今回は公務員試験の中でも、主に市役所で実施されることの多い作文対策について詳しく解説していきます。
多くの自治体や組織では、作文が実施される区分は高卒程度となっています。
そこでこちらの記事では、主に高卒程度を念頭に置いた作文作成におけるポイントについて解説します。
まず、作文を作成する際のポイントとして、以下の4つが挙げられます。
②正しく課題を読み取る
③オリジナリティを出す
④公務員の仕事への理解度を高める
これらについて、添削における具体的なOK例とNG例を出しながら説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
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作文のルールを守る
指定文字数・制限時間・丁寧な字
作文の添削をしていると、指定のルールが守られていないものや、殴り書きのようなものを目にすることが多々あります。
しかし、添削をする際に最初に見られるのは内容ではなく、ルールや見やすさなどの見た目上のものです。
②制限時間内に最後まで書き終えているか
③丁寧な文字で書かれているか
この3点は、まずはじめに見られる点です。
特に「指定文字数」と「制限時間」のルール内で書かれているかどうかは、重要なポイントとなります。
なぜなら、”決められた時間内に決められた仕事量をこなす”というのは社会人として当たり前に求められる部分だからです。
提示した条件を満たせない人に関しては、仕事ができない人と判断されてしまうのです。
そのため、この「指定字数」と「制限時間」のルールは必ず守れるように、しっかりと演習を重ねて対策しておきましょう。
制限時間のギリギリに書き終えることを目標としていると、見直しの時間がなくなってしまいます。
5~10分程度の見直しの時間が取れるように、普段から書くスピードを心がけていきましょう。
また、指定文字数は9割以上埋めるようにしましょう。
なるべく、最後に1~2行余るくらいのイメージで書き進めることをおすすめします。
そして、「丁寧な字」に関しては、全体を通して丁寧な読みやすい字で書くことを意識してください。
字を雑に書いている人は、その時点でマイナスの印象を与えてしまいます。
内容はとても良いのに、読みにくいが故に不合格となるケースもゼロではありませんので、日頃から丁寧に書くことを意識していきましょう。
この部分は自分で判別するのが難しいので、第三者に見てもらうのが一番です。
家族や友人など、自分ではない誰かに読んでもらい、読みにくくないかヒアリングしてください。
作文添削者は、当然、何人もの受験生の作文を読んでいます。
試験官も人間ですので、当然、読みやすい作文には高評価を付けたくなるものです。
字を書くのは苦手だという人でも、「丁寧に」という部分を意識すれば、随分読みやすい字になります。
例えば、以下のような字はNGとなります。
・字が小さい
・崩し字
・筆圧が弱すぎる
・マス目からズレている
つまり、作文のマス目に対してちょうど良いサイズで、濃い字で、ハッキリと丁寧に書けば、必然とストレスの少ない作文が完成します。
作文の内容以前に重要な部分ですので、上記の①~③は、日頃から強く意識して作文を書くようにしてください。
なお、公務員試験での論文や作文の書き方(ルール)については下記の記事でも解説しています。
誰が読んでも読みやすい文章を心がける
上記の3点を踏まえた作文でも、やはり内容の点で読みにくいものと読みやすいものがあります。
例えば、読みにくい文章やNGな表現方法として、以下のものが挙げられます。
・1文が長い
・本題に入るまでの前置きが長い
・体言止めや倒置法を使用する
・同じ言葉を多用する
・形容詞終止形にですます調を使用する
このような文章や表現は、パッと読んだときに違和感を持たれることが多いため、目で追ったときに流れるように読めるものを目標として書くことが大切です。
これらのNGポイントについて、具体的な回答例を見ていきましょう。
NG回答例
1文が長い
このように短めに文章を区切ることで、格段に読みやすくなります。
1文が長くなると、主語と述語が不明瞭になりやすく、読みにくくなる可能性が高まってしまいます。
1文の文字数については、一般的に60字程度が推奨されています。
このように文章を2~3文に分けることによって、自分の主張したいことと現状を上手く切り離して文章化することができます。
本題に入るまでの前置きが長い
このような課題文の場合「あなたの考えを述べなさい。」とあるので、前置きについては不要です。
作文の字数は600~800字程度とされていることが多いため、限られた字数の中で自分の考え以外の文章を含めてしまうのはもったいなくもあります。
なるべく多く自分の考えを作文の中で書けるように、必要のない前置きは書かないようにしましょう。
体言止めや倒置法を使用する
こうした表現は、読み手を引き込ませる一つのテクニックともいえますが、公務員試験の作文においては不向きです。
自分の考えを淡々と述べるようにしましょう。
同じ言葉を多用する
このケースの場合、NG例では「~思う。」を多用しています。
「思う」自体は使ってはいけない表現ではありませんが、同じような文末が繰り返されると、単調な印象を与えてしまいます。
そもそも作文は自分の意見を述べる場なので、「~思う。」などの表現よりも、言い切るような言い方の方が望ましいといえるでしょう。
文末の表現に気を付け、文章にメリハリを出すように意識しましょう。
形容詞終止形にですます調を使用する
形容詞終止形に「です」をつけると、一気に子どもっぽい印象になってしまいます。
大袈裟にいうと、サザエさんに出てくる「タラちゃん」のような感じです。
会話文としては特に気にならないものですが、文章にすると子どもっぽく、違和感があります。
自分の意見やそう思う理由を文章に入れることで、形容詞終止形に「ですます」をつけることなく、伝えることができます。
特に公務員試験の作文では、子どもっぽい表現をなるべく避けるように文章を書いていきましょう。
段落の構成を考える
作文の対策本などを見ていると、以下のような3段落構成をおすすめしていることが多いです。
・第1段落:序論(問題提起)
・第2段落:本論(具体例や解決策)
・第3段落:結論(まとめ)
しかし、この3段落だと、本論をどのように書いていいのか分からないと悩む受験生も少なくありません。
ただ、段落を全く意識しなくていいのかと言われると、ある程度の構成は練っておく必要があります。
そこでおすすめなのが、以下のような4段落構成です。
・第2段落:経験談や事実を述べる
・第3段落:第2段落の内容に対する自分の意見や得たことを述べる
・第4段落:第2~3段落のまとめを述べる、志望する職種に関連付けた内容を入れる
ある程度自分で構成をつくれる人は良いですが、作文を苦手とする方は、上記のように4つの段落に分けて一つひとつ書いていく練習をすると良いでしょう。
「自分の型」として書き方や構成が身体に馴染んでくれば、課題を見た段階でどのように書けば良いのかが分かるようになります。
また、このような型を用いることで、指定文字数の9割以上を目指すことや、余裕を持って書き切ることが容易になります。
ここで、段落構成ができていない回答例を見てみましょう。
NG例で気になるのは、各段落における文章量に差があることです。
特に、4段落目は自分の意見を書く場となりますが、書きやすいが故に文章量が多くなりがちで、作文全体としてはアンバランスに感じてしまいます。
「話が変わる部分で段落を分ける」という基本を押さえることによって、バランスの良い文章を書くことができます。
また、今回はあくまでも例文になりますが、上記の書き方だと指定文字数を大幅に割ってしまう可能性が高いです。
800字の指定があるときは、少なくとも700字は欲しいところですので、どの部分にどのくらいの文章を書くかというバランス感覚も大切になってきます。
次に、段落ごとにポイントを見ていきましょう。
今回の例文だと、1~2段落は1つの段落に収めてしまっても問題ないと思います。
文章量としては、だいたい100字くらいが理想です。
4段落にある自分の経験談(失敗談)をさらに具体化して、何が良くなったのか、どうすれば良いのかを記述しましょう。
文章量としては、だいたい300字くらいが理想です。
「このような問題を減らすには」の部分から段落を分けて、自分の体験やニュースを踏まえた自分の意見を300字ほどで記述しましょう。
最後の段落は、志望職種への意欲や目標を示しましょう。
「課題」について書くことはとても大切ですが、公務員になりたいという熱意の伝わる文章を書くことも重要です。
今回の課題は、SNSの使い方の問題ですので、SNSに絡めた内容が望ましいでしょう。
上記のように、100字、300字、300字、100字と書いていくと、ちょうど800字となります。
日頃から段落を4つに分けて、上手く文章量のバランスをとることを意識していくと、本番でも時間内に書き切ることができます。
正しく課題を読み取る
作文の課題は、論文試験と同じで、正しく読み取り、正しく回答することが求められます。
まずは、課題に沿った文章を書くコツを2つ紹介します。
求められていることを要チェック
上記の課題の場合、以下の4つに回答しなくてはならないことがお分かりでしょうか。
②その中から特に良いと思うものを1つ選ぶ
③それを選んだ理由を述べる
④その魅力を活かして市を発展させるために必要なことを述べる
よくあるのが、“課題の一部に回答していない”というものです。
例えば、この例題であれば、③への回答が抜けてしまうなどがそれにあたります。
課題に答えていないというのは確実に減点対象となるので、問題文に線を引くなどして絶対に漏れのないようにしましょう。
公務員試験に相応しい回答をする
次に、実際の過去問を例に見ていきます。
2021年
物事を継続するために必要だと感じたことについて、具体的に述べなさい。
<国家一般職>論文過去問を参照
このような漠然とした問題文の場合、回答の方向性が幅広いため、どのような回答をして良いものか悩んでしまう方も多いと思います。
ここで重要なのは、公務員試験であることをきちんと考慮して回答を考えることです。
確かに睡眠は大切ですが、それが公務員の仕事に直接関係があるかと言われればそんなことはないでしょう。
漠然とした課題でも、しっかりと公務員に関連する事柄で回答しなければなりません。
上記のような課題であれば、以下の3つのポイントを押えましょう。
これまでの学業、部活動、ボランティア活動、趣味などの経験から、物事を継続した経験を述べましょう。
継続するために実際に自分が取り組んだことを具体的に述べましょう。
継続がうまくいかなかった経験しかない場合は、その失敗を糧にして「どうしたら継続できたのか・何が必要だったのか」を回答しても良いです。
最後に、その経験から自分が感じたことや学んだことを述べましょう。
志望職種への意欲や目標を示しても良いです。
問題点を正しく解釈する
「高齢者の医療負担を一律3割にする」というのは少々尖った意見であり、極端な印象を持たれてしまいます。
個人的な考えを聞かれているわけではないため、行政の目線で問題視されていることを述べるようにしましょう。
根拠となるデータなどがあれば、それを示すのも良いでしょう。
オリジナリティを出す
自分の経験談を入れる
作文試験においては、どの受験生も似たような意見が多いため、自分の実体験や意見を入れることで、オリジナリティを出すことが大切です。
ただし、あまりに偏った意見は採用担当者に不安を与えてしまうことにつながるため、個性の出しすぎには注意しましょう。
次のような文章になっていないか、日頃から注意しておくと良いでしょう。
・自己中心的な意見になっていないか
・批判的な文章になっていないか
・偏った意見や思考になっていないか
・消極的な意見ばかりになっていないか
これらの注意点について、いくつかのNG例を紹介していきます。
NG回答例
自己中心的な文章になっている
NG例のように罰を与えるような書き方は、これから公務員の一員として働くにあたって相応しい表現ではなく、自己中心的な印象を与えてしまいます。
また、具体的にどのようなことをしたのかを説明することで、より説得力のある文章にすることができます。
特に作文を苦手とする受験生は、自分の言葉選びが作文試験として適切なのかを第三者に判断してもらうようにしましょう。
批判的な文章になっている
まず、よくある課題の例として「感じていることを述べなさい。」というものがありますが、これは感想を述べるのではなく、問題に対しての対策を述べなさいという意味です。
自分の個人的な願望ではなく、「国民が」「市民が」というように上手く主語を書き換えて、問題に対する対応策に変化させましょう。
また、当然ですが、政治や宗教といったものは作文の題材に相応しくありませんし、「腹立たしい」などの文言は使わない方が良いでしょう。
不満を述べて終わるのではなく、意見を述べる必要があることを忘れてはなりません。
消極的な文章になっている
このような課題では、華々しい経験について問うているわけではありません。
これまでの職務経歴の中での経験や、学生時代であれば、ゼミやサークル、アルバイト、ボランティア活動など、何かしら語れる経験を整理しておきましょう。
また、「何も頑張らなかった」という”無”のことではなく、何かをして後悔したという文章にすることがポイントです。
そして、教訓については「どうしたい」ではなく、何に活かしたのかを書くようにしましょう。
公務員の仕事への理解度を高める
関心分野や志望職種の研究をする
公務員の仕事は非常に多岐にわたるため、志望する市役所の業務内容にしても、全てを理解するのは難しいと思います。
しかし、最低限自分の関心のある分野や志望する課の業務内容については研究を深め、作文に落とし込めるようにしておく必要はあるでしょう。
例えば、以下のような作文は、公務員としての素質が不足しているように感じてしまいます。
・電車が少ない→バスの本数を増やす
・安心・安全に暮らしたい→パトロールをする
・キレイな街並みを実現したい→ボランティアを募ってゴミ拾いをする
また、以下のような内容もNGですので、注意しましょう。
<NG例>
・公務員目線ではない
・政策に対する理解が不十分
・一般論で終わっているもの(例:「市民の要望に耳を傾けます」など)
・莫大な予算を必要とする現実的ではないもの
NG回答例
公務員目線ではない
少子高齢化問題については、市町村というよりは国の問題として認識されている点を考慮しましょう。
そのため、「高齢者をよく見かける」などの規模の小さな視点を入れるよりも、長年のデータをもとに少子高齢化が進んでいることを指摘するのが無難です。
また、市の人口減少や少子化対策などを把握して、どのような点が不足しているのかを考えていくと良いでしょう。
そして、イベント開催やボランティア活動などで他県からの人口流入は考えにくいため、もう少し幅広い視点で考えていく必要があります。
政策に対する理解が不十分
このような社会保障制度を課題にする場合には、しっかりとした下調べやデータが必要になります。
そのため、思い込みや個人的な意見ばかりにならないように注意する必要があります。
生活保護を受けている人の理由は様々で、やむを得ずに受給している人も少なくありません。
確かにニュースでは不正受給などが取り上げられることもありますが、正しく生活保護費を使って生活している人も多くいます。
無駄遣いを避けて欲しいという思いは分かりますが、あくまでも個人的な願望に過ぎないため、受給者側の視点にも寄り添った文章となるように注意しましょう。
例えば、自立を促すことの難しさや、日本の生活保護受給率が低いことなどに視点を変えて書いてみるのも良いでしょう。
国や自治体が取り組んでいることを調べながら、自分が公務員となったときにできることを考えて書くようにしましょう。
おわりに
今回は、公務員試験における作文作成におけるポイントについて解説しました。
例文を確認したことで、どのような文章が良くて、どのような文章だと良くないのかがイメージしやすくなったのではないかと思います。
公務員試験の作文については、苦手意識を持っている方も多いと思いますが、しっかりと対策すれば合格することができます。
「作文」と「論文」と「感想文」は違います。
「あなたが感じていること」というのは個人の感想ではなく、どのような問題があり、どのような解決策があるかということなので、その意味をしっかり理解した上で書き進めてみてください。