<公務員試験>社会人採用での職務経験論文の書き方を具体例で解説!

公務員に転職してステップアップをしたいと考える社会人のみなさん、試験対策は進んでいますか?
忙しく働きながらの試験勉強はできるだけ効率的に行いたいものです。

特に社会人採用での論文試験は合否を決める上で大きな配点を占めることが多く、教養養試験と比べると負担が大きく対策が大変だと感じている人が多いと思います。

そんな社会人のみなさんに向けて、今回は職務経験論文の書き方について詳しく解説します。

本記事で分かることは次の通りです。

・職務経験論文で問われること
・「職務経験をどう活かせるか?」への対策方法
・職務経験論文で押さえるべき5つのポイント
・社会人用の模範答案集

職務経験論文で問われること

まずは職務経験論文でどのようなことが問われているのか、2つのポイントから見ていきます。
実際の社会人採用枠での過去問をいくつか確認してみましょう。

特別区(2025年)

住民サービスの向上について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分における立場で論じてください。

参照:<特別区>論文過去問

千葉市(2024年)

これまでの職務経験の中で、最も責任が重かった業務を挙げ、その業務をどのように遂行したか具体的に説明しなさい。また、その経験から得たことを千葉市職員としてどのように活かせるか、述べなさい。

参照:<千葉市役所>論文過去問

福岡県(2024年)

(1)あなたのこれまでの民間企業等における職務経験を述べなさい。

(2)その中で、「最近あなたが意欲的に取り組んだこと」と「その時期」を挙げ、その取組において、「苦心した点や創意工夫した点」、「得られた成果とあなたが果たした役割」、「身に付けた能力や強み」などについて、具体的に述べなさい。

(3)(1)、(2)を踏まえて、あなたの職務経験、能力などを、県行政のどの分野で、どのように活かしていきたいか、県の施策を例に挙げて具体的に述べなさい。

参照:<福岡県庁>論文過去問

こうして見てみると、共通項が見えてきました。

①職務経験の整理・分析
②職務経験を活かした貢献

職務経験論文では主にこの2点について述べることが求められており、一般的な行政課題式論文と比較すると自己PRの要素が強いことが分かります。

これら2つのポイントについて、さらに詳しく見ていきます。

①職務経験の整理・分析

社会人のあなたは、これまで様々な職務経験を積んできたことでしょう。
まずはこれまでを振り返って、職務で経験したことや成し遂げたこと、学んだことなどを思いつくままに書き出してみてください。

ただし、そのすべてをそのまま羅列しても論文には使えないため、職務経験論文に書く経験は「何を求められているか」をよく考えた上で厳選する必要があります。

そして、公務員あるいは自治体というものが社会人に求めているのは言うまでもなく即戦力としての貢献なので、「私は即戦力として活躍できます!」と主張できるような経験を一つずつ棚卸しします。

例えば、簡単な電話対応や事務作業などは即戦力としてのアピールには繋がりにくいため、様々ある職務経験の中でも達成感の強いものから順に整理していきましょう。

②職務経験を活かした貢献

「①」よりも大切なのがこの「②職務経験を活かした貢献」です。

先ほど挙げた過去問でも、

「千葉市職員としてどのように活かせるか、述べなさい。」
「あなたの職務経験、能力などを、県行政のどの分野で、どのように活かしていきたいか、県の施策を例に挙げて具体的に述べなさい。」

とありましたね。

自治体側が抱えている課題の解決等について、豊富な知識や経験を持ち、職員のリーダーとして働ける人材が求められているのが社会人採用です。

ですから、自分の職務経験を分析する際には「その自治体が何についての即戦力を求めているか」を知り、それに沿って整理していくことが必須です。
これができていると、その自治体の職員になって貢献したいという意欲の表れとしても評価されます。

とはいえ、

・経験をどう活かせるかが分からない…
・その自治体が求めていることなんて分からない…

という人も多いと思いますので、この対策方法についても解説します。

「職務経験をどう活かせるか?」への対策方法

training

「職務経験をどう活かせるか?」を論述するにあたっては、志望先の下調べが欠かせません。
その調査方法として、次の2つを紹介したいと思います。

①志望先の現状や動向を把握する

まずは、志望先の現状や動向を把握することです。

各自治体では、総合計画や基本構想、アンケート調査など様々な計画書や統計資料を公表しています。
これらに目を通し、「どんな課題を抱えているか」「これからどんな事業を行おうとしているか」などを確認してみてください。

これが把握できているとより具体性の高い論文が書けますし、後の面接試験にも役に立つという利点もあります。

自治体の課題等が見えてきたら、その課題解決に向けて自分がどのように貢献できそうか、どう活かせそうかを考えていきましょう。

②選考区分の職務内容を把握する

次に、志望先の職務内容を確認します。

例えば、特別区経験者採用の一般事務では主な職務内容として、

企画調整業務、システム関連業務、広報広聴関連業務、産業振興関連業務、教育関連業務、福祉関連業務、公会計事務等

と示しています。

これらの業務の中で、自分の職務経験を活かせそうな分野について検討していきます。
例えば接客業の経験があれば、福祉関連業務で直接住民とやり取りをするときに活かせる部分があるかもしれません。

このように、公務員とは別の業界であってもいくらでも繋ぎ合わせることはできるので、志望先の職務内容と自身の職務経験をリンクさせてみてください。

職務経験論文で押さえるべきポイント

point

それではここからは、職務経験論文を書く上で重要なポイントを紹介します。

①実際に書く練習を徹底する

志望自治体について調べ、自分のアピールポイントを洗い出したら、そこからは実際に書いて練習するフェーズに入ります。

まずは過去問にあたり、本番通りに時間を計って書いていきましょう。
傾向の似た近隣自治体の過去問を使ってみるのも良いでしょう。

注意したいのが、職務経験論文は経験ベースの論述のため「そこまで書く練習をしなくても、自分のことだから書けるだろう」と考えてしまう人が少なくないことです。

しかし、時間内に論理的な文章を書くというのは簡単ではないため、通常(行政課題式)の論文対策と同じように書く練習が必要です。

「職務経験論文は簡単」と高をくくらず、数十テーマの過去問についてよどみなく書けるようにしておきましょう。

なお、職務経験論文を書く上では、通常の論文と同じように基本的なルールを満たさなくてはいけません。
詳しい論文の書き方や文章のルールについては下記の記事で分かりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてください。

②問われていることからズレない

問題にあたるときは、問題文をよく読んで「何を問われているのか」をはっきり押さえてから書きはじめましょう。

例えば、下記の問題文について考えてみます。

特別区(2023年)

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた職場での取組について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分※における立場として論じてください。

※採用区分とは、1級職は係員の業務を行う職、2級職(主任)は係長職への昇任を前提とした係長職を補佐する職、3級職(係長級)は係長、担当係長、主査又はこれに相当する職とする

参照:<特別区>論文過去問

この問題文を読むと、回答にあたってのポイントは以下の3点であることが分かります。

①テーマは「ワーク・ライフ・バランスの実現」である
②テーマについて、まず「自分の職務経験」を述べる
③経験を踏まえて「採用区分における立場」から述べる

「そんなことは見れば分かるし当たり前だ!」と思われるかもしれませんが、書くことに夢中になってしまうと、意外と「抜け」や「ズレ」が生じやすくなるものです。

上記の例で言えば、しっかり読まないと「ワーク・ライフ・バランスの実現」というテーマが飛んでしまって、ワーク・ライフ・バランスとは関係ない業務の経験や意気込みなどを書いてしまうことになりがちです。

また「採用区分における立場として」とあるのに、主任の立場で書くべきところを係員的な立場の経験に終始してしまうということもあり得ます。

過去問でも、もちろん本番でも、問題にあたるときには問われていることに線を引くなどして、意識しながら読んでいきましょう。

③リーダーとしての経験・資質をアピールする

職務経験論文では、経験者ならではのリーダー性をぜひアピールしたいものです。
特に、採用区分が「主任」や「係長級」であればなおさらです。

これまでの職務経験の中で、あなたがリーダーとして業務にあたった経験を整理しておきましょう。

一例としては次のようなものがあります。

・業務管理
・シフト管理
・部下の指導
・他部署との連携
・顧客折衝

管理職の経験がなくても、大きなプロジェクトでなくても構いません。
自分が責任者となって他のメンバーとともに業務を果たした経験があれば材料としては十分です。

謙遜は日本人の美徳と言われますが、ここでは謙遜は不要です。
「こんな経験じゃ大したことない…」と卑下することなく、自分の経験を客観的に分析して堂々とアピールすることが大切です。

そして分析する際は、以下の4点を押さえましょう。

①どんなポジションで(ポジション名、チームの規模など)
②どんな業務を(会社にどう貢献するものか、どんな問題点のあるものかなど)
③どんな風に進めて(行った工夫、問題解決方法など)
④どんな成果を得たか(具体的な成果、成果を表す数字、第三者からの評価など)

これをつないで文章化すると、以下のように職務経験をアピールすることができます。

私は〇〇〇業務の責任者として、〇〇〇を推進した経験があります。
この業務は会社の〇〇〇のためには喫緊の課題でしたが、〇〇〇の影響で推進が滞った状態でした。(①②)
そこで、〇〇〇や〇〇〇を改善し、新たな試みとして〇〇〇を導入するなど、現状の打破に努めました。
当初はチーム内でも意見が分かれるなど難航しましたが、〇〇〇を意識して取り組むことで次第に成果が表れ(③)、1年後には〇〇〇という結果を出すことができました。(④)

書いてみると分かりますが、「こんな小さな仕事…」と思っていても、きちんとした文章に書いてみると立派なアピール文になるものです。
まずは諦めずに、文章にしてみることを意識してください。

その際、困った経験や失敗したことに触れても構いませんが、そこから学んで成長したことに結びつけることを忘れないようにしましょう。

④面接対策にもなると心得る

職務経験論文の対策を進める際には、以下のものもまとめておくことをおすすめします。

・志望理由
・最も力を入れて取り組んだ仕事
・最も大きな仕事上の失敗とそこからの学び
・自分の長所と短所

なぜこれらについてまとめておくべきなのかと言えば、これらが職務経験論文に活かせる場合が多くあり、後々面接対策としても非常に役立つことになるからです。

少しずつで構いませんので、志望先の職務内容や求められている人物像などとリンクさせながらまとめておきましょう。

⑤第三者のアドバイスを受ける

せっかく練習で書いた論文も、書きっぱなしでは不十分です。
信頼できる第三者に読んでもらい、アドバイスを受けることで初めて意味のある練習となります。

まわりに適当な人がいない場合は、予備校のオンライン講座などもありますので、利用してみてもよいかもしれません。

アドバイスをもらったらそれに沿ってもう一度書き直し、修正を重ねていきましょう。

【社会人専用】模範答案集の入手方法

最後に、職務経験論文の模範解答について紹介します。

実は、論文道場は公務員試験の論文対策を専門としたサイトではあるものの、提供している模範解答(模範答案)集は主に大卒向けとなっており、社会人専用の模範解答集はご用意がありません。

また、大手予備校などの社会人向けの教材は大卒向けのものを流用していることが多く、なかなかおすすめできる教材がないために掲載をしていませんでした。

そこで論文道場で改めて社会人向けの教材を市場調査したところ、こちらの教材が使えるのではないかと思いましたのでみなさんに共有します↓↓↓

こちらは社会人採用を専門に取り扱っている「社会人採用(民間経験者採用)専門予備校Gravity」さんの教材で、社会人受験生には有名な予備校です。

様々な社会人向け教材の中でも、Gravityさんが提供している模範答案集が群を抜いている印象を受けたので、おすすめさせていただきました。

職務経験論文だけではなく行政課題式論文も入っているので、網羅的な模範解答を探している方にもおすすめです。

まとめ

今回は、社会人採用(経験者採用)試験の論文対策の方法について解説しました。

「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」と言います。論文対策も同じです。
まずは志望自治体の現状と課題を知ること、そしてそこで役立てられる自分の経験を分析・整理することが、合格への近道です。

そのためにはある程度の時間が必要ですので、受験を決めたらすぐにでも対策を始めましょう。

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