公務員試験では、多くの場合「論文試験」が行われます。
ひたすら暗記すればある程度得点できる教養試験と違って、論文試験は対策が難しいと感じている受験生も多いことでしょう。
公務員試験の論文試験では、頻出テーマがいくつかあるので、それについてしっかり対策をしておくと非常に書きやすくなります。
今回は、公務員試験の論文頻出テーマのひとつ「地方創生」を取り上げて解説します。
しっかりチェックして、ライバルに差をつけましょう!
ちなみに、下記の「<公務員試験の論文>頻出テーマまとめ」記事をまだ読んでいない人はそちらも併せて読んでみてください。
地方創生の失敗の歴史を把握する
「地方創生」とは、少子高齢化の進行に対応して人口減少に歯止めをかけるとともに、首都圏への人口の一局集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保していくことを目指すものです。
「地域振興」や「地域おこし」も同義です。
日本では1962年に「新産業都市建設促進法」が制定されました。
これは、日本各地に大規模な産業拠点をつくり、人と企業を地方に分散させて首都圏への集中を防ごうとするものでした。
ところが、予想を超える多くの自治体がその候補として名乗りを上げたため、いわば粗製乱造の様相を呈し、計画はうまく進みませんでした。
その後、1983年に、先端技術産業の地方誘致を促す目的で「テクノポリス法」が制定され、80~90年代の地域開発の基軸となりました。
しかし、地場産業との不適合や計画立案の画一化などさまざまな問題が浮上し、結局これも頓挫することになります。
つまり、過去のこれらの施策は、「地方に産業を移せば経済が活性化し、地方人口も増えるだろう」という考え方のもとで国が行ったことが、地域の実状とマッチせず失敗に終わった事例だと言うことができるでしょう。
こうした国主導の地域おこしの失敗を受けて、各自治体が主体となって自らの魅力を掘り起こし、賑わいを産もうとする試みが始まったのです。
地方創生の成功事例を把握する
自治体が主体となった地方創生の例を見てみましょう。
・閉校した学校の校舎や古民家を改装した宿泊施設
・地元の人々が運営する国際映画祭
・自然や歴史などの地域資源を生かした芸術祭
こうして見ると、地方創生には
②住民参加によるイベント活性化と地元愛の醸成
③上記①②による観光客の誘致
この3つが重要だと言えるでしょう。
その時々の時代のトレンドも意識しつつ、地域資源を活用して独自の魅力を生み出すこと、そしてそこに地域住民を巻き込むことで、新たな賑わいが生み出されています。
受験する自治体の取組はもちろんのこと、全国的に注目されている地方創生の成功事例をチェックして、具体的に把握しておきましょう。
構成の「型」を押さえよう!
地方創生の歴史と成功事例を押さえたら、いよいよ記述の練習です。
論文が苦手な人は、いきなり書き出してはいけません。
論文構成の「型」をしっかり頭に入れましょう。
①問われたことについての自分の意見
②現状分析とその問題点
③解決策や取組
④解決策や取組の根拠
⑤結論
公務員試験の過去問を例に、この「型」を使った構成の考え方を見ていきましょう。
【2019年】
<論文試験Ⅰ>
地域の住民や観光客が気付かない秋田県の魅力を一つ挙げ、その魅力を知ってもらい、また、活かしていくためにはどうすればよいか、あなたの考えを述べなさい。<秋田県庁>論文過去問を参照
①問われたことについての自分の意見
まずは、「問われていること」をしっかり把握しましょう。
ここでは、「地域の住民や観光客が気付かない秋田県の魅力を一つ挙げ」とあります。
つまり、一般的に広く認知されている名物や名所をそのまま挙げるのではなく、自分なりの独自性を出して「魅力」を提示することが求められています。
ここを外すと、この後どんなに立派な論文を書いても高い評価は得にくくなりますので注意が必要です。
「地域住民や観光客が気づいていない秋田県の魅力として、私は〇〇〇を挙げたい。」などと冒頭に明示し、その〇〇〇の概要についても簡潔に触れましょう。
これができるためには、受験する自治体について詳しく知っておくことが必須です。
②現状分析とその問題点
次に、冒頭で示した「〇〇〇」が非常に魅力的であるにもかかわらず、現状ではあまり認知されていないことと、その理由について述べます。
地方創生のカギとしてご紹介した「地域資源を活用した独自の魅力の創造」と「地域住民の参画」にからめて、その不十分さを指摘しましょう。
③解決策や取組
上で指摘した不十分な点への施策を提示します。
地域に眠っている資源をいかに再発見してブランド化するか、それに住民をどう巻き込むか、また、全国や海外へのPRの方法など、できるだけ具体的に論じましょう。
事前準備でリサーチした様々な自治体の成功事例を、ここで大いに活用しましょう。
④解決策や取組の根拠
③で示した解決策の根拠を述べます。
ここでも、リサーチしておいた過去の成功事例を挙げることで、根拠として説得力を持たせることができます。
ただし、過去の成功事例の単なる模倣としない意識を忘れないよう注意しましょう。
⑤結論
①で述べた自分の考えを、②~④を踏まえて結論として再提示します。
いかがでしょうか。
上記の①~⑤の構成の「型」は、基本的にどんな論文にも使うことができます。
加えて非常に大切なのが、上でもお伝えした事前の情報のインプットです。
特に「①問われたことについての自分の意見」や、「②現状分析とその問題点」を説得力を持って論じるためには、受験する自治体をはじめ、各地の地方創生の実例や課題の理解が欠かせません。
HPなどの最新情報をこまめにチェックし、調べたことをノートに整理しておきましょう。
特に、受験する自治体が観光資源としているもの、地域ブランドとしてアピールしているもの、これから掘り起こそうとしているもの、芸術文化関連の行事や施設については、詳しく見ておくことをおすすめします。
また、「③解決策や取組」の部分には、「自分ならこういう経験・能力を生かして、このように取り組む」という“自己のスキルアピール”をさらっと入れましょう。
今回例に挙げた過去問のように自己PRを直接的には求めていない場合、それをくどくどと書くのは逆効果になるので注意が必要ですが、課されたテーマの流れの中での自然なアピールはぜひ入れておきたいところです。
論文模範解答例(合格者答案)
地方創生はどの自治体でも出題可能性が高い頻出テーマですが、全国の論文過去問を分析すると、やはりどの県庁・市役所でも出題があります。
そこで、受験生の皆さんに参考にしていただくために、公務員試験論文道場で指導を受けた合格者の答案(模範解答例)を公開しています。
是非参考にしてくださいね。
地方の人口減少は今後も加速すると予想されるが、本県もその影響により経済力が低下し、県民生活に大きな悪影響を及ぼすおそれがある。また、都市部への人口流出を考えると、東京一極集中の状況は依然として解消されておらず、若い人の大都市での生活を志向する意識は強いのが現状だ。そこで、本県の人口減少に歯止めをかけて経済力の衰退を止めることが大きな課題になる。そのために、本県はどのような取組に力を入れるべきなのかを、以下に具体的に論じる。
第一に、県内の人口減少対策として、定住者増加の取組が考えられる。具体的には高校、大学を卒業する若年層に対して、安定的な雇用と生活の支援体制を充実させることで、地元への定住と進学先からのUターン移住を推進する。そこで、県内に企業を誘致し、地元採用と雇用の充実化を働きかけることが肝要だ。企業の本社移転が困難な場合は、リモートワークやワーケーションによる遠隔勤務のできる環境整備を行うという手段もある。また、都市部から県内に移住して、起業する者に対して補助金を出す事業も有効である。さらに、宿泊型移住体験プログラムの実施という取り組みも考えられる。本県での暮らしをリアルに実感してもらうことは、移住者増加に貢献するのではないだろうか。生活面のサポートについては、移住希望者向けにアドバイザー制度を充実させ、移住者が支援を受けられる体制の整備が必要である。SNSやウェブサイトでの情報発信を活用し、県の魅力を伝え、移住希望者の増加を図ることも有効だ。
第二に、観光業を柱として、経済を活性化する取組が効果的であると考える。そのため、県内の観光拠点をより魅力的に整備したり、新たな観光ルートの開拓を行ったりするなどの努力が必要である。一案として、住民にSNS等で呼びかけ、新たな観光スポットを発掘してもらうという取組も有効なのではないだろうか。また、行政と県内企業、各団体が一体となり、既存の有名な観光スポットの宣伝に工夫を凝らしたり、新たなスポーツイベントを誘致したりして、観光客の呼び込みを強化することで経済効果を生み出せると考える。本県ならではの魅力を活かした情報を発信すれば、県の魅力が伝わり、これまでよりも多くの観光客を呼び込むことができるだろう。
第三に、本県の関係人口を増やす取組である。案としては、地域の中小企業と協定を結び、そこを経由して都市部の若年層を県内に呼び込む事業を行う。副業解禁の流れに乗り、優秀な人材が都市で生活しながら県内の産業に携わるケースが増えているが、彼らは相互をつなぐパイプ役にもなり、地方の活性化に貢献するのではないだろうか。
以上のように、人口減少にブレーキをかけて本県の経済を活性化するために行政ができることは、若年層の呼び込みと、地域の強みを生かした取組であると考える。私は行政職員として、この問題に積極果敢に取り組み、地方創生の実現に向けて貢献していきたい。
終わりに
今回は、公務員試験の論文の頻出テーマ「地方創生」について解説しました。
「地方創生」を論じるにあたっては、「地域資源を活用した独自の魅力の創造」と「地域住民の協力・参画」を軸に論述することが肝心です。
その下準備として、受験する自治体の最新情報をチェックし、「観光資源」や「地域ブランド」、「文化・芸術関連のイベントや施設」に関する情報や、各地の成功事例をしっかり把握しておきましょう。
あとは、ご紹介した構成の「型」を使って、書く練習を積み重ねます。
書いたら、書きっぱなしにせず、必ず信頼できる人の添削を受け、くり返し書き直してよりよいものにしていくことが必須です。
今回お伝えしたことに沿って練習を繰り返せば、論文試験も怖くありません。
努力を積み重ねて、合格を勝ち取りましょう。
なお、下記の記事では全国の公務員試験の論文過去問をまとめています。
公務員試験受験生は是非参考にしてください。