一昔前に比べ論文試験に特化した教材が増え、インターネット上などでも公務員試験対策のノウハウを得やすくなりました。
論文は日本語で書きますし、全く聞いたことのないようなテーマが出題されるわけでもありませんから、「勉強しなくてもなんとかなる」と思ってしまう人も少なくありません。
ですが、実際には対策をせずに合格できる人はまずいません。
学校の試験のように「とりあえず必要な文字数は書いているからギリギリ合格点を取れる」ということは絶対にないのです。
そう言われると、
・中学校や高校で論文を書いたことはあるが、まともに作成できなかった
など不安を抱いている人もいるかもしれませんが、公務員試験の論文は「ある程度の暗記」と「練習」によって点を取ることができますから心配する必要はありません。
ただし、「本当に必要な暗記」と「適切な練習」をしないと時間を無駄にしてしまいます。
そこでこの記事では、公務員試験の論文対策を独学で進めていく方法を紹介していきます。
ちなみに、下記の記事では「公務員試験の論文頻出テーマ」をまとめています。
全国の市役所・県庁の出題傾向を徹底的に分析しているので、ぜひ読んでみましょう。
独学で対策をするときのポイント
まずは勉強方法を紹介します。
論文の「型」を知る
まずは論文の「型」を理解しないと勝負になりません。
例えば、
②問題の背景
③問題の解決策と根拠
④解決策を普及させる方法
⑤再結論
などの大まかな型に沿って書けるようになる必要があります。
日本人の感覚からはズレているかもしれませんが、論文においては「まず結論、そのあと説明」とするのがセオリーです。
また、原稿用紙の使い方のルール、例えば「。」や「、」で1マス使う、なども覚えなければなりません(こちらは1時間もあれば理解できます。そもそも知っている人もいるでしょう)。
このような型やルールを破っている論文は、それだけで減点される可能性が高いです。
また、型を知ることでこのようなメリットを得られます。
・論理展開が分かりやすい論文を書ける
とにかくまずは論文の型を覚えましょう。
なお、基本的な論文の書き方は下記の記事をご一読ください。
テーマに関する知識をつける
論文で出やすいテーマに関しても知識をつけていきましょう。
ただ、論文試験のテーマが決まっているわけではありませんから、突き詰めていくとキリがありません。
また、他の科目の勉強もありますから、メリハリも必要になります。
ですから「頻出テーマ」の勉強をしたうえで、志望先の論文過去問を参考にしながら対応可能なテーマを広げていくことをおすすめします。
公務員試験の論文で出やすいテーマは以下の通りです。
ニュースなどで目にする機会も多いでしょう。他のテーマとも結びつきやすい話題です。
公務員試験の論文において非常に出やすいテーマです。
災害大国日本。災害に対する具体的な解決策を提示できるようにしておきましょう。
「地域コミュニティの弱体化しているが、それをどうすればいいか」という方向性の出題がされやすいです。
デジタル化のメリット・デメリットを理解し、社会や自治体が抱える問題を見つけ出し、解決策を提示できるようにしましょう。
公務員試験の論文テーマとしてよく扱われています。「公務員」試験ですから「世界単位で環境問題をどうするか」ではなく、「公務員として環境問題をどうするか」という視点を持つことが大事です(これはこのテーマに限りません)。
日本の労働人口の減少などに関連させて出題される場合が多いです。
社会保障の限界からボランティアがより重要なものとなっています。とはいえボランティア団体に依存してはならない…などの視点が必要でしょう。
→日本の空き家率は年々増加しています。
これらのテーマが組み合わされて出題される場合もあります。
また、例えば「空き家問題が深刻なエリア(特別区など)では、空き家問題がテーマとして扱われやすい」などのエリアごとの傾向もあります。
なお、論文の頻出テーマについては下記の記事もご一読ください。
模範解答を読み込む
論文試験の模範解答を読み込むことで、
・テーマに関する知識をインプットできる
などのメリットが得られます。
「読み込む」という表現を使いましたが、実際には自分で書き写してみて、ある程度暗記してしまうことをおすすめします。
そうすれば本番の論文試験の出題を見たときに、「模範解答Aのあの部分と、模範解答Bのあの部分を組み合わせればいい」などと、自然に「論文を書く道筋」が見えるようになります。
論文と聞くと「ゼロから自力で考えて、文章を生み出す」のが理想と思えるかもしれませんが、実際には暗記科目に近い要素もあるということを理解しましょう。
ただし、それには「良質な模範解答」を使って勉強する必要があります。
インターネット上に出回っている「質の低い模範解答」を使うのはやめましょう。
ちなみに、自力で模範解答を作るという方法もないわけではありませんが、多大な時間と労力がかかりますし、やはり「本当に適切な模範解答になっているのか」を判断するのが困難ですからおすすめしません。
なお、下記の記事で「論文を1週間で極める模範回答の使い方」を紹介しているので是非読んでみましょう。
第三者の採点・添削を受ける
模範解答を何パターン暗記したとしても、実際に書くトレーニングをしないと、本番でスムーズに論文を作成することはできません。
ですから模試などで論文を書き、予備校などで専門の講師に採点・添削してもらうことをおすすめします。
論文対策をスタートすべき時期は?
論文の勉強は遅くても本番の3か月前にはスタートすることをおすすめします。
論文対策の参考書などの中には「1週間でマスター」「2週間でOK」などと書かれているものもありますが、真に受けない方がいいです。
また、実際には「始めるべき時期」はその人の状況によって違います。
一例として、
・前年受験したものの論文で大きなミスをした
・文章作成がとても苦手である
という人は、6~12か月前には勉強を始めるべきでしょう。
また、早く開始しておけば、例えば「かなりの余裕をもって間に合いそうだからペースを下げる」ということもできますが、その逆はほぼ不可能です。
焦って勉強しても身に付きにくいですし、他の分野の対策がおろそかになってしまうかもしれません。
なお、論文対策をいつから始めるべきかについては下記の記事もご一読ください。
論文対策で意識すべきこと
続いて、公務員試験の論文対策で意識するべきことについて解説します。
論理的で分かりやすい文章を書くこと
公務員試験の論文は、研究機関などの専門的な論文ではありませんから、それほど深い知識が求められるわけではありません。
知識のインプットにあまり時間をかけるのも非効率ですから気を付けてください。
本当に重要なのは、論理的で分かりやすい文章を書くことです。
例えば、読み手が以下のような感想を抱く論文は、「論理的でなく、分かりにくい」ということになります。
・「結論」も「根拠」も出しているものの、なぜそれらが結びつくのか分からない
・意味がわかりにくい部分がある
・2つの意味に取ることができる部分があり、どちらを主張したいのか判断できない
などです。
「型」を理解していればこのような失敗はしにくいものの、やはり第三者に見てもらわないと良質な論文を書けているかどうかは判断できないものです。
そのためやはり、予備校などで添削を受けることをおすすめします。
速く丁寧に書けるようにしていく
「綺麗」な字である必要はありませんが、「丁寧」でなければなりません。
字が汚いとそれだけで印象が悪くなりますし、殴り書きのような字になっていれば、それだけで足切りされる可能性もあります。
そして論文試験の制限時間は決して長くありませんから、速く丁寧に書くトレーニングをしましょう。
「そんなことは練習しなくてもできる」と感じるかもしれませんが、現代にはパソコンやスマートフォンがメインで、自分で字を書く機会が非常に少ない人もいます。
そういった人がいざ字を書いてみると、「力が入らず字がヨレる」「簡単な漢字を思い出せない(読めるのに書けない)」などといったことになりかねません。
実際にたった今、字を書いてみてはいかがでしょうか。「あれ、書けない!」と感じたのであれば要注意です。
早めに字を書くトレーニングを始めましょう。
油断せず普段の勉強のときから意識して、速く丁寧に書くようにしましょう(他の科目の勉強をするときも意識しましょう)。
そうすれば、試験本番で余裕が生まれます。
おわりに
ここまで独学で公務員試験の論文対策をする方法について解説しました。
大まかにまとめると、
・頻出テーマに関するインプットをする
・模範解答を読み、ある程度覚える
・自分で書いて添削を受ける
・速く丁寧に書く練習をする
ということをしていけば、高確率で合格することができます。
反対に、そもそも勉強をしなかったり勉強の仕方を間違えたりすると、論文試験でまともに点を取れなくなる可能性が高いです。
独学での対策にはリスクがあることを覚えておきましょう。
なお、下記の記事では「公務員試験の論文模範解答例を多数紹介」しているので併せて読んでみましょう。