今回は公務員試験の中でも、主に市役所で実施されることの多い作文対策について紹介します。
多くの自治体では、作文が実施される区分は高卒程度のため、本記事では主に高卒程度を念頭に置いた作文作成のポイントについて解説します。
具体的なOK例とNG例を出しながら説明していくのでぜひ参考にしてください。
本記事で分かることは次の通りです。
・作文でよくあるNG例5選
・作文のおすすめ段落構成
・作文の書き方
・課題に沿った文章を書くコツ
・減点されやすい作文
論文の書き方や文章のルールについては下記の記事で解説しているので、論文試験を受験予定の人は併せてご一読ください。
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作文で注意すべきポイント

①指定文字数を守る
作文の添削をしていると、指定文字数が守られていないものが意外とあります。
しかし添削者が始めに見るのは内容ではなく、所定のルールを守っているかどうかです。
特に文字数は大前提として守るべきルールのため、必ず守るようにしてください。
その上で、文字数は指定文字数の9割以上を埋めるようにしましょう。
作文試験においては、最後に1~2行余るくらいのイメージで書き進めるのが一般的です。
②丁寧な字で書く
字を雑に書いている人はその時点でマイナスの印象を与えてしまうため、全体を通して丁寧な読みやすい字で書くことを意識します。
内容はとても良いのに、字が読みにくいが故に大幅減点となる可能性もゼロではないため、日頃の練習から丁寧に書くようにしましょう。
採点者は何人もの受験生の作文を読んでいます。
試験官も人間ですので、丁寧に書き上げられた文章には高評価を付けたくなるものです。
特に以下のような字はNGなので注意しましょう。
・とめ、はね、はらいが無い
・字が小さい
・筆圧が弱すぎる
・マス目からズレている
③最後まで書く
当たり前ですが、作文試験では60分や80分など制限時間が設けられています。
この時間内に、問題文に沿った回答を最後まで書き上げるというのが作文試験の課題です。
“決められた時間内に求められたことをこなす”というのは社会人として当たり前に求められるスキルのため、提示した条件を満たせない人は仕事ができないと判断されてもおかしくありません。
時間ギリギリに書き終える時間配分だと、最後まで書けず途中で終わってしまう可能性が高いので、普段から速く丁寧に書くことを心がけていきましょう。
作文でよくあるNG例5選
作文の体裁を守り丁寧な字で書いていても、やはり内容面で差がついてくるものです。
特に「読みにくい」と感じる文章がその原因となっています。
そのため、相手に読みにくいと感じさせる文章や表現方法をなくしていくことが、作文ではとても大切になってきます。
具体的に、読みにくさを感じさせやすい文章や表現方法には以下のものがあります。
①1文が長い
②本題に入るまでの前置きが長い
③体言止めや倒置法を使用する
④同じ言葉を多用する
⑤形容詞終止形に「ですます調」を使用する
このような文章や表現はパッと読んだときに違和感を持たれることが多いため、目で追ったときに流れるように読めることを目標として書くことが求められます。
これら5つのNG例について、一つずつ解説していきます。
①1文が長い
1つ目のNG例が、1文が長いというものです。
続いて、2つ目の例を見てみます。
1文が長くなると主語と述語が不明瞭になりやすいため、1文は60字程度を目安に区切るようにしましょう。
このように文章を2~3文に分けることによって、自分の主張したいことと現状を上手く切り離して文章化することができます。
②本題に入るまでの前置きが長い
2つ目が、本題に入るまでの前置きが長いというものです。
なるべく多く自分の考えを作文の中で書けるように、必要のない前置きは書かないことを意識しましょう。
③体言止めや倒置法を使用する
3つ目が、体言止めや倒置法を使用するというものです。
こうした表現は読み手を引き込ませる一つのテクニックともいえますが、公務員試験の作文においては不向きなので、自分の考えを淡々と述べるようにしましょう。
④同じ言葉を多用する
4つ目が、同じ言葉を多用するというものです。
このケースの場合、「~思う。」を多用しています。
「思う」自体は使ってはいけない表現ではありませんが、同じような文末が繰り返されると単調な印象を与えてしまいます。
そもそも作文は自分の意見を述べる場なので、「~思う。」などの曖昧な表現よりも言い切る表現の方が望ましいです。
このように文末の表現に気を付け、文章にメリハリを出すように意識しましょう。
⑤形容詞終止形に「ですます調」を使用する
最後が、形容詞終止形に「ですます調」を使用するというものです。
「形容詞終止形って何?」と思った方は、下記のNG例を見ればよく分かると思います。
大袈裟にいうと、サザエさんに出てくるタラちゃんのような感じです。
このように自分の意見やそう思う理由を文章に入れることで、形容詞終止形に「ですます」をつけることなく伝えることができます。
特に公務員試験の作文では、子どもっぽい表現をなるべく避けるように文章を書いていきましょう。
作文の段落構成はどうすべきか?
作文の注意点が分かったところで、実際に文章に落とし込んでいく作業の一つとして「段落構成」について見ていきます。
作文でおすすめの4段落構成
作文の対策本などを見ていると、以下のような3段落構成が推奨されていることが多いと思います。
・第1段落:序論(問題提起)
・第2段落:本論(具体例や解決策)
・第3段落:結論(まとめ)
しかしこの3段落構成だと、本論をどのように書いていいのか分からないと悩む受験生も少なくありません。
ただ、段落を全く意識しなくていいのかと言われると、ある程度の構成は練っておく必要があります。
そこでおすすめなのが、以下のような4段落構成です。
・第2段落:経験談や事実を述べる
・第3段落:第2段落の内容に対する自分の意見や得たことを述べる
・第4段落:第2~3段落のまとめを述べる、志望する職種に関連付けた内容を入れる
ある程度自分で構成をつくれる人は良いのですが、作文を苦手とする方は上記のように4つの段落に分けて書いていくと書きやすいと思います。
さらに「自分の型」として書き方や構成が馴染んでくれば、課題を見た段階でどのように書けば良いのかが分かるようになります。
またこのような段落構成を用いれば、指定文字数の9割以上を目指すことや余裕を持って書き切ることが容易になります。
段落のNG例をチェック!
ここで、段落構成ができていない例を見てみましょう。
NG例で気になるのは、各段落における文章量に差があることです。
特に4段落目は自分の意見を書く場となりますが、書きやすいが故に文章量が多くなりがちで、作文全体としてはアンバランスに感じてしまいます。
話が変わる部分で段落を分けるという基本を押さえることによって、バランスの良い文章を書くことができます。
また今回はあくまでも例文になりますが、上記の書き方だと指定文字数を大幅に割ってしまう可能性が高いです。
800字の指定があるときは少なくとも700字は欲しいところなので、どの部分にどのくらいの文章を書くかというバランス感覚も大切になってきます。
それでは、このNG例を参考に段落ごとのポイントを見ていきましょう。
今回の例文だと、1~2段落は1つの段落に収めてしまっても問題ないと思います。
文章量としては、だいたい100字くらいが理想です。
4段落にある自分の経験談(失敗談)をさらに具体化して、何が良くなったのか、どうすれば良いのかを記述しましょう。
文章量としては、だいたい300字くらいが理想です。
「このような問題を減らすには」の部分から段落を分けて、自分の体験やニュースを踏まえた自分の意見を300字ほどで記述しましょう。
最後の段落は、志望職種への意欲や目標を示しましょう。
課題について触れることは大切ですが、公務員になりたいという熱意の伝わる文章を書くことも重要です。
今回の課題はSNSの使い方の問題なので、SNSに絡めた内容が望ましいでしょう。
上記のように100字、300字、300字、100字と書いていくと、ちょうど800字となります。
日頃から段落を4つに分けて、上手く文章量のバランスをとることを意識して書く練習をしていきましょう。
【4ステップ】作文の書き方
続いて、作文作成の具体的な書き方に入ります。
作文試験では、「あなたの考え」や「感じたこと」を書くケースが多いのが特徴です。
よくある課題テーマとしては、例えば下記のようなものです。
・あなたが一番大事にしていること
・あなたが最も努力したこと
・あなたが考える「チームワークの大切さ」とは
こうしたテーマについてどのように書いていけばよいのか、ステップごとに見ていきましょう。
①自分の主張(結論)
作文試験では基本的に「その受験生の考え」を聞いているため、基本的にまず自分の主張(結論)を述べるのが定石です。
例えば「あなたの理想の公務員像」というテーマであれば、
私の理想の公務員像は、住民(国民)目線で考え行動する人です。このように考えたのは~
などとなります。
②その結論になる理由(理由)
次に、その結論に至った理由を述べます。
一例としては、
常に住民(国民)目線で考え行動することで、住民(国民)が暮らしやすい街をつくることができると考えるからです。
などです。
上記の例は「ほぼ誰から見ても正しい一般論」でもあります。
だからこそ、何も考えていないと「理由」を述べることができなくなってしまうので気を付けましょう。
③その理由の裏付け(根拠)
次に、なぜその理由になるのかという根拠を説明していきます。
例えば、「○○という取組をすることで、□□が○%アップしたというデータがある」という具体的な数値や、「私自身、○○を体験しており~」などと自分の経験を交えることができると説得力を出すことができます。
論文では客観性が重要視されるため、基本的にはデータなどをもとに記述していくことになりますが、作文はテーマによって多少自分の経験(主観)を入れても問題ない場合が多いです。
根拠が薄いと判断されないように、なるべく具体的な内容を記述しましょう。
④もう一度結論を述べる(再結論)
最後に、作文の冒頭で出した結論をもう一度出します。
結論→理由→根拠と様々述べていくと、読み手が「結局何が言いたいんだっけ?」と混乱する可能性があるため、分かりやすくまとめを書きます。
最後に「だから私は○○だと思っている」と再度書くことで、読みやすさを格段に上げることができます。
試験官の心情という観点からも、好ましい構成となるでしょう。
課題に沿った文章を書くコツ

作文の課題は論文試験と同じで、正しく読み取り、正しく回答することが求められます。
まずは、課題に沿った文章を書くコツを3つ紹介します。
①問題点を正しく解釈する
1つ目が、問題点を正しく解釈することです。
個人的な考えを聞かれているわけではないため、行政の目線で問題視されていることを述べるようにしましょう。
根拠となるデータなどがあれば、それを示すのも良いでしょう。
②公務員試験に相応しい回答をする
2つ目が、公務員試験に相応しい回答をすることです。
実際の過去問を例に見てみましょう。
国家一般職(2021年)
物事を継続するために必要だと感じたことについて、具体的に述べなさい。
参照:<国家一般職>論文過去問
確かに睡眠は大切ですが、それが公務員の仕事に直接関係があるかと言われればそんなことはないですよね。
そのため今回の例であれば、自分の経験から公務員試験に相応しい題材を選び、継続するために実際に自分が取り組んだことや学んだこと等について論じていくのが良いでしょう。
【注意!】減点されやすい作文

作文試験においてはどの受験生も似たような意見が多いため、自分の実体験や意見を入れることでオリジナリティを出していきたいものです。
ただし、あまりに個性的な内容や偏った意見は減点されやすいためバランス感が大切です。
ここからは、減点されやすい作文を4つ紹介します。
①自己中心的な内容になっている
1つ目が、自己中心的な内容になっているというものです。
特に作文を苦手とする受験生は、自分の言葉選びが作文試験として適切なのかを第三者に判断してもらうようにしましょう。
②批判的な文章になっている
2つ目が、批判的な文章になっているというものです。
よくある課題として「感じていることを述べなさい。」というものがありますが、これは感想を述べるのではなく問題に対しての対策を述べなさいという意味になります。
そのため自分の個人的な願望ではなく、「国民が」「市民が」というように上手く主語を書き換えて、問題に対する対応策に変化させる必要があります。
また当然ですが、政治や宗教といったものは作文の題材に相応しくありませんし、「腹立たしい」などの文言は使わない方が良いです。
不満を述べて終わるのではなく、意見を述べる必要があることを忘れてはなりません。
③偏見や思い込みで述べている
3つ目が、偏見や思い込みで述べているというものです。
このような社会保障制度がテーマになっている場合には、しっかりとした下調べやデータが必要になります。
そのため、思い込みや個人的な意見ばかりにならないように注意する必要があります。
生活保護を受けている人の理由は様々で、やむを得ずに受給している人も少なくありません。
確かにニュースでは不正受給などが取り上げられることもありますが、正しく生活保護費を使って生活している人も数多くいます。
無駄遣いを避けて欲しいという思いは分かりますが、あくまでも個人的な願望に過ぎないため、受給者側の視点にも寄り添った文章となるように注意しましょう。
例えば自立を促すことの難しさや、日本の生活保護受給率が低いことなどに視点を変えて書いてみるのも良いでしょう。
国や自治体が取り組んでいることを調べながら、自分が公務員となったときにできることを考えて書くようにしましょう。
④ネガティブすぎる
4つ目が、ネガティブすぎるというものです。
これでは、ネガティブすぎる印象を受けてしまいます。
テーマ自体が「後悔」と暗いテーマだったとしても、それに引きずられずに前向きな文章を書くことが重要です。
またこのようなテーマの場合は「何も頑張らなかった」という”無”のことではなく、何かをして後悔したという文章にすることがポイントです。
そして教訓については「どうしたい」ではなく、何に活かしたのかを書くようにしましょう。
まとめ
今回は、公務員試験における作文作成におけるポイントについて解説しました。
具体例を確認したことで、どのような文章が良くて、どのような文章だと良くないのかがイメージしやすくなったのではないかと思います。
公務員試験の作文については、苦手意識を持っている方も多いと思いますが、しっかりと対策すれば合格することができます。
「作文」と「論文」と「感想文」は違います。
「あなたが感じていること」というのは個人の感想ではなく、どのような問題があり、どのような解決策があるかということなので、その意味をしっかり理解した上で対策をしていきましょう。




