べる。少年少女による犯罪件数の増加をふまえ、若者向けの居場所づくりや、職業訓練プログラムを充実させることが大切である。若者に対する雇用支援プログラムを提供することで、将来の可能性を広げ希望をもたせることが可能となる。家庭や学校に居場所のない子どもや若者のためのコミュニティをつくり、孤立を防ぎ他者との信頼関係の構築をサポートすることも、将来の犯罪を防ぐために大切と考える。
また、外国人犯罪を減らすため、移民や外国人労働者の就労のための支援や教育の機会を提供していくことも重要であると考える。外国人住民への情報提供の充実を図り、孤立や経済的な困難を理由とした犯罪を防ぐことが大切である。
私は、すべての都民が安全で安心して暮らすことの出来る東京都にするためには、これまで東京都が行ってきた様々な取組をさらに推し進める形で、上に挙げたような取組を地域、学校、警察などと連携しながら積極的に行っていくことが必要であると考える。
震災時の安全確保と復興
私は、東京に大地震が起きた際、都民の安全を確保し、いち早く都民の生活の復興を図るためには、地震に強い都市構造の整備、危機対応体制の整備、住民の防災意識の啓発、地域コミュニティーの強化の4点が重要であると考える。
まず、地震に強い都市構造の整備に関して述べる。東京は、他の地域に比べ、木造住宅密集地域が多く、火災時に火が燃え広がりやすい、という防災面の課題がある。また、東京には、大震災発生時に機能を果たすべき緊急輸送道路沿道の建築物が多いという特徴もある。そのため、このような建築物の重点的な震災対策はもちろんのこと、学校や救急医療機関などの公共建築物の耐震化もより一層進めていく必要がある。
次に、危機対応体制の整備について述べる。災害が発生した際の、スムーズな応急対応の実現のためには、防災拠点、救急医療体制、通信手段の整備など危機管理のための活動体制を強化しておく必要がある。東京都では、全国の道府県や市町村と災害時相互応援協定を締結しているほか、民間事業者とも協定を締結している。これにより、災害時には、帰宅困難者は、一時待機施設の開放や水や情報の提供といったサポートを受けられることになっている。このように、近隣の自治体や民間事業者などと協力体制を築いておくことが大切である。また、こうした体制やサービスについて、平時から住民に十分な情報提供を行っておくことが、災害時にも迅速なサポートを提供できるようにするために重要と考える。
次に、住民の防災意識の啓発がある。東京都は、高層ビルも多く、人口も過密であるため、地方に比べて建物倒壊や火災による被害が大きくなりやすいという問題がある。そのため、大都市における地震に関する知識の普及と防災意識の啓発を行い、日頃から住民一人ひとりが危機意識を持てるように支援することが大切である。また、子ども向けにも、学校などで防災教育を行い、災害時の行動や対応方法についてあらかじめ丁寧に教育しておくことが大切である。避難訓練の実施はもちろん、東日本大震災や阪神淡路大震災など、過去に日本で起こった地震を取り上げ、体験談に触れるなどし、そこから様々な学びを得るような試みも大切であると考える。また、家族内で、地震発生時の行動や連絡方法について、家族会議を行うよう促すこともひとつである。
最後に、地域コミュニティの強化について述べる。東京都には、1人暮らし世帯が多いことから、住民同士のネットワークが希薄となりやすいという課題がある。地震発生時に、可能な限り早く都市機能を回復するためには、有事の際に連携・協働できる地域ネットワークを構築しておくことが大切であると考える。災害に関する講習会の開催や、ソーシャルメディアの活用などにより、あらかじめコミュニティの強化を図っておくことが大切である。災害時には、食料や移動などの物理的な問題だけでなく、精神的なダメージへのケアも大きな課題となる。こうしたコミュニティは、精神的な面においても強力なサポートになりうると考える。
このように、東京都は、住民の「自助」を徹底すると共に、防災隣組の構築などによる「共助」の力を最大限に活かして、さまざまな面から災害対策を行っていくことが大切である。平時より区市町村、国、民間企業、そして都民との密接な連携を図るとともに、積極的な防災対策に取り組むことで、都民の安定・安全な生活づくりに邁進していくことが重要である。
東京の食の安全
私が日ごろ感じている「食」をめぐる問題点には、異物混入などの食品衛生管理の問題や、食品添加物や農薬の問題などがある。最近でも、加工食品などの中に昆虫が混入していたという事例が複数報告されている。これは、昆虫の体内の寄生虫の問題もあり、健康被害にも繋がりかねない大きな問題である。また、近年、食物アレルギーをもつ子どもの数が増加していると言われているが、その原因の1つとして、農薬や添加物が関係している可能性が専門家により指摘されている。
東京都は、わが国最大の食品の消費地である。そのため、食の安全が脅かされるような事態になると、その被害が大規模なものとなりやすい。また、危害発生の端緒が全国に先駆けて顕在化しやすいという地域特性を有している。さらに、輸入食品をはじめ流通の拠点をしての役割も担っているため、東京都における食の危機は全国の危機に繋がっていく可能性が高い。このような東京都の特性を踏まえると、東京都は、今後、積極的に食の安全性を確保する取り組みを行っていく必要がある。現在及び将来にわたる食の安全を守っていくためにはどうすればよいか、私の考えを以下に具体的に述べる。
まず、異物混入などの食品衛生管理の問題について述べる。これまで東京都は、食品衛生自主管理の認証制度によって、事業者の自主的な衛生管理の取り組みを都民に広く公表するほか、事業者に対して法令順守に関する講習を開催するなどの施策を行ってきた。こうした取組に加え、食品への異物混入のリスクに応じて、特定の材料や、製造工程に関するガイドラインを設けるといった工夫を行っていくことが大切であると考える。
また、異物混入を防ぐためには、関係機関の連携が大切と考える。例えば、消費者と流通業者の連携、自治体や警察との連携がある。具体的には、異物混入が疑われる場合には、スマートフォンアプリなどの活用を含め、消費者が簡単に通報できるようなシステムを整備しておくことが有効と考える。また、健康被害発生時には、広く注意喚起を行うとともに、他の自治体や警察との情報共有を連携して行い、迅速な被害の拡大防止をすることが大切であると考える。
次に、農薬や食品添加物の問題について述べる。近年、コンビニ食や、レトルト食品は、その利便性から、あらゆる層に浸透しているが、添加物や保存料も多く含まれているという問題がある。しかし、無農薬や添加物の少ない食材の管理には、手間やコストがかかりやすいこともあり実践できる農家は少ない。そのため、農薬や添加物の少ない食材や食品を生産する農家を国や自治体がサポートする取組が重要であると考える。例えば、無農薬の農家や、添加物を減らした農家や生産者に対して補助金を支給するといった支援が考えられる。同時に、農薬や添加物の基準値の見直しや、食品安全に関する海外のデータや学術情報の収集を行うことも重要であろう。
また並行して、都民へ、安全な食についての情報提供を行っていくことが大切である。アレルギーと添加物の間の関連性が指摘されていることなども含め、食の安全について、国民や都民に積極的に正しい情報を提供していくことが大切である。また、すでにアレルギーを発症している子どもも多いことから、学校や飲食店などに食物アレルギーに関する理解の促進を行っていく必要もあるだろう。
このように、各自治体や食品関係事業者、そして国民・都民が協働・連携し、様々な面からの取組を行うことで、食の安全を確保することが可能となると考える。
少子高齢化と低経済成長
東京都では、人口の4人に1人が高齢者という超高齢社会の到来が予想されている。都市化の進展によって、地域間の共助の仕組みが機能しなくなる中、高齢者支援の仕組みづくりが急務となっている。私が住む地域でも、高齢化により祭りなど地域のイベントの開催が難しくなっていたり、一人暮らしで孤独死する高齢者の存在がいたりするなど、少子高齢化に伴う様々な問題を見聞きする。
一方、少子化も深刻な状況にある。人口を安定的に維持できる水準を示す合計特殊出生率の人口置換水準が、わが国においては2.07とされるのに対し、東京都ではそれを遥かに下回る約1.1と、全国最下位の水準にある。今後、少子高齢化が進めば、さらなる社会保障費の増加、労働力不足による経済成長の鈍化などあらゆる社会問題が引き起こされることになる。私は、このような状況下にて、都民がいきいきと暮らしていくために、①高齢者の安心で活力ある暮らしの支援、②子どもを生み、育てる家庭の支援、の2つが重要であると考える。
まず、高齢者の安心で活力ある暮らしを社会全体で支援するためには、(1)高齢者の多様なニーズに対応した社会システムの構築、(2)高齢者の意欲や能力のさらなる活用が必要である。高齢者の多様なニーズに対応した社会の構築のためには、介護・医療サービスの整備、地域住民やボランティアによる見守りなどの相互補完的サービスの提供が大切である。東京都は、現在、高齢者見守りネットワークの構築や介護サービス基盤の整備、介護人材の育成などを、複数の機関と連携して進めている。また、従来から実施されている特別養護老人ホームと認知症高齢者グループホームの定員数の増加も成果をあげているがまだ十分とは言えない。これからも、区市町村などとの連携を深め、それぞれのサービスや活動基盤の整備、人材の育成などに一層取り組んでいくことが必要である。
次に、元気な高齢者の定年後の勤労の推奨も大切である。高齢者が定年後も働くことで経済の活力維持が期待できる。また、高齢者は勤労意欲の充足を通して、自己実現や、健康寿命を延ばすことが可能になるだろう。東京都は、職業紹介・相談、能力開発などきめ細かな支援に取り組むとともに、企業に対しては、定年後の継続雇用制度や高齢者の体力に応じた柔軟な勤務体系を構築していく必要がある。
さらに、子どもを生み、育てる家族を社会全体で支援するための方策について述べる。そのためには、働き方の見直しと子育て支援サービスの拡充、安心して子育てできる環境づくりの3つが重要である。
まず、働き方の見直しについては、ワークライフバランスの考え方の推進と、仕事と子育ての両立支援が重要である。具体的には、共働き家庭の病児・病後児保育のニーズを満たすため、看護師などの医療従事者を含めた支援ネットワークを構築し、病児・病後児保育施設への支援を充実させていく必要がある。また、安心して子育てできる環境をつくるには、市区町村や民間団体と連携して、子どもや子育て世帯に配慮した住環境を整備することが重要である。そのために、まずは、関係機関と連携しつつ、子ども見守り活動などを行うことで子どもの安全を確保し、一方で、ベビーカーで移動しやすいまちづくりを行う必要があると考える。
超高齢化社会は確実に到来するが、高齢化に伴う社会問題を最小限に抑えるには、安心して子どもを生み、育てられるようなまちづくりとともに、地域社会の担い手として高齢者の社会参画を促していく必要がある。これらの取り組みによって、社会全体が活性化し、都民の生活もいきいきとしたものとなってゆくだろう。
温室効果ガスの排出量削減
地球温暖化問題は、日本だけではなく、世界中の国々にとって非常に大切な課題となっている。東京都は、「2030年の東京」において「世界で最も環境負荷の少ない、最先端の低炭素都市を実現する」という目標を示し、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスを2030年までに対2000年比25%削減することを目標として掲げている。
しかしながら、地球温暖化の問題は簡単には解決できるものではなく、気候変動のもたらす危機もこれまで以上に高まっている。東京都は、持続可能な東京の実現に向けた取組を一層強化し、積極的に温室効果ガスの削減に取り組んでいくべきあると考える。
こうした状況を踏まえた上で、東京都は、温室効果ガス削減のために、①CO2排出量削減の環境づくりと仕組みづくり、②先進的な環境技術の普及、③環境問題に関する普及と啓発活動、の三つが重要であると考える。
まず、CO2排出量削減の環境づくりと仕組みづくりについて述べる。私は、東京都は、公園や緑地スペースの拡充に優先的に取り組んでいくべきであると考える。都内に新しい公園や、緑地スペースを設けるほか、緑の屋根や壁を増やすことが望ましい。このことで、屋内、屋外において人が体感する熱を弱めさせることができるほか、エアコンなどの使用頻度を減らすことが可能になる。また、緑がCO2を吸収してくれることで、CO2排出量が削減されるメリットもある。また、CO2排出量削減の仕組みづくりとして、自転車や歩行者に優しいインフラ整備を推進することも大切であると考える。具体的には、自転車レーンを設置するなどがあり、これにより自動車の代わりに自転車を使用する人口を増やすことが期待できる。また、電車、バス、地下鉄など公共交通機関のサービスの改善をはかることも、自動車の利用を減少させるために有効だろう。
次に、先進的な環境技術の普及について述べる。先進的な環境技術には、具体的に、電動バスや電動車、水素燃料電池車などがある。このような環境に配慮した輸送手段の普及を奨励し、また、電動車や水素燃料電池車の充電基地を整備しておくことが大切であると考える。また、風力発電など、再生可能エネルギーを普及させ、化石燃料に依存しないエネルギー供給を進めることも大切である。現在、再生可能エネルギーの新しい問題として、太陽光パネルの過剰設置による景観や森林環境の破壊や、土砂崩れなどの災害時の危険が指摘されているため、これらのリスクのふまえた上で、バランンスよく推進していくことが必要である。
次に、環境問題に関する教育と啓発活動について述べる。学校などと連携し、環境教育プログラムを実施していくことも重要である。温室効果ガスの削減目標と進捗を都民にわかりやすく伝え、参加と協力を促す。また、数ある温室効果ガスの削減の取組の中でも、食品ロス削減に関しては、大人から子どもまで、誰もがイメージしやすく、日常生活の中で取り入れやすいものと考える。私自身、食品ロスを減らすために、賞味期限をよくチェックしながら消費する、計画的な買い物を心がけるなどといったことに日頃から取り組んでいる。
途上国の経済発展が進むにつれ、地球環境の問題は、ますます重要なものとなってくるであろう。東京都は、世界に先立つ大都市として、地球温暖化問題に果敢に挑み、日本国内のみならず、世界の模範とならなくてはならない。上記のように、さまざまな関係機関と連携し、複数の観点から、温室効果ガスの削減をはかることで、持続可能な都市としての東京都を発展させていくことが可能になると考える。
ニート、フリーター対策
ニートとは、15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者を指す。フリーターとは、15〜34歳の学生や主婦を除く若年者のうち、正社員としての職を得ず、パートやアルバイトとして働く者を指す。我が国におけるニートやフリーターの増加の背景には、先行きの不透明な経済情勢により新規採用が抑制されていることや、非正規雇用が増加していることなどがある。
これらの層の増加は社会および当人に対し、様々なネガティブな影響を及ぼしうる。まず、社会に対する影響としては、体力や知識技術の吸収力の高い若い世代の働き手が減ることで、経済、技術などあらゆる面において国力が低下する可能性がある。また、正社員として就業できないまま年齢を重ねる人々が増えることで、将来の生活保護受給者の増加と、それにともなう現役世代の負担の増加が予想される。さらに、経済的な基盤の不安定さから、未婚率が増加し少子化が進むことも考えられる。
また、個人にとっても様々な影響がある。例えば、安定的な職を得た人とそうでない自分を比較し、孤独感や自尊心の低下など気持ちの面での不調を抱える人が出てくることも考えられる。 私自身、働くということは、単に金銭を稼ぐ行為ではなく、社会貢献をし、生きる意味を見出すことができる機会にもなりうると考えている。職場は、同じ目標を共有する仲間の集団でもあり、居場所感を見出すこともできる。つまり、フリーターやニートが増えることは、所属感や人生の目的意識を持ちにくい人々が増える可能性を意味する。
これをふまえ、ニート、フリーターの増加を個人だけでなく社会全体の問題と捉えて対策していくことが必要である。具体的には、フリーターやニートの層が増えないよう予防的に対策を行うこと、そうした層への相談・情報提供を充実させ、知識・技能支援を行うことが大切である。これら3点を、国や学校、NPOや企業などと連携して行っていくことが重要と考える。
まず、ニートやフリーター層を増やさないための予防施策について説明する。例えば、NPOや企業と連携し、子どもたちに実際に大人が働く姿を見せるなど、仕事のやりがいを教えるプログラムを学校で実施するとよいと考える。この機会を通して、子どもたちに将来自身が働くイメージをもたせ、将来の夢や目標を持つきっかけにすることができる。早いうちからこうした機会を持たせることで、将来の就職率の上昇が期待できる。
また、ニートやフリーターの層への相談機会や情報の提供も重要である。企業やNPOと連携し、ジョブセンターなどで職業紹介などを積極的に行うことが大切である。キャリアカウンセラーなどの有資格者を配置し、個々の強みや関心、得意分野に基づいた職業相談を行うなど、きめ細かな支援が大切である。
最後に、ニートやフリーター層への知識・技能支援も大切である。これまでも東京しごとセンターでは、このような能力開発を積極的に行ってきた。これに加え、就職先の決まらない大学生や、出産子育てで離職した女性の再就職支援など、個々の状況に応じた就業支援を行うことが有効と考える。また、履歴書の作成、面接の準備など、就職活動に必要なスキルを教えるセミナーの開催も大切である。また、インターンシップや実習機会の提供や、特定の職種で必要な資格やライセンスの取得を支援することも効果的だろう。
東京都は、上に挙げた3つの観点からのニート・フリーター発生防止策を引き続き講じていくことで、都民が明るくいきいきと働くことのできる社会の実現を目指していくべきだと考える。
東京都のモノづくり産業
戦後、我が国は目覚ましい経済発展を遂げ、ものづくり産業はその中で非常に大きな役割を果たしてきた。とくに東京都をはじめとする大都市の製造業においては、中小企業が中心として発展してきたといえる。しかし、近年、生産拠点の海外への移転、バブル崩壊後の景気低迷、大企業を中心とした系列関係の崩壊、後継者不足による廃業など、ものづくり産業を取り巻く環境が大きく変化している。その結果、ここ10年で、都内製造業事業所の約3分の1が減少したと言われている。また、今後、ITや交通網の発展に伴う大都市の有する地理的メリットの希薄化と相まって、そこで培われてきた技術・技能、ノウハウ、生産設備などの貴重な経営資源が失われ、中小企業の競争や連携の動きが停滞していくことが懸念されている。
このような状況の中、依然として、東京は、これまでの豊富なノウハウの積み重ね、大きな市場、多様な人材、NPO等の民間活力など、様々な資源を備えてもいるのも事実である。私は、ものづくり産業の活性化を図るためには、こうした大都市としての特色を活かしつつ、新たな技術や知識の活用、新たな技術や知識の活用、人材確保と育成を図っていくこと、この3つが大切であると考える。
まず、新たな技術や知識の活用に関して述べる。これまで我が国が培ってきたものづくり産業の技術に、自動化やロボット技術などを導入することで、さらに生産性を向上させることが可能になると考える。行政としては、このような新技術を推進するために、研究開発への投資を行うことが大切である。ただし、こうした新技術の導入には、リスクもつきものである。そのため、企業や研究機関に対して、補助金や助成金を提供し、新たな試みに挑戦しやすい環境を整えることが大切である。また、環境を整えるという点に関しては、新技術の導入を阻害する規制を見直し、必要な法的サポートを提供するといったことも有効であると考える。
次に、新たな技術や知識の活用に関して述べる。大学や研究機関との連携を深め、産学連携による技術開発を進めるほか、企業間の協力や情報共有を促進することも大切だろう。研究者や企業家が集まり、アイディアを共有しやすい環境を提供することで、相互に技術を高め合い、結果的に国内のものづくり産業の活性化に繋げていくことが大切である。また、国内での連携にとどまらず、海外での製造拠点の設立を促進し、グローバルな競争力を高めることも大切である。
次に、人材確保と育成という点に関して述べる。先述の通り、現在日本ではものづくり分野の技術を引き継ぐ人材不足が問題となっている。そのため、若者や新卒者向けのキャリア支援プログラムの中で、産業分野の魅力について積極的に啓発することが重要だと考える。その上で、専門的かつ実務に即した技術を身に着けることができる教育プログラムを拡充していくことが望ましい。その過程においても、知識や技術だけではなく、ものづくり産業で働くことの意義ややりがいについて積極的に伝えていく姿勢が大切であると考える。また、福利厚生の充実を図り、人材の定着を支援することも重要だろう。
今後も、大多数を占める中小企業が産業や地域の発展基盤となり、日本国内でのイノベーションの中核となっていくことが予想される。東京のものづくり産業をさらに活性化させるためにも、東京都は、上記のような3つの視点を中心に、ものづくり産業の活性化を図っていくことが必要と考える。
行政の役割
近年、わが国において、行政の非効率性が問題となっている。行政は民間企業と異なり、競争原理が働かないため、効率性が劣りがちであると言われる。そうした状況を変えるため、行政サービスの民営化、市場化テスト、指定管理者制度、独立行政法人制度など民間企業の視点を活用した多用な行政のあり方が検討され、郵政事業民営化などが実際に実行されるに至っている。また、近年においては、公共事業を担う企業、NPOなどの急速な成長が見られ、自治会・町内会などによる「地域力」も期待されている。
このような状況からわかるように、現在、わが国においても半ば常識となっていた「公」は行政のみが担うべきものである、といった考え方について見直しがなされている。国民からの税金を財源として行政サービスを行っている以上、限られた資源をもとに最大限の効率をあげることが「公」を担うものの責務でもある。一方、行政と民間の役割分担の際には、サービスの質や公平性などが保たれるような工夫や配慮が必要であると考える。行政は、民間との役割分担にあたっては、①監督とリスク管理、②災害時のサポート、③透明性の確保、④教育と指導の機会の提供といった役割を果たしていくことが大切であると考える。それぞれ以下に具体的に述べる。
まず、①監督とリスク管理について述べる。行政は民間企業や委託先に対し、公共サービス提供にあたりある程度監督や規制を行うことが大切であると考える。特に、安全や品質に関わる事項においては、厳格な監督が必要となる。また、行政は公正な評価基準や検査体制を確立しておくほか、民間委託や民営化の契約を適切に管理し、リスクを最小限に抑えることが大切である。近年も、食や薬剤の安全性をめぐり様々な問題が生じており、そうした個々の問題の特性に合った対応が求められている。適切な契約条件や報告義務を明確にしておくことも大切である。
また、②災害対応と緊急時のサポートも欠かせない。今後起こる可能性のある都市直下型地震など、災害や緊急事態に際して、行政は民間と連携し、民間の提供するサービスを補完できるような体制を予め準備しておくことも大切である。
次に③透明性の確保について述べる。行政は、民間の提供するサービスも含め、都民の意見を積極的に取り入れ、サービスの方針や運営に都民の声を反映させる仕組みを構築することが大切である。これにより、透明性を確保することができるほか、行政が民間の提供するサービスに介入する度合いについて再検討し、調整していくことができる。
次に、④教育と指導の機会の提供に関して述べる。行政は民間企業や委託先に対し、サービス提供にあたっての、手続きや規制などについて、適切な教育や指導を行うことが大切である。この際には、過度に介入しすぎるのではなく、行政は公正な競争原則を確保し、市場における健全な競争を進める姿勢も同時に持つ必要があるだろう。
民間と行政の連携にあたっては、行政が以上のような役割を積極的に果たすことが大切である。これにより、行政は公共サービスの質と安全性を確保し、都民の信頼を得ることができる。東京都は日本の首都として、また、経済の中心地として積極的にそれらに対応し、これからの時代に適した新たな行政システムを日本全体に示していくべきである。東京都のこのような活動は他府県及び国に大きな影響を与え、日本全体の方向性を定める大きな力となるに違いない。
首都東京の職員として
東京はこれまで、都市機能の集中を競争力の源泉として成長を続け、外国企業や観光客も多く訪れる国際的な都市になった。一方、東京都は大都市ゆえ社会・経済構造の変化も激しく、少子高齢化や都民ニーズの多様化など、解決すべき問題も多く抱えている。
このような課題がある中、東京都職員が都民の期待に応え、東京の活力を維持、発展させてゆくためには、職員が公務員の原点である「全体の奉仕者」の立つとともに、一人ひとりが主体性と経営感覚を持って職務に取り組んでいくことが大切であると考える。具体的には、現地の声を聴き活かす姿勢、危機管理意識、チャレンジ精神、この3つをもち、困難に立ち向かい道を切り開いていくべきだと考える。これらについて、以下にそれぞれ説明する。
まず、現地の声を聴き活かす姿勢について説明する。それぞれの職員が専門性を発揮して職務に取り組むことは、より質の高いサービスを都民に提供するために大切である。しかし、専門性を重視しすぎるあまり、都民への説明が不十分になり理解が得られないなど、都民の利益につながらない仕事であってはならない。また、現場や都民の実際にニーズとのずれが生じる危険性もある。そうした事態を避けるためにも、都庁の職員は、実際に都政の現場に赴き、積極的に直接都民の声を聴くことが大切である。聴取会や、オープンフォーラムの提供、アンケートの活用、地域でのイベントの開催などを通して、都民とのコミュニケーションを図っていくことも有効だろう。東京都が抱える困難について、都民からの意見や、提案を積極的に取り入れ、都民の目線から政策の改善や調整を図っていくことが大切である。
また、東京都職員一人ひとりが、主体性と経営感覚を持って取り組むためには、危機管理意識が大切である。東京都は、社会・経済構造の変化も激しく、都民ニーズも多様であるため、様々な施策や事業を実施する際には、不測の事態も起こりやすい。そうした事態を避けるため、プロジェクトに着手する前に、発生し得る問題について可能な限り検討し、その予防に努めることが大切である。また、いざ発生してしまった場合の対応策についても検討しておく必要がある。その際には、世代や職域、性別に関わらず、あらゆる立場の職員から幅広く提案や意見を取り入れ、解決策を用意しておく必要がある。こうした工夫により、危機発生の可能性を減らすことができ、発生してしまった場合にも柔軟に対処することで被害を最小限に食い止めることができる。
次に、チャレンジ精神について述べる。これまでの行政運営ではいわゆる前例踏襲に陥りやすく、過去の実例に則った硬直的な対応をしがちであった。しかし、今後は、社会の急速な変化に対応できる柔軟な行政運営が求められる。そのため、都庁職員には、前例にとらわれることなく、次々と顕在化する社会問題に果敢に挑戦し、積極的に取り組んでいくチャレンジ姿勢が必要だと考える。そして、このチャレンジ精神を活かすには、日頃から、自ら課題を見つける習慣づけをしておくことが大切だろう。また、課題解決のための具体的な施策、事業計画、ビジョンについても一人ひとりが考え、そして周囲を巻き込んでいく力を育てていくことも大切だろう。
今後も、東京都への人口や都市機能の集積が見込まれる中、わが国における大都市東京の役割や、都庁職員に対する期待も大きくなるだろう。私は、そのような中、都庁職員として、上に挙げた現地の声を聴き活かす姿勢、危機管理意識、チャレンジ精神を持って全力で困難に立ち向かっていきたい。
広域化する都市問題
東京都は世界でも有数の人口密集地域であり、産業や政治、経済の中心地である。そのために、ごみ問題や交通渋滞、それに伴う大気汚染やヒートアイランド現象などの都市問題が生じやすい場所でもある。そして、現在、この問題は経済圏、生活圏の広域化と共に顕著となっており、早期の対処を要とする状態になっている。
このような東京都が抱える都市課題に対して、都はこれまで、カーボンマイナス東京10年プロジェクトやスーパーエコタウン事業など、独自の視点から取り組みを積極的に進めてきた。しかしながら、それらの問題の根本的な解決のためには、都が単独で取り組むのではなく、様々な事業主体や特別区等と協力・連携していくことが必要である。以上の観点から、①近隣自治体との連携、②民間企業との連携、③都民との連携、の3つの視点をもって都市問題の解決のための取り組みを進めることが大切だと考える。
まず、近隣自治体との連携について述べる。都は、これまで大気汚染の改善を図るため、近隣の9都県市で協働し、独自のディーゼル車排出ガス規制を国に先駆けて実施した。そのほか、ICタグを活用した感染性廃棄物追跡システムの構築し、産業廃棄物対策を行うなどした。今後は、それに加え、交通インフラの改善と効率化を近隣自治体と共同で進めることで、交通渋滞の緩和を図り、CO2排出量の削減を目指していくことも大切だと考える。
次に、民間企業との連携について述べる。地球温暖化の原因とされるCO2の排出を削減するためには、民間企業との連携と協力が必要不可欠である。都では地球温暖化対策として、民間企業に計画・報告を義務付けた制度に、新たに評価・公表の仕組みを設けた。今後はこれに加え、民間企業と連携し、環境に配慮した技術や製品を開発し、導入することで、大気汚染の削減を目指していくことが大切だと考える。例えば、電気自動車の普及や、再生可能エネルギーの活用などが考えられる。また、交通サービスを提供する企業と連携して、より効率的な交通手段を提供していくことが大切だろう。例えば、カーシェアなどのサービスを拡充することで、交通渋滞の緩和を目指すことができる。
次に、都民との連携について述べる。都市問題の解決のためには、その場所に住む都民の理解と協力が不可欠である。例えば、都は、都民へのエコドライブの喚起・啓発のために、安全運転講習やエコドライブについてのイベントを行ってきた。これについては、都民が参加したいと思うようなイベントづくりが大切だと考える。具体的には、イベントに子ども向けのアクティビティを取り入れたり、イベント参加者には地域の飲食店のクーポンを発行したりといった工夫も一つである。そのほか、ICカード乗車券を活用した公共交通機関の利用について啓発することも、交通渋滞の緩和や大気汚染の減少に効果的だと考える。また、歩行者や、自転車利用者のための、インフラ整備や安全対策の強化が必要となるだろう。加えて、都民と協力して、公共の緑地や公園の整備を推進していくことも有効だろう。例えば、都民参加型の植樹活動や、清掃活動などがある。このように、都としては、都市問題の解決に向けて、都民への啓発を積極的に行い、協力を求めていくことが大切である。
今後、東京都は、このような3つの視点をもって従来の行政の枠組みを超えて民間や都民とも積極的に連携し、主導的な役割を担っていくことで、より複雑化する社会の中で現れる課題に上手く対処していく必要があるだろう。
都民の雇用確保
2008年、いわゆるリーマンショックによってアメリカを発端とし、世界規模での不況が生じた。製造業を中心とした輸出で利益をあげている日本においてもその影響は大きく、各企業は厳しい経営状態に追い込まれた。その後も、日本においては、非正規の雇用やパートタイムの仕事が増え続けている。こうした雇用形態は、安定性や福利厚生の面で不利であり、多くの労働者が不安定な経済状況におかれているといえる。
こうした経済的な側面が着目される一方、私は日ごろから、労働は、単なる金銭の獲得手段ではなく、個人の生きがいやアイデンティティの一部にもなりうるという精神的な充足感も重視すべきではないかと考えてきた。行政は、このような経済的観点と精神的観点の両側面をふまえつつ企業と労働者をつなぐ役割を担っていくべきだと考える。行政は、都民の雇用を確保するために、人材育成、働く現場の創出、都民への情報提供、の3つの視点をもって取り組んでいくことが重要であると私は考える。
第一に、人材育成について述べる。厳しい経済状況の下、人材育成に労力や費用を割くことのできない企業が増えている。そのため、都が行政の立場から、企業の即戦力になりうる人材の育成を積極的に担っていくことが大切であると考える。例えば、「東京しごとセンター」では、非正規雇用者のほか、低所得者層や若年層、女性など幅広い世代に対してキャリアカウンセリングやセミナーを行うことで、人材の育成を図ってきた。私は、こうした取り組みの中では、労働者一人ひとりの興味関心や、得意不得意を引き出した上で、企業のニーズとマッチングさせていく方針が特に有効であると考えている。
第二に、働く現場の創出について述べる。不況時には、働く場を縮小する方向へと向かうのが企業の一般的な動きである。そのため、行政は働く現場を創出することにより、失業者等の支援を行っていくべきだと考える。具体的には、公共インフラの整備や改善を進めていくといった施策がある。実際に、東京都は、近い将来発生するといわれる関東大震災に備え、地震対策を中心とした公共インフラの整備を進めてきた。このような取り組みは、建設・建設関連産業を活性化させ雇用を生み出すとともに、地震対策の両者を同時に実現することができる非常に有意義な試みである。そのほか、雇用の主な源泉である中小企業の支援も重要だと私は考える。20代の若者向けの起業の支援のための助成金、税制優遇などの政策の導入も重要だろう。
第三に、都民への情報提供について述べる。失業者の救済や雇用のミスマッチの解消には、都民への雇用に関する情報提供が必要不可欠である。雇用情報を必要とする層に向けて、これまで都は雇用対策と共に様々な形で情報提供を行ってきた。例えば、中小企業の魅力を発信するパンフレットの配布や、大学生に向けた合同企業説明会などを行ってきた。今後は、スマートフォン向けSNSでの動画配信やアプリケーションでの定期的な情報発信を取り入れていくことで、さらに幅広い年齢層がリアルタイムで情報を受け取りやすくなると考える。
先行きの不透明な経済情勢が続く中で、今後、雇用を巡る問題はより顕著に現れてくることが考えられ、東京都においてはなおさら先鋭的に現れることが予想される。そのような状況の下、東京都が積極的にこの問題に向き合い、日本全体にモデルを示すことで、東京都のみならず、ひいては日本全体の雇用問題の改善にも繋がっていくことだろう。
子育て支援
わが国は、平成17年を境に人口減少時代を迎え、現在少子化が大きな問題となっている。少子化の要因としては、晩婚化や女性の社会進出、価値観の多様化などが挙げられる。また、子どもを産み育てたいと希望する層も多いものの、仕事と子育てを両立できる職場環境にないことや、核家族化により家族内でのサポート力が低下していることなどからくる、時間、金銭、体力面の不安などが壁となり、出産や子育てに踏み切れない者も多い。
少子化は、単に個人の問題ではなく、将来の労働力の低下や、社会保障制度の維持困難に繋がりうるなど、社会全体の問題でもある。そのため、子育て世代が安心して子どもを産み、育てることのできるような社会を実現するために、行政が率先して取り組んでいく必要がある。
こうした背景を踏まえ、私は、社会全体で子育てを支援していくために行政は、(1)働き方の見直しの推進、(2)子育て支援サービスの改革、(3)子育てにやさしい環境づくりの3点から取り組んでいく必要があると考える。
まず、(1)働き方の見直しの推進について述べる。現状、男性の育児休暇取得率は1%台と極めて低い水準にある。私は、男性の育児休暇取得率を上げ、両親が協力して子育てに取り組むことのできる環境を作ることで、子育てへの不安を少しでも減らしていくべきであると考える。そのため行政は、男性従業員が育児休暇を取得しやすい風土づくりを企業側に求めていくことが大切である。育児休暇を取得する男性当事者にも、そのメリットや、制度についてわかりやすく啓発していくことが大切である。また、分割で休暇をとることができるなど、各家庭や仕事の事情に合わせて、柔軟に利用しやすい育児休暇制度を策定することが必要であると考える。
次に、(2)子育て支援サービスの改革について述べる。働きながら安心して子育てを行うためには、さらなる保育サービスの拡充が不可欠である。具体的には、育児支援センターや親子ふれあい施設の数を増やすことで、親が子育ての情報を気軽に集めやすくするとよいと考える。そこでは、多忙な親や、外出が負担となる親など、様々な状況にある親が利用できるよう、オンラインで専門スタッフが対応する育児相談窓口を設置することもひとつと考える。また、現状で不足している保育士の人員を増やすため、保育士の資格取得支援や、病児保育などの専門教育の充実、給与面の待遇改善などを行っていくことも重要である。そのほか、親が子どもを安心して任せることのできる認定シッター制度などを積極的に導入、普及させていくことも必要だろう。
最後に、(3)子育てにやさしい環境づくりについて述べる。少しでも育児ストレスを軽減できるよう、ベビーカーでも利用しやすい公共交通機関、道路設備を充実させていくことが大切だと考える。また、外出時に母親が安心して利用できるような授乳スペースの増設も必要だろう。加えて、赤ちゃんや子どもを社会全体で見守ることを呼びかける啓発ポスタ―を駅などに設置していくことも有効だろう。
子育て支援は、個人の幸せの実現だけでなく、社会全体の維持・発展にも欠かせない重要な課題である。私は、日本の首都であり、政治経済の中心地でもある東京都が、子育て支援に対する積極的な取組を行うことで、他の自治体にモデルを示すとともに、国全体の子育て支援サービスの質の向上に寄与していくことが大切だと考える。
高齢者がいきいきと暮らせるまちづくり
日本は世界に類を見ない速さで少子高齢化が進んでおり、令和元年時点では、総人口に占める65歳以上の割合は28%を超えている。今後はさらなる超高齢社会の到来が予想されており、早急な社会福祉制度の見直しが求められている。東京都は、今後の超高齢社会において、高齢者が安心・安全にいきいきと暮らせるまちづくりのため、介護職員の増員および介護の効率化、地域ケア体制の整備、元気な高齢者の社会参加の促進、大きくこの3点を進めていくのが望ましいと考える。
まず、介護職員の増員と介護の効率化について述べる。東京都における特別養護老人ホームの定員数は年々増加しており、施設整備の面において一定の成果があがっている。しかし、今後は、介護人員の不足が予想されており、介護職員の増員が喫緊の課題となっている。私は、介護職員の資格取得や継続的な教育・訓練のプログラムなどの支援を積極的に行っていくことが、介護職員増員のために必要であると考える。また、介護職員の賃金アップにも取り組んでいくべきだろう。また、介護を効率化させ、介護負担を減らすための方策の一つに、介護にAIロボットを導入することも有効であると考える。
次に、地域ケア体制の整備について述べる。特に東京都においては、核家族化や都市化による住民の流動化といったコミュニティの変化が大きく、地域や家族による支え合いが低下しているという現状がある。しかし、高齢者が安心して暮らすことのできるまちづくりのためには、地域の持つ役割が必要不可欠である。東京都は、ボランティア等の地域住民が、高齢者への声かけや訪問活動を行う、「高齢者見守りネットワーク」や、地域と連携した高齢者の見守りの拠点となる「シルバー交番」を運用し、高齢者の孤立化を防いでいる。私は、こうした見守り活動の際には、高齢者のプライバシーを尊重することや、個人情報の適切な取り扱いを徹底していくことも重要だと考える。
最後に、元気な高齢者の社会参加の促進について述べる。日本における退職年齢後の就労意欲は高く、65歳を超えても働きたいと答えた人は全体の70%以上に上る。また、ボランティアへの参加意欲の高い高齢者も多い。このような状況の中で、高齢者が積極的に仕事やボランティアに参加することは孤立を防止だけでなく、高齢者の生きがいにもなりうる。また、若い世代にとっても高齢者の知識や経験は有用なものであるということを考えれば、このような高齢者の社会参加は積極的に進められるべきである。これについて、東京都として、高齢者向けの求人情報ポータルを提供し、企業とのマッチングを支援する就業支援プログラムの運用を積極的に進めていくのがよいと考える。また、高齢者向けの専門職業訓練センターを設置し、デジタル面を含む新たな技術やスキルを習得できるように支援することも大切だろう。そのほか、高齢者が体力的に無理なく働くことができるよう、企業に対してフレックスタイム制度を導入することも一つであろう。ボランティアに関しては、高齢者が若者の仕事や対人関係での悩み相談に応じる、子どもに遊びを教えるなど、高齢者と若者をつなぐようなボランティアを企画していくこともひとつだと考える。
今後到来が予想される超高齢社会においては、高齢者の支援は最重要課題の一つとなっている。その中では、社会全体、とくに地域での共助の視点が重要な意味を持ってくるため、都としては積極的にこのような仕組みづくりを推進していくべきであろう。そうして取組を進めていくことで、高齢者が安心していきいきと暮らせる東京が実現されるだろう。
東京都庁の過去問
なお、東京都庁の過去問は下記の記事で紹介しています。
東京都庁は論文対策が非常に重要となるため、過去問で出題があったテーマは一通り目を通しておきましょう!
裁判所の模範解答例を公開中
なお、下記の記事では「裁判所の論文模範解答例」を公開しています。
この記事を読んでいる東京都庁受験生の中には、裁判所を併願している人もかなり居るでしょう。
裁判所の論文対策として、ぜひ参考にしてください。