<国家総合職>論文過去問

国家総合職の論文過去問をまとめています。

なお、下記の記事では全国の公務員試験の論文過去問をまとめています。
公務員試験受験生はぜひ参考にしてください。

試験概要

kokuso-kakomon

【大卒程度試験】
・形式:政策論文
・試験時間:120分
・文字数:指定なし

大卒程度試験

【2023年】
情報社会を迎え、あらゆる行動が監視の対象となり得ている。自分に対する監視を許容することは、相手を信頼して自らに関する情報を提供することでもある。行政官として国民との信頼関係を築きながら情報提供を求めるために必要なことは何か。以下の資料1~3の内容を踏まえ、具体的な政策を挙げて、あなたの考えを論じなさい。

※資料は省略

【2022年】
※データなし

【2021年】
1999年に男女共同参画社会基本法が制定されてから20年以上が経過した。男女共同参画とは男女が性別を問わず、意欲に応じて、あらゆる分野での活躍を可能とする社会を目指すものである。我が国の国家公務員及び企業における女性の参画状況については、以下の図のとおりである。このような状況を踏まえ、今後、男女共同参画を進めていくためには、政策立案に当たる者は、我が国の行政機関を対象としてどのような施策や対応策を講ずるべきか。資料を読んだ上で、あなたの考えを論じなさい。

※資料は省略

【2020年】
デジタル社会がその可能性を損なうことなく健全な発展を遂げるために、政策の立案に当たる者は、どのような施策を講じるべきか。資料を読んだ上で、あなたの考えを論じなさい。

※資料は省略

【2019年】
社会的にコンプライアンスの在り方が問われている。組織の自律性がどのようにコンプライアンスの向上に貢献し得るかについて論じなさい。

※資料は省略

【2018年】
解決に専門的知識を必要とする公共的な課題を取り上げ、それを踏まえた上で、政策形成の観点から行政官に求められる専門性や役割について論じなさい。

※資料は省略

【2017年】
政策立案には根拠が重要といわれる。一方で、客観的なデータ等を根拠に政策立案を行う際にはいくつかの留意点があると考えられる。客観的なデータ等の根拠に基づく政策立案はなぜ必要とされるのか。また、その際に留意すべきことは何か。あなたの考えを論じなさい。

※資料は省略

【2016年】
現代社会における個人情報をめぐる諸問題を挙げた上で、これらに対して、あなたが必要と考える政策について論じなさい。

※資料は省略

【2015年】
2050年において日本政府が優先的に取り組むべき政策はどのようなものか、あなたの見解を述べなさい。

※資料は省略

【2014年】
受益と負担を公平にするために、税の果たす役割は何か、あなたの意見を述べなさい。

※資料は省略

【2013年】
現代世界における国境のもつ意味について論じなさい。

※資料は省略

【2012年】
国民の「安全」と「安心」に関し、資料1~3を参考にしながら、次の問いに答えなさい。

(1)専門家の役割とは何か。
(2)政府の役割とは何か。

※資料は省略

【2011年】
資料1~3を参考にしながら、次の問いに答えなさい。

(1)現代日本における人々の「幸福」とはどのようなものか。具体例を挙げつつ、あなたの考えを述べなさい。
(2)現代日本における人々の「幸福」に対する政府の役割についてあなたの考えを述べなさい。

※資料は省略

【2010年】
(1)資料1から3は、何らかの意味で、日本社会のコミュニティの特色について触れている。あなた自身は現代日本のコミュニティの特色について、どう考えるか、具体的な事例を挙げながら、述べなさい。

(2)これからの日本社会にとって、どのようなコミュニティが重要になっていくか、また、そういったコミュニティと、個人、NPO、企業、行政などとのかかわりはどうあるべきか、あなたの考えるところを述べなさい。

※資料は省略

【2009年】
(1)資料1~3では、行政にかかわる者の在り方について、それぞれどのような主張をしていると考えられるか。「合意形成」、「三位一体」、「専門的職業人」というキーワードに留意しつつ述べなさい。

(2)資料1~3の主張の各々を参考にしつつ、21世紀の日本を取り巻く変化に対応していく上で、何が行政に求められているのか、また、それに対応していくためには、どのような官僚像が望ましいと考えられるか述べなさい。

※資料は省略

【2008年】
戦後に新しい公務員制度が生まれてから、早くも60年の歳月が経過しようとしている。この間、行政の果たすべき役割、政治と行政の関係、国民の行政に対する意識など、国家行政の中核を担う公務員を取り巻く社会環境は大きく変化してきた。特に近年、政策の立案・執行・評価における公務員の仕事への取り組み方が、改めて問われるケースが多くなった。こうした状況の中で、公務員は時代の変化の方向性をできる限り正確に把握し、変化に対して適切に対応していくことがますます求められるようになっている。次のページ以降の資料1、2を参照して、設問(1)、(2)に答えなさい。

(1)公務員を取り巻く状況の変化について、それが具体的にどのようなものか、その原因や理由も含めて、あなた自身の考えを述べなさい。
(2)あなたが将来かかわりたい公務の仕事の種類を明確にし、(1)を踏まえて、仕事への取り組み方について、その背景となる理念を明らかにした上で、具体的にあなたの考えを述べなさい。

※資料は省略

【2007年】
国家政策においても、地方行政においても、企業活動においても、そしてNPOをはじめとする市民の活動においても、「公共性」の担保が何よりも重要視されるようになっている。ところが、「公共性」をめぐる現在の議論にはさまざまな意味が錯綜しており、それによって議論が不必要に混乱する場合も見受けられる。齋藤純一は、著書『公共性』の中で、「公共性」という言葉が使用される場合には、通常そこに三つの異なる意味が見受けられるとしている。

1 official:国家に関係する公的なもの(国家が法や政策などを通じて国民に対して行う活動)
2 common:特定の誰かにではなく、すべての人びとに関係する共通のもの(共通の利益・財産、共通に妥当すべき規範、共通の関心事など)
3 open:誰に対しても開かれているもの(誰もがアクセスすることを拒まれない空間や情報など)

これら三つの意味での「公共性」は、いうまでもなく相互に深く関連しているが、同時に、互いに対立するケースもしばしばある。さて、1、2、3のどの意味において議論するにしても、「公共性」は、広く国民一般、あるいは「すべての人びと」にかかわる事柄であることは疑いをいれない。とすると、「公共性」をめぐる議論それ自体が、「公共的」な方式や手続きの下でなされなければならないことになる。「公共的議論」、それはかつて「公論」と呼ばれた。資料1は、明治期における「公論」の形成について述べたものである。ここにうかがえるのは、明治期には、「公論」が一貫して「統治」の視点から問題にされたということである。「統治」の視点というのは、統治者主導で「公共的議論」の場が設定されたということである。これに対して現在では、(政府・議会に限らず)社会のさまざまな構成員の相互協力や合意による社会形成のプロセスを「ガバナンス」と呼んで、「統治」と区別することがある。例えば、資料2では、科学技術を「政治的討議」の対象から免除する従来の「統治」型の発想に対し、現在、科学技術をめぐる議論に求められているのは「ガバナンス」型の発想であるとしている。「公共的議論」について、以上の概説、資料1、2を踏まえた上で、設問(1)、(2)に答えなさい。

(1)現代日本社会における「公共的議論」の問題点について、その歴史的経緯を視野に入れつつ、あなたの考えを述べなさい。

(2)「公共的議論」の方式に関しては、資料2の参加型テクノロジーアセスメントのほか、パブリックコメント、タウンミーティングなどが現に導入されている。また、導入が予定されている裁判員制度も司法の場における新たな公共的議論の方式であるといえる。あなたが国家公務員として将来就きたい実務において特定の政策を立ち上げるとき、どのような「公共的議論」の方式を編み出すのがよいか、(1)を踏まえて具体的な提案を予想される問題点とともに示しなさい。

※資料は省略

【2006年】
「豊かな社会」であれ「安心して暮らせる社会」であれ、国民にとって「より良い社会」、つまりは「ひとりでも多くの人がここで暮らせて幸福であると思える社会」を築き、支えること、ここに行政の使命はある。とすれば、行政に携わることを目指そうとする人は、人々にとって「幸福」とは何であるかについて、確かな考えを持たねばならない。それなしに行政を動かしていくことは、海図を持たずに航行するに等しいからである。さて、西洋社会では古代ギリシャ以来、幸福論は常に社会思想の基本にあった。幸福とは「良い生活」のことであり、その「良さ」について考えること、そして「良い生活」を送るために人はどのように振る舞ったらよいかを考えることが、道徳や社会を考えるときの基本にあった。それゆえに、アリストテレスやカントにおいても、J.S.ミルやマルクスにおいても、それぞれ社会思想としての主張は異にしても、幸福論というものを外してその社会思想は有り得なかった。とりわけ、19世紀は、幸福を主題とした思想や文学があふれ、幸福論絶頂の時代という感があった。ところが、20世紀に入ると、二度にわたる世界戦争が人間性に与えたダメージが致命的なものであったからだろうか、幸福になるためのハウ・ツー本は巷にあふれても、そして不幸論や苦悩論はあっても、幸福についての思想というのはぱたりと姿を消してしまう。20世紀社会には、確かに様々な革命があった。政治革命、文化革命、科学革命、情報革命、性革命、そしてグローバリゼーション。しかしその中に、幸福論の革命は見当たらない。21世紀に入った今、私たちは、「幸福」とは何か、そして「幸福」を考えるときの規準は何かと、改めて問い直してみるべきではないか。そこで、次の資料1、2をよく読んだ上で、設問1、2に答えなさい。

(1)「幸福」とは何であるかについて、資料1、2の両方を活用して、あなたの考えを述べなさい。

(2)医療、福祉、教育、労働、科学技術、財政のいずれかの領域における具体的問題を一つ取り上げ、その問題に対する政策的取組を議論するとき、1の「幸福」についての考えをどのように反映させるか、今後30年間の日本の将来を見据えながら論じなさい。

※資料は省略

【2005年】
<1>現代社会において、科学の研究成果は社会全体やその構成員である市民の運命を左右する形で表れる。例えば、ライフサイエンスの場合、それが医療に応用されると、人の生死にかかわることがあり、また、情報技術の場合、その技術が広く使われることで、セキュリティやプライバシーの点でリスクや安全にかかわってくる。核兵器や環境汚染、遺伝子組換え食品などのように安全や安心にかかわる重大な社会的・政治的問題は、市民一人ひとりにとっての問題である。そのため近年、リスクコミュニケーションが重要視されている。これは化学物質や食品などが人の健康や環境に重大かつ不可逆な影響を及ぼすリスクについて、関係者間で情報や意見を相互に交換することであり、これによって関係者全体でリスク情報が共有される。そして評価すべきリスクやその評価方法について議論するリスク評価を関係者全体で進めることが可能になる。このリスクコミュニケーションにおいて注目を集めてきているのが科学技術リテラシーである。専門家が決定した意思決定を市民は受容しなければならないという考えが中心であった頃、市民が新しい科学技術を受容できないのは、専門知識が欠如しているためであるという主張があった。そのため市民は、科学技術リテラシーを身につけることが必要であり、そうなれば専門家との知識のギャップが少なくなり、市民一人ひとりが正しい判断を下すことができるだろうと考えられていた。しかし、それを否定する調査結果がある。欧州で行われたバイオテクノロジーに関する意識調査によれば、市民がたくさん情報に触れていることと、正確な知識を所有していることとの間に相関がみられなかった。また、正確な知識を所有していることと、バイオテクノロジーに対して肯定的な態度をとることとの間にも相関がなく、さらに肯定的・否定的な態度を決定する要因は科学技術に関する情報量ではなく、別の要因であると説明されている。では、リスクコミュニケーションが活発に行われる将来に向けて市民に求められる科学技術リテラシーとはどういうものであろうか。我々はそれを整理する必要に迫られている。そこで以下の設問に答えなさい。

(1)リスクコミュニケーションを市民と専門家との間で双方向に成立させ、その目的を達成するためには、あらゆる市民に科学技術リテラシーが必要であるか。また、必要ならばそれはどのくらいの水準だろうか。すなわち、上記の調査結果を踏まえると、科学技術リテラシーを持つことで問題は十分に解決できるだろうか。多くの市民の生活にかかわっている具体的な科学技術を例として挙げ、科学技術リテラシーの現状やその在り方を考慮しながら、あなたの考えを分かりやすく説明しなさい。

(2)科学技術リテラシーの必要性について1のあなたの考えに基づいたとき、行政機関はどのような対策を講じるべきか。リスクコミュニケーションで発生しうる問題点を想定し、具体的な対策を挙げ、その対策の目的と効果について述べなさい。

<2>古くから多くの哲学者や思想家が理想的な社会や国家について論じているが、プラトンの「国家」では、理想国家を実現する最小限の変革について次のような記述がある。

「哲学者たちが国々において王となって統治するのでないかぎり」とぼくは言った、「あるいは、現在王と呼ばれ、権力者と呼ばれている人たちが、真実にかつじゅうぶんに哲学するのでないかぎり、すなわち、政治的権力と哲学的精神とが一体化されて、多くの人々の素質が、現在のようにこの二つのどちらかの方向へ別々に進むのを強制的に禁止されるのでないかぎり、親愛なるグラウコンよ、国々にとって不幸のやむときはないし、また人類にとっても同様だとぼくは思う。さらに、われわれが議論のうえで述べてきたような国制のあり方にしても、このことが果されないうちは、可能なかぎり実現されて日の光を見るということは、けっしてないだろう。」(「国家」プラトン著、藤沢令夫訳)

プラトンが国家の在り方を追求した背景には、師であるソクラテスの刑死に強い衝撃を受けたことや利己的な蘭争や無秩序が蔓延し、都市国家の衰退と大堺僣主国家の発生に直面していたという当時のギリシアの情勢などがあった。この著作で論じられている国家の在り方という課題は、後世の思想家に大きな影響を与えただけでなく、現在の私たちにも避けては通れない問題の一つとなっている。例えば欧州連合(EU)は、単一通貨ユーロによる経済統合を進め、共通外交安全保障政策、司法・内務協力などの幅広い協力を加盟国間で目指してきた。人や資本などの移動が域内において自由となることで国家国家の意味や役割が変わってきたことを意識させられる一方、そのような措置によって各加盟国の国家としての存在価値が失われていない事実も国家の在り方を議論するうえで考慮しなければならない。第二次世界大戦の終結から今年で60年目を迎え、従来想定してきた国家の在り方が現在の社会情勢に合わなくなっているという意見もあり、これまで国家の在り方について特に意識してこなかった人々を含めて、我が国の将来像にかかわる重要な議論が活発になってきている。憲法改正にかかわる議論、経済財政諮問会議における日本21世紀ビジョンの検討、医療・年金等の社会保障の議論などがその具体例として挙げられる。また、安全保障理事会の常任理事国入りを目指す活動、自由貿易協定の締結、地球規模の問題への対応など国際社会における振る舞いについてもその在り方が問われているといえる。そこで以下の設問に答えなさい。

(1)戦後の日本の社会を振り返りつつ、我が国の在り方を考えたとき、国家の意味や役割とそれに対する国民の意識についてどのような変化が生じているか。その変化を踏まえながら、我が国がこれから向かうべき方向について、あなたの考えを述べなさい。

(2)(1)の方向を達成するために取り組むべき施策や、改善又は廃止すべき制度は何か。全体を簡潔に言い表す標題を先頭につけ、適切な具体例を加えながら、それについて分かりやすく説明しなさい。

【2004年】
<1>民主主義(democracy)とは、語源が「ギリシア語のdemokratiaで、demos(人民)とkratia(権力)とを結合したもの」であり、その意味は「人民が権力を所有し、権力を自ら行使する立場」というもので、この立場は「人民が主権を持ち、自らの手で、自らのために政治を行う立場」といえる。また、民主的とは「民主主義にかなっているさま」であり、「どんな事でも一人ひとりの意見を平等に尊重しながらみんなで相談して決め、だれでも納得の行くようにする様子」ともいえる。民主主義はすべての人に平等に判断が開かれるべきものであるのだが、ある科学技術に関連した知識が妥当性を持つという判断、すなわち、科学技術に関連した知識の妥当性に保証を与える際、その保証は民主的な意思決定の結果といえるだろうか。科学技術の各分野は科学者が主権を持ち、科学者の手で、(公共のために)知的生産を行う場と考えられるが、この場は科学者集団によって閉じられる傾向にあり、広く市民に開かれているものではない。したがって、その場に属する科学者にとっては意思決定が民主的であったとしても、日常生活を通じて科学技術の影響を受ける市民は無知なる市民(素人)と呼ばれ、その場において主権を持っておらず、市民にとっては民主的とはいえないかもしれない。では、専門家である科学者と専門家でない市民とにこのような差が生じることは当然なのであろうか。科学技術に関連した社会的な問題への対応策を検討する際、これまで少数の専門家と関連する行政機関の部署だけで意思決定が行われる傾向があった。だが、市民が専門家とは違う視点、例えば経験的に得られた知識や影響の受け手としての価値観を提起することで社会における合意形成や意思決定の結果に変化が生じるのではないだろうか。そういう考えに基づいて、市民が参加する形態として様々なものが行政機関で模索されている。そこで以下の設問に答えなさい。

(1)いま、科学技術に関連した社会的な問題に対して行政機関が対応策を検討しようとしている。そこに市民が意思決定に参加する仕組みを取り入れるとしたら、その形態としてどのようなものが考えられるか。考えうる形態を二つ挙げ、それらの長所と短所を分かりやすく説明しなさい。

(2)あなたが将来仕事をしたい分野で発生しうる科学技術に関連した社会的な問題を一つ想定しなさい。その問題に対して、あなたが1で挙げた形態(一つでも可)で対応策の検討にあたったとき、それが十分に機能するためには、どのようなことが市民、専門家、行政機関にそれぞれ求められるか。問題の発生から問題への対処までの一連の過程を想定し、具体例を交えてあなたの考えを述べなさい。

<2>19世紀から20世紀にかけて活躍したドイツの思想家・社会学者マックス=ウェーバーは、著書の中で官僚制について次のように論じている。

的確、迅速、一義性、文書にたいする精通、持続性、慎重、統一性、厳格な服従、摩擦の除去、物的および人的な費用の節約――これらは、厳密に官僚制的な、とくに訓練を受けた個々の官吏による単一支配的な行政においては、あらゆる合議的なまたは名誉職的、兼職的な形態に比べて、最適度にまで高められている。

完全に発達した官僚制は、特有な意味で、「憤激も偏見もなく」(Sineiraacstudio)という原則にもしたがうものである。官僚制が「非人間化」されればされるほど、また、公務の処理にあたって愛憎や、あらゆる純個人的な、一般に計算できない、いっさいの非合理的な感情的要素を排除すること―これは官僚制固有の特性で、官僚制の徳性として称讃されているものであるが―が完全にできればできるほど、それだけ官僚制は資本主義に好都合な特有の性格をいっそう完全に発達させることになる。近代文化は、それが複雑化されまた専門化されればされるほど、それを支える外的機構のために、個人的な同情や好意や恩恵や感謝によって動くかつての旧秩序の首長に代って、いっさいの私情を交えず、したがって厳密に「即物的な」専門家(Fachmann)をますます必要とする。ところで、こうしたいっさいのものをもっとも好ましい組合せで提供するのが官僚制的構造である。

この著書が出版された20世紀初頭、我が国では原内閣や加藤内閣の成立とともに本格的な政党政治が行われるようになり、国外では国際連盟が恒久的な国際的平和機関として発足した。そして第二次世界大戦後の社会経済体制の大きな変容を経て半世紀以上経過し、世界の状況はさらに新しいものになった。とくに近年、我が国をめぐる環境は国内外で大きく変化している。国外では冷戦が終了したものの、各地で頻発する紛争などを背景に我が国の国際貢献の在り方が問われている。そして経済面では世界貿易機関(WTO)の自由化交渉が難航しているものの、特定の国や地域どうしが貿易障壁を撤廃する自由貿易協定を結ぼうとしている。一方、国内における政治状況をみると、衆議院議員選挙に小選挙区比例代表並立制が導入されたことで二大政党制を目指す動きがみられ、昨年の選挙においては、各政党が政権公約(マニフェスト)を掲げて具体的な政策を有権者に伝えるなどの変化が起こった。こうした中、我が国では、行政の果たすべき役割と責任、国家公務員の在り方も時代の要請に応えて大きく変化しようしている。そこで以下の設問に答えなさい。

(1)どのような要因が国家公務員の在り方を変化させてきているか、あるいは今後変化させると考えられるか。最も影響を与えると思われる要因を一つ挙げ、その理由を、今までの国家公務員の在り方と今後の国家公務員の在り方とを対比させながら、分かりやすく説明しなさい。

(2)(1)であなたが述べた今までの在り方から今後の在り方への変化を理想的な形で実現するには、行政組織の内部に加え、内部と外部との関係においても、新たな仕組みや制度などが必要となると思われる。これらについて具体例を交えてあなたの考えを述べなさい。

【2003年】
<1>科学技術と社会との接点では、多くの「公共的」な課題、すなわち科学技術に関連する社会的意思決定をいかに行うかという課題が発生する。このような課題に対して現時点で最良の決定を行うのは当然のことであるが、最良の決定と思われたものが予測できなかった事態を引き起こすことがある。予測できなかった事態に陥る原因の一つは、決定をした際にその根拠となっていた「科学的な証拠」が完全ではなかったことが考えられる。例えば、人体への影響を避けるために排出される煤塵の大きさを何ミクロン以下に規制するかという問題を考える。この問題に対してXミクロン以下の煤塵の摂取群とXミクロンより大きい煤塵の摂取群を用意し、それぞれで疾病が発生した割合を調べることにより、Xミクロンという値で規制することに意味があるかどうかを判断することができるかもしれない。しかし、現実には人間を使った実験はできない。また、早期の対応が求められている場合は長期間にわたる観測が行えない。したがって、対応を決定する際に根拠となる「科学的な証拠」は、人間への影響を動物実験で得られたデータから推定したものであったり、数年のオーダーでの影響を数か月程度の観察によって得られたデーターから推定したものであったりするだろう。そのため、規制の基準を決める「境界引き」の作業には、不確実性を含んだ証拠をもとに議論しなくてはならない。このように「科学的な証拠」というものは、いつでも厳密で確実なものが用意されているわけではなく、不確実性を含んでいる。科学的知見は、時々刻々と作られつつあるものであり、国が対応を決定しなくてはてはならないときには、まだ不完全な情報しか得られない状況もありうるのである。また、経済活動が大規模になり、人や物、情報といったものが世界的に流通する現在、我が国で起こった問題が国外でも発生することがある。逆に国外で起こった問題が我が国でも発生するかもしれない。こうした中では我が国の決定が国外に大きな影響を与えるだろう。そこで、次の二問に答えなさい。

(1)「科学的な証拠」が不確実性を含んでいるため、専門家がすぐに正しい答えを出せないと思われる科学技術に関連する問題を一つ挙げ、あなたがその問題を挙げた理由を述べなさい。

(2)(1)であなたが挙げた問題を想定するとき、このような不確実性を含んだ「科学的な証拠」はどのように取り扱うのが適切か。また、その取扱いが国外へも波及することがありうるが、どのような影響が考えられるだろうか。あなたの考えを述べなさい。

<2>「歴史はいったい何の役に立つのか。」このような疑問に対してE・ハーバート・ノーマンは「歴史の効用と楽しみ」の中で次のように述べている。

たとえしばらく明日のことに心をわずらわすのをやめて、現在にのみ眼を止めてみても、そこにはどんなに聡明な人をも困惑させるに足る問題がある。これらの問題に対して、過去に関する知識を相当に所有していないでは、人はその解決の手がかりを得ることを期待できない。歴史の道は滅多に平坦なことはないし、またおそらく絶対にまっすぐなこともないものである。そしてその発展は突然にも不条理にも現われるものではない。また戦争や革命のような現象は、過去に照らして眺めることなしには、これを説明することはできない。したがって歴史のまことに現実的な価値の一つは、現在に光を投ずるために、過去を考察し、研究することのなかに見出されるべきものである。

ノーマンのいう「困惑させるに足る問題」は現在の我が国では何であろうか。例えば、経済問題が考えられる。平成14年の国内総生産の実質成長率は0.9%程度と見込まれ、また平成14年平均の完全失業率は5.4%と過去最悪となっている。さらに財・サービス価格の動向をみると、物価が継続的に下落する状態であるデフレが続いている。これに対して頭に浮かぶ歴史上の事例は1929年に起こった世界恐慌である。アメリカ合衆国では1932年までに国民総生産が1929年水準の56%に減じ、1,300万人もの失業者を生み出した。また、企業の倒産は続出して銀行の破産は4,500社を超えた。この恐慌に対しフランクリン・ローズヴェルトはニューディール政策を実施した。この政策が恐慌対策として成功したかどうかは評価が分かれるものであるが、社会革命の多くは定着し大きな意義を持っている。一方、我が国では、外国為替相場の安定と輸出の増進を図るために金の輸出解禁を行ったが、世界恐慌にぶつかり、経済は深刻な打撃を受けた。現在と当時とでは置かれている時代状況が異なるが、参考になると考えられる。そこで次の二問に答えなさい。

(1)現在の我が国が抱えている重要な社会的課題を任意に一つ選び、これに対する設問文で挙げた事例以外の歴史上の参考になると思われる事例を一つ選んで、これらの間の類似点、相違点を考慮しながらあなたがこの二つを選んだ理由を述べなさい。

(2)(1)であなたが挙げた課題を解決するためには、どのようなことが重要か。国や行政はその中でどのように関与することが望ましいか。あなたの考えを述べなさい。

【2002年】
科学の研究は、本来、自然現象がなぜ起こるのかに関する説明を求めようとする活動から始まったものであり、人間の暮らしに役立つものを作ることを第一の目的としていたわけではない。しかし、20世紀には、飛躍的に進歩した科学がさまざまな技術を生み出し、人々の生活に画期的な変化をもたらすこととなった。そのため、初めから、ある特定の技術の開発を目的とし、それにかかわる自然現象の解明を行うという研究開発も行われるようになった。このようにして新たに生み出された科学技術は、新しい生活様式や新しい産業を作り出すことにより、国の力の一つの源ともなるため、各国は、経済の発展のために、政策として科学技術を推進してきた。我が国でも、科学技術創造立国を目指して、科学技術基本法が制定され、また、同法に基づいて科学技術基本計画が制定されている。しかし、科学の発展には本質的に予測不可能な部分があり、努力しさえすれば当初めざしていた目標が達成されるという保障が必ずしもあるとは言えないし、反面、目標とは別に、思いもよらなかった分野の研究から新しい可能性が開けることもある。政策として科学技術を推進するに当たっては、このような科学の予測不可能な側面も考慮せねばならないであろう。以上を踏まえて、次の設問に答えよ。

(1)国が経済発展のために、政策として科学技術を推進するに際しては、限られた予算をどのように配分するかという問題がある。この点、一方で、現在重要と考えられている分野に重点的に配分する方法があり、他方で、研究者の自由な発想に基づいた様々な研究に対して、幅広く研究資金を行き渡らせる方法もある。この二つのそれぞれの方法が持つ利点と欠点について論ぜよ。

(2)研究開発の成果の判断は、従来は、専門家どうしによって、想定された目標が達成されたかどうかという点に重点をおいてなされてきた。しかしながら、ある分野に対して巨額の研究費を投入し、重点的に研究開発を行う場合には、仮に巨額の研究費に見合うように研究目標が達せられなかったとしても、研究の成果は目標そのもの以外にも様々な現れ方をするはずである。研究を行ったことの成果は、どのようなところに現れるかを多面的に論ぜよ。また、そのような研究の評価を行うに当たっては、誰が主体となっていかなる基準でどのような仕組みに基づいて行うのがよいか、あなたの考えを述べよ。

【2001年】
<1>日本には博物館法(昭和26年12月1日法律第285号)の対象となるものだけでおよそ1,000の博物館(美術館、動物園、植物園等を含む。以下同じ。)があり、さらに、同法の対象にはならないが博物館と類似の事業を行っているものまで含めると約5,000の博物館があるといわれている。博物館は、一般に公開される公共のための施設であるが、もともとは好事家の個人的な収集から始まり、珍しいもの、貴重なものを集めて展示する場であった。欧米では、伝統的に個人の基金や収集物に基づいて設立されているものが多いが、日本では、教育基本法(昭和22年3月31日法律第25号)第7条(社会教育)において、「国及び地方公共団体は、博物館等の施設の設置その他適当な方法によって教育の目的の実現に努めなければならない」と規定され、また、博物館法において国や地方公共団体による博物館への補助、指導等について規定されるなど、欧米に比べると公的な色彩をより強く帯びてきている。博物館のもっとも大きな役目は、資料を保存して展示することであるとされているが、近年はこうした役割にとどまらず、従来の博物館の枠を超えた活動が期待されている。そこで、博物館はこれまでどのような役割を果たしてきており、これからの社会ではどのような機能を担っていくべきかについて、以下の設問に答えよ。

(1)あなたは子どものころから博物館をどのように利用してきたか、あなたにとって博物館とはどんな場所であったかを振り返り、国民生活一般に博物館がどのような役割を果たしてきたと考えるかを述べなさい。

(2)様々なテクノロジーの発達、人々のライフスタイルの変化、地方分権に伴う特色ある地域づくりの動きなどによって、博物館の有する可能性は増大しているといえる。博物館は、これからの社会でどのような機能を果たす場所となるか、あなた自身の構想を述べなさい。

(3)(2)で述べた構想を実現するために、行政はどのように関与すべきか又は関与すべきでないか、具体的に述べなさい。

<2>近年、日本の教育の在り方をめぐって様々な識論が起こっている。例えば、平成12年度『我が国の文教政策』(教育白書)では、次のような問題意識に立って、教育改革の必要性が指摘されている。我が国の教育は、第二次世界大戦後、生まれや家庭の収入、出身階層などにかかわりなく能力、適性、意欲に応じて平等に教育の機会が保障されるべきという教育の機会均等の実現を基本理念として掲げ、教育を重んじる国民性や世界でも1、2を争う国民の所得水準の向上などともあいまって著しい普及を見、奇跡とも呼ばれるほどの我が国の発展の原動力となってきました。その一方で、少子化や核家族化、都市化の進展とともに、これまで子どもたちに対人関係のルールを教え、自己規律や共同の精神を育み、伝統文化を伝えるといった役割を担ってきた家庭や地域社会の「教育力」が著しく低下し、このことが、いじめや不登校、青少年の非行問題の深刻化などの様々な問題が生じる背景となっています。また、これまでの学校教育はどちらかと言えば、知識を一方的に教え込む教育に陥りがちであり、思考力や豊かな人間性をはぐくむ教育や活動がおろそかになっていました。それに加え、教育における機会の平等性を重視する余り、本来多様な子どもたち一人一人の個性や能力に応じた教育を行うという点に十分に配慮されてこなかったことなど、反省すべき点も少なくありません。また、最近では、小中学校における平成14年度からの新たな学習指導要領の実施に伴う学習内容の大幅な削減に関連し、ゆとり教育と子どもの学力について論議されている。以上の点を参考にしながら、以下の設問に答えよ。

(1)あなたが受けてきた教育を振り返り、あなた自身の体験あるいは周囲で起きた出来事を紹介しながら、日本の教育の問題点について述べなさい。

(2)(1)で指摘した問題点を含め、現在の日本の教育が抱える諸問題の解決のための方策の方向性及び具体的な方法についてあなたの考えを述べなさい。なお、その際予想される反対意見や障害についても言及し、その対応策も併せて述べなさい。

【2000年】
<1>自然科学の作業とは、仮説を基に少しずつ何が正しいかを見いだして検証していくものである。一般社会には、科学は「真実」を提供するものだという考えが広まっているかもしれないが、科学は決してすべてのデータを手にしているわけではない。しかし、すべてを知ることはできなくても、結論を出して先に進んでいる。一方、技術は、それまでの科学の成果を利用して人間の役に立つものを作っている。当然、技術は、科学がその時点までに明らかにしていることの範囲で考えられているのであり、技術にも常に未知の部分が存在する。科学技術が原因の一端となって引き起こされる事故や災禍には、これまで明らかになっている部分において、やるべきことを怠ったために起きるものもあるが、未知の部分に起因するものもある。例えば、ある動物の肉を他の動物に食べさせるとプリオンタンバクを通じて感染が起こること、輸血血液によってエイズウィルスが感染すること、プラスチック製品などから内分泌かく乱物質(環境ホルモン)が出ること、ゴミの焼却によってダイオキシン類が発生することなどは、それまでこのようなことがあることは知られていなかったし、問題が指摘されたときにも、どのような因果関係によって何が起こるのか十分に解明されていなかった。しかし、厳密な科学上の解明を待つのでは遅すぎることがあるため、問題が生じたときには、「不完全情報下」であっても、問題にどう対処するかという意思決定を行う必要が生じる。その際、何に価値を置くかという判断基準の相違により、意思決定の内容は異なってくる。そこで次の二問に答えなさい。

(1)自然科学における「真実」とは何を意味しているのか。その意味について、現在の科学の成果を絶対視している人や科学を忌避している人にもわかるように説明しなさい。

(2)上記のような「不完全情報下」においては、技術の利用をめぐり、技術の生産者(科学者、企業等)と技術の使用者(市民、消費者等)で判断の相違が生じると考えられる。この判断の相違について、あなたが将来就きたい実務の場面に即してその具体例を予測し述べた上で、行政はどのような判断基準に立って対処すべきか論じなさい。

<2>行政改革・規制緩和やNPO法(特定非営利活動促進法)の成立(1998年3月)、情報公開法の成立(1999年5月)といった一連の動きを背景としながら、公と私の新たな線引き、官と民との役割分担、国家と市場との関係の見直しなどについての議論が盛んに行われている。例えば、首相の委嘱による「21世紀日本の構想」懇談会が、2000年1月に出した最終報告書には次のように書かれている。

『20世紀においては国家(中央政府)が大きな力を持ち、民主政治はそこを舞台にして、それを補強する形で営まれてきた。この趨勢は20世紀後半になるとともに変化し、国際情勢の変化や情報技術の発達を背景に、国家と社会の相互作用の観点から、国家の役割の見直しが広範に行われるようになった。国家と市場との関係の見直しはその中で最も有名なものであるが、それのみならず、国家と社会的諸主体との関係も大きく変化しつつある。国家による統治から多様な組織の協力・競争による自治への流れは、世紀の転換において最も重要な変化である。それは個人や組織にとって大きな挑戦を意味する。日本においてこの問題は、「公は官の独占物ではない」といった形で議論されてきた。官僚制の独断的体質への批判の高まりのなかで、行政手続法や情報公開法が制定され、その透明性が大きなテーマになるとともに、規制緩和に代表される権限の縮減や地方分権推進に見られる権限の見直しが話題になった。その意味で明治以来の「官治」体制は昔日の存在感を持たなくなった。

…(中略)…

ところで、「公」とは、公益(publicinterest)や公共性(publicness)であり、その実現装置として設計されている「官」だけでなく、個人や団体といった「民」でもその志と準備と能力があれば担うことができる。しかしこれまで日本では、「官」は権力側、「民」は被権力側で棲み分け、「公」は「官」により独占される傾向が続いてきた。「民」にはお上(かみ)意識や「官」への依存心があり、長らく官尊民卑を受け入れてきた。しかし、いまや「官」と「民」とが協力するとともに、切磋琢磨しながら、「公」を支えていくべき時代となった。』

そこで次の二問に答えなさい。

(1)わが国では「官」に対する「民」の依存心が強いと言われていますが、これを表す具体的事例を挙げると同時に、なぜ、そのような依存心が生じたのかについてあなたの考えを述べなさい。

(2)今後、政府が果たすべき役割について、あなたの考えを述べると同時に、「官」と「民」が協力・切磋琢磨しながら「公」を支えていく具体的仕組みを、あなたが将来就きたい実務の場面に即して構想しなさい。

【1999年】
<1>現代の我々の社会は、非常に多岐にわたる科学技術の成果の上に成り立っており、生活のすみずみにまで科学技術が浸透している。科学の進歩と新しい技術の開発は年々進み、人類全体として科学技術の知識は確実に集積されていく。それとともに自然界の成り立ちに関する新しい理論や視点が提出され、学術用語も増える一方である。科学の分野もこれまでになく細分化され、それぞれの分野の探求が深く進んでいるので、たとえ科学者であっても、自分の専門分野以外の科学技術のすべてに習熟することはとてもできない。ましてや、科学者ではない一般市民が現代科学のすべてに精通することは不可能である。しかしながら、我々の生活の快適さ、安全性・危険性、環境の保全などは、すべてにわたって、これらの科学技術の影響を受けているため、エネルギー問題、資源・ゴミ問題、食品の安全性の問題、医療におけるインフォームド・コンセント、臓器移植、生殖医療など、様々な問題に個人が直面したときには、科学技術についてある程度以上の理解を持たなければ判断ができない。また、専門家に任せておいただけでは、科学技術にかかわる倫理問題も十分に義論されずに終わってしまうかもしれない。さらに、科学技術の研究、開発の大きな資金源は我々の税金である。このような現代社会に住む市民としては、科学や技術に対してどのように対処し、また、学校教育の中で科学がどのように教えられるべきかは、大きな問題である。上記を踏まえて、次の二問に答えなさい。

(1)自分が小・中・高校時代に受けてきた理科教育(科学教育)を振り返り、それが現在の自分にとってどのような意義があるか簡潔に述べよ。また、現代社会において、専門の科学者ではない良識ある市民を養成するという観点から、学校教育で科学を教えることの目的と意義は何かについて論ぜよ。

(2)上記のように現代の科学技術が社会や各人の生活などに与える問題や影響に対し、今日の日本では、それらの問題などを判断するための十分なすべが国民に与えられているか、また、科学技術の倫理的側面について十分な議論がなされているか、について述べよ。さらに、これらの点が十分でないとしたら、これを改善していくためには公務の場でどのような施策をとれると思うか、論ぜよ。

<2>昨年12月に採択50年を迎えた「世界人権宣言」の前文は、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。」と結ばれている。そして、一昨年7月に政府が発表した「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画は、人権教育の推進に当たって、「女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人などの人権保障が重要課題だとしている。また、日本国憲法第97条は、基本的人権の本質について「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と明記している。そこで、「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」(日本国憲法第99条)公務員を志望する立場から、人権の意義に関する、次の二問に答えなさい。

(1)人権をめぐる各種の問題を素材として、人権とは何か、人権はなぜ大切かをできるだけ分かりやすい言葉を用いて説明しなさい。

(2)自分が公務についたときに直面するであろう具体的な人権問題(上記の「国内行動計画」が列挙した「女性」以下の人々の人権保障。より具体的には、例えば「セクシュアルハラスメント」の訴え、「学級内のいじめ」の訴えなど。)を一つ予想し、それに関し何がどう問題であり、どのような対応策があるかについて啓蒙のための広報誌等に掲載する文書を書きなさい。

【1998年】
<1>20世紀は科学技術の進展によって人類の生活の質が劇的に向上したことから、しばしば「イノベーション(技術革新)の世紀」ともよばれる。しかし、大量生産と大量消費の繁栄の陰で、科学技術の進歩は今世紀初頭の人々が想像もしなかったような新しいタイプの社会問題を引き起こすようになった。今日、環境や資源の保護が叫ばれる背景には、進歩主義に対する強い反省があることはいうまでもない。例えば、昨年の京都会議で広く議論された地球温暖化について考えてみよう。工業化社会の副産物である各種の温室効果ガスによって引き起こされる温暖化は、長期的な視野に立つと、人々の生活基盤にさまざまな悪影響を及ぼすだろうと予測されている。このような不利益を直接被るのは、私たちの世代ではなく、主に次世代以降の人々である。私たちが現在の利便性を追求してエネルギーを消費すればするほど、未来世代の利益を奪うことにつながるのである。世紀の節目を迎えるにあたって、私たちの子孫に大きなつけを残すことなく、新しい科学技術をどのように開発していくべきか、という問題が強く問われている。そこで、次の二問に答えなさい。

(1)科学技術の発達がもたらす未来世代への悪影響について、地球温暖化を含む具体的な事例を挙げて説明しなさい。

(2)新しい科学技術が未来世代の人々の生活に予測不能な悪影響を及ぼしかねないことから、科学技術開発の自由を制限し、科学技術の発達に限界を定めるべきだとする意見がある。このような科学技術批判の論拠を列挙した上で、それに対するあなた自身の考えを述べなさい。

<2>平成9年7月に行われたNHKの世論調査で「政治について不満に思っていること」を聞いたところ、第一位に「税」(65%)が挙がった。同じ調査で「政治に何を期待するか」をたずねたところ「福祉の充実」(58%)に次ぐ第二位に「不公平税制の改善」(51%)が挙がった。この数字からも明らかなように、現在多くの国民が「税」のあり方に関して強い関心を抱いている。ところが「税とは何か」、「なぜ税金が必要とされるのか」という基本的な問いに対しては、いわゆる模範解答が確立されているわけではなく、さまざまな理論的探究が続けられているのが現状だといえよう。ちなみに従来提出されてきた租税の「根拠」についての代表的な学説は次の三つである。

1 利益説(国民は、国又は地方公共団体の活動から利益を受けており、その代償として支払うのが税金である。)
2 保険説(国又は地方公共団体は、国民の生命や財産を保護する保険者であり、そのための保険料として税金を納める。)
3 義務説(国又は地方公共団体は共同生活に必要な機関であり、その運営経費を国民が自己の負担において支払うのが税金である。)

そこで、国民から税金を預かりそれを有効に運用する国家公務員を志望する立場から、「税」の意義を考察するために、次の二問に答えなさい。

(1)上記1から3を参考にして、税の必要性をわかりやすく説明しなさい。なお、その際、税にかかわる具体的な事例(税を納めた体験、税によって恩恵を受けた経験等)も必ず織り込みなさい。

(2)全国の税務署では、「この社会、あなたの税が生きている」という標語を掲げて徴税活動を行なっている。この標語に見られるように、税の意義について国民一人一人が実感をもって受け入れることができるようにするためには、どうすればよいと考えるか。その具体策を挙げなさい。

【1997年】
<1>現代の社会は、合理的な考え方を基礎とし、科学技術の成果を土台として築き上げられている。私たちの身の回りに存在する生活上の道具から、大規模な科学研究、技術開発にいたるまで、現代の社会に暮らす私たちは、科学的な考え方や技術の影響から離れて暮らすことはできない。科学者でない人びとにとっても、科学に関する基礎的な知識や科学的な思考は、日常生活に必須のはずである。しかし、そもそも科学的な思考法とはどのようなものかについて、一般的にはそれほど理解が行き届いているだろうか。科学的な根拠のない主張をあたかも科学的であるかのような装いで断定的に論じるもの、存在が確認できない超常現象が実際に存在すると主張し、明確な根拠なく現代の科学が誤っているかのように論じるものなど、えせ(似非)科学的、非科学的書物や話題がときに流行することがある。このような現象は、科学というものがどのように一般に伝えられ、受け取られているか、科学教育はどのようにあるべきか、科学と市民生活をつなぐメディアとしての科学ジャーナリズムの役割は何か、といった問題を考えさせるものである。

そこで、

(1)科学的な根拠がないのに科学的であるかのように論じる「えせ科学」的な主張と、真に科学的な主張との違いは何か。「えせ科学」的なものがもてはやされたり、流行する理由に触れつつ論じなさい。

(2)えせ科学的なものや非科学的なものを放置しておくとどのような弊害が起きるか、また、それらを是正、防止するためにはどのような方策が必要であるかについて論じなさい。

<2>わが国の高齢化は世界でも例を見ないスピードで進んでいる。65歳以上の高齢者の国民全体に占める割合は1995年には14.5%であったが、2020年頃にはその割合は25%を超えると予想されており、このような急速な高齢化の進展に伴い、医療・年金などの社会保障給付費の負担も飛躍的に増大せざるをえない状況となっている。ところで、今日においては、たとえば、公共施設等の設計・運用における「バリアフリー」などに見られるように、障害者や高齢者であっても、障害や介護の必要性などのあるなしにかかわらず、普通の生活をしていける社会づくり、いわゆるノーマライゼーションが求められている。ノーマライゼーションは、障害者や高齢者などとその他の人びとがともによりよく暮らしていける社会をめざすものであるが、前述のように、近い将来、高齢者の割合が増加し、多数かつ多様な高齢者を抱えるようになっていくわが国においては、社会のさまざまな分野においてノーマライゼーションの実現が必ずしも十分とはいえない状況にある。

そこで、

(1)現在、わが国においてノーマライゼーションの実現が十分でない理由について、あなたの直接・間接の体験を基に述べなさい。

(2)急速な高齢化が進展する中で、現在の社会の仕組み、制度をどのように変革する必要があるか具体的に論じなさい。

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