公務員試験の論文対策では、なるべく多くの出題されやすいテーマの情報を調べてインプットすることが大切です。
今回は、そんな公務員試験の論文における頻出テーマの一つである「高齢化社会」について論点のまとめ方や論じ方を詳しく解説していきます。
合格者答案も模範解答として載せているので、今まさに公務員試験対策をしている方にとって非常に参考になると思います。
「高齢化社会」をテーマにするにあたり、押さえておくべきコツは主に次の3点です。
・最新の問題点
・構成の「型」を押さえる
それぞれ詳しくご紹介していきます。
あわせて、下記の記事では公務員試験の論文頻出テーマをまとめたものを紹介しているので、まだ読んでいない人はこちらも読んでみてください。
高齢化社会の原因と課題

高齢化対策を論じるためには、前提として高齢化社会が進行した背景を理解しておかなくてはなりません。
原因
高齢化社会が進行した主な要因は、生産年齢人口の減少と平均寿命の延伸だと言われています。
近年我が国では、核家族化や晩婚化などの影響により合計特殊出生率が減少しています。
一方で、医療技術の進歩などにより死亡率は低下していることから、平均寿命は延びています。
この結果、生まれてくる人の数が高齢者人口を下回ってしまい、多くの高齢者を支えきれなくなってきているのが現状です。
我が国では4人に1人が75歳以上となり、今後も高齢化は進み続けると予測されています。
課題
それでは、このような高齢化社会においてはどのようなことが課題とされ得るのか。
論文などでもよく課題として挙げられるのは、主に次の2つです。
②労働力不足
まさに今の日本が直面している課題ですね。
まず社会保障費とは、主に医療や年金、介護、子育てなどの福祉分野で使われる費用のことです。
今や国の一般会計歳出の約3分の1を占めるほど増大し続けています。
また生産年齢人口が減少しているので、労働力不足も深刻です。
近年では特に介護分野の人員不足が懸念されており、施設に入れず老老介護をせざるを得ない状況にある人も多くいます。
介護問題については論文でも重要な論点なので、この機会にしっかり押さえておきましょう。
最新の問題点

先ほども述べたとおり、ひと昔前と比べると日本人の平均寿命はとても伸びています。
それに伴い、介護施設はいつも人手が足りていない状況。
家庭内で介護をするにしても、介護する方・される方の双方が高齢になっていくと、介護は現実的に重くのしかかってきます。
さらに介護職の人材、家庭内介護の限界も大きな問題ですが、近年は若年層の少年少女が高齢者の家族を介護する「ヤングケアラー」が増えていることも問題視されています。
介護職の人材不足は、外国人労働者の採用が進むなど新たな取組も積極的に行われてはいますが、まだまだ問題は山積みです。
2000年には介護を必要とする人を社会全体で支える「介護保険制度」も導入されたものの、現在に至るまで何か大きく変わるということはありませんでした。
各介護施設は利益を上げるのが苦しく、国からの補助金でどうにか維持しているのが現状です。
【具体例で紹介】構成の「型」を押さえよう!

高齢化社会の根本的な要点や最新の問題点を押さえたら、いよいよ実際に書く練習に入りましょう。
論文が苦手な人はいきなり書き出してはいけません。
まずは論文構成の「型」をしっかり頭に入れましょう。
①問われたことについての自分の意見
②現状分析とその問題点
③解決策や取組
④解決策や取組の根拠
⑤結論
続いて和歌山県庁の過去問を例に、この型をどう使うか具体的に見ていきます。
【2021年】
和歌山県における人口減少や少子高齢化が進む現状を踏まえた上で、県の取り組むべき施策について、あなたの考えを述べなさい。<和歌山県庁>論文過去問を参照
・県として高齢者の就労機会や介護人材の確保を推進していくべきである。
・和歌山県では、少子高齢化対策としてすでに〇〇や〇〇などが行われているが、それだけでは十分とは言えない。少子高齢化による社会保障費の増大や労働力不足は未だ大きな課題である。
・就労:シルバー人材センターの活用促進や、行政と民間が協働した就業先のマッチングによる雇用の創出を行う。
・介護:介護ロボットの試験的な導入をしたり、外国人労働者を積極的に雇用したりする。介護職の賃金の補助を行う。
・高齢者の雇用は、健康寿命を延ばすことで医療費等を抑えながら、税収も増やすことが可能となる。
・介護人材を増やすためには待遇面などの改善が必要であるが、取り決めに時間がかかる場合もある。同時に介護ロボットや外国人労働者を活用することで、スピーディーに取り組むことが可能となる。
①で述べた自分の考えを、②~④を踏まえて結論として再提示する。
いかがでしょうか。
上記の①~⑤の構成の型は、基本的にどのようなタイプの論文にも応用することができます。
また、設問文の中に「具体的に挙げて…」などの文言があった場合は、「③解決策や取組」の部分には、「自分ならこういう経験・能力を活かしてこのように取り組む」という“自己のスキルアピール”をさらっと入れましょう。
今回の和歌山県の過去問のように自己PRを直接的には求めていない場合、それをくどくどと書くのは逆効果になるので注意が必要ですが、課されたテーマの流れの中での自然なアピールは可能な範囲で入れておきたいところです。
なお、このようなテーマが出題された場合には、高齢化についてある程度情報を押さえていないと記述ができないと考えられます。
そのため、日常的に県庁や市役所の公式サイトをチェックし、最新情報をインプットしておくようにしましょう。
情報を得たのが半年前…となると、公務員試験のときにはその情報が古くなっている可能性があるので、こまめなチェックを心がけていきましょう。
【合格者答案】論文模範解答例

ここで、参考までに合格者の論文模範解答を掲載しておきます。
全文を読み、「こういう風に書けばいいんだ」という感覚を掴んでみてください。
【高齢化対策】模範解答例
近年、日本女性の合計特殊出生率は、未婚化や晩婚化が進んだために低下し、その結果若年人口も右肩下がりとなってしまっている。その一方で、平均寿命は延伸しているが、これは医療技術の進歩や生活環境の改善による死亡率低下によるものである。以上の要因により、日本の少子高齢化は進行の一途をたどっている。
このように高齢化が進行すると、社会保障費(医療費や年金など)が増加し、増え続ける高齢者を介護する人材も減少する。すると、高齢者の生活を社会全体で支えられなくなる懸念が生じてくる。こういった課題の解決のために行政が講じるべき対策について、以下に2つの具体的な提案を述べる。
第1に、高齢者の就労機会を確保することが、この課題の解決に効果的に作用すると考える。高齢者が働くことの効果としては、高齢者の健康寿命を延伸し、医療費や介護費を低くするということが考えられる。また、税収増加も期待できるだろう。具体的に行政にできることは、民間企業や地域と協働して、就労意欲のある高齢者と就労先をマッチングする体制を整えるという取組である。自治体の成功事例を挙げると、千葉県柏市では「生きがい就労事業」として、同市、UR都市機構、東京大学高齢社会総合研究機構が協働して就労機会確保の取組を行った。この例ではまず、高齢者にアンケートを行って、就労ニーズを正確に把握した。そして、ニーズにあった農作業用地の確保や、さまざまな就労機会のありそうな施設への働きかけに努め、高齢者と就労先を結びつけることに成功したのである。〇〇市においても、以上のような取組を行い、高齢者の就労機会を充実させることで社会保障費の増大を抑えていきたい。
第2に、新たな介護人材を確保することは、待ったなしの課題であると考えられる。ここで新たな介護に携わる人材として、前期高齢者と言われる65歳から74歳の高齢者層に活躍してもらうことを提案したい。この年齢層の高齢者に活躍してもらうことで、介護人材を確保できるのと同時に、就労者である前期高齢者の健康寿命を延ばす効果が期待できる。前期高齢者の労働力を活かす場合は、彼ら彼女らの体力面を十分に考慮することが強く求められると考えられる。そこで、介護の仕事の中でも体力を要する作業と、それほど体力を使わない作業とに作業内容を分けて対応することで、前期高齢者に過度の負担をかけずに働けるよう体制を整えていきたい。このような取組により、介護の人材不足の課題を解決させることを提案する。
以上のような取組により、社会保障費(医療費や年金など)の増大と、介護の人材不足の課題に対処していく。私が〇〇市に採用された暁には、これらの対策に全力で取り組む所存である。
まとめ
最後に、高齢化社会のテーマで事前に押さえておくべきポイントを2点まとめておきます。
・高齢化問題の論点や対策に関する情報収集をしておく
高齢化がテーマとして挙げられた際、こうした情報をもとに論文を書いていくと、行政や志望先が抱えている課題にマッチした内容になりやすくなります。
なお、下記の記事では全国の公務員試験の論文過去問をまとめています。
公務員試験受験生は参考にしてみてください。


