公務員試験では、多くの組織(市役所・県庁など)で論文試験が実施されます。
初めて受験する方にとっては、
・論文を作る上でのポイントや注意点は?
・論文を書く上でのNG事項はある?
・学生時代の論文もまともに書けなかったけれど大丈夫?
などの疑問が数多くあることと思います。
そのような受験生の皆さんに向けて、今回は公務員試験の論文の書き方と注意点を紹介していきます。
本記事で分かることは次の通りです。
・論文のNG例事項6選
・論文の書き方
・公務員試験ならではの論文のポイント
・論文で高得点を取る勉強法
作文の書き方や注意点については下記の記事で解説しているので、論文試験を受験予定の人は併せてご一読ください。
良い論文はポイントを押さえることさえできれば書けるようになるので、センスは不要です。
これまでほとんど論文を書いた経験のない人や、学生時代の論文で良い点を取れたことがない人でも、このやり方を実践することでハイレベルな論文を書けるようになるので、本記事を参考に論文対策を進めていきましょう。
ちなみに、下記の記事では公務員試験の論文頻出テーマをまとめています。
全国の市役所・県庁の出題傾向を徹底的に分析しているので、ぜひ併せて読んでみてください。
論文を書き始める前にすること

論文を書くといっても、その前に書く内容を整理する作業を行わなければ始まりません。
ここで、「とりあえず思いついたことを書いていけばいいんじゃないの?」と思った人は要注意です。
実は、論文を書く際に絶対にやってはいけないのは、全体像を考えずにとりあえず書き始めてしまうことです。
これは言い換えると「書きながら考えていく」ということになりますが、このやり方で無事に着地して合格できる論文を書ける人はほとんどいません。
そのため論文を書く上では、まず書く内容を整理しておくことが重要です。
論文を書き始めるまでの流れをまとめると以下の通りです。
②問われていることを整理する
③構成を考える
↓
書き始める
遠回りしているように見えるかもしれませんが、結局のところこれが最も効率的であり、率直に言って他に適切な方法はないのです。
特に論文が苦手な方はこの順序を無視して書き始めてしまう傾向があるため、必ず内容を精査してから取り掛かりましょう。
【要注意!】論文のNG事項6選

公務員試験の論文では「美しい文章を書こう」と考えるのではなく、「足切りされない文章を書く」という意識を持つことが大切です。
実際、論文試験においては最低限厳守しなければならないポイントがいくつかありますが、仮にそのポイントを破っている場合、文章を全部読んでもらう前に不合格と判断されてしまう可能性が高くなってしまうのです。
以下に6つのNG事項を挙げるので、一つずつ見ていきましょう。
①指定文字数の7割未満
まずは、指定文字数の7割未満となっている答案です。
7割未満というのは、採点すると「かなりスカスカだな」「やる気がないな」という印象を受けてしまいます。
他の受験生がしっかり書いていればなおさら、文字数の少なさは際立ちます。
ただ、適切に論文を書いていけば自然と7割は超えるはずなので、ここに関してはあまり心配する必要はないでしょう。
基本的に、7割未満の文字数で内容に過不足のない論文を書くことは難しいからです。
また、指定文字数を超えるのも当然厳禁です。
例えば「2~3文字超えたので欄外に書く」といったことをしてしまうと、ルールを守っていないと判断されてしまうので注意しましょう。
②字が丁寧ではない
いわゆる美しい字である必要はありませんが、汚い字となると採点者からの評価はあまり良くありません。
最後まで読んでもらえたとしても、「読みにくいな」という印象のまま読み進められることになるので、高評価を得ることは難しいでしょう。
「字が綺麗なこと」と「字が丁寧なこと」はイコールではありません。
そのため、仮に字の綺麗さに自信がなくとも、日頃から文字を丁寧に書く練習をすることが大切になります。
例えば、普段からパソコンで論文を作成する→本番のみ手書きという手法の方は要注意です。
全く字を書かない生活を続けていると驚くほど字が下手になるので、特に普段から字を書く機会が少ない人は気を付けるようにしてください。
しかも普段から字を書かないでいると、本番で漢字や言葉が出てこないという状況に陥りやすくなります。
実際に文字を書くことも受験勉強の一つと考え、普段から練習をしておきましょう。
ちなみに文字の書き方に自信のない人は、「とめ・はね・はらい」を意識したり、全体の文字の大きさをそろえたりするだけでもだいぶ印象が変わるので実践してみてください。
③名前を書き忘れる
信じられないかもしれませんが、名前を書き忘れる受験生が毎年それなりの人数います。
大きなプレッシャーの中で試験を受けることになるため、書き忘れてしまう人が一定数いるのでしょう。
しかし名前を書き忘れてしまっては、どの受験生が書いた答案なのかが分からず点数を付けることが難しくなります。
そのため、答案用紙をもらって試験が始まったらすぐに名前を書くようにしてください。
「論文を書き終えたら名前を書こう」「自分は大丈夫」などと考えている人ほど、忘れてしまう可能性が高いので注意しましょう。
このような事態を防ぐおすすめの対策としては、普段の論文を書くトレーニングにおいても最初に名前を書く習慣をつけることです。
そして当たり前ですが、名前も丁寧な文字で書くことを忘れないでくださいね。
④文章構成が悪すぎる
文章構成が悪い論文には、以下のようなものが少なくありません。
・同じことを何度も言っている
・「よって~である」と書かれているが、そこに至る「理由」が書かれていない
このようなでたらめな構成の文章は減点される可能性が高いです。
最初にお伝えした通り、論文を書き始める前に書く内容を整理しておけば、このように文章構成がおかしくなることはありません。
全体の流れから逸脱せずに書き上げるようにしましょう。
⑤論点がズレている
論点のズレは論文においてご法度です。
答えるべき問いに答えられていないのですから、当然と言えば当然です。
例えば「あなたの考えを述べよ」と問われているのに、「問題点を並べるだけ」という論文がしばしば見受けられますが、列挙している問題点自体は合っていても論点が完全にズレているため、こうした論文は大幅減点となる可能性が高いです。
そのため、論文を書き始める前に問題文をしっかりと読み、何について論述しなければならないのかを正確に把握することから始めなくてはなりません。
⑥最後まで書けていない
最初に全体の流れを決めずに書いたり、そもそも論文を書くトレーニングの回数が少なかったりすると、最後まで書けないという事態になってもおかしくはありません。
実際、最後まで書ききることができずに不合格となっている受験生が毎年います。
指定字数を満たすというのは必須条件となるので、日頃から制限時間内に書ききる練習をしておきましょう。
また、残念ながら公務員試験の論文は学生時代の論文とは異なり、「本論以外は書けているのだからそれなりの点数をあげよう」という甘い評価はありません。
全体を通して完成度の高い論文であることは公務員試験においてとても大切なポイントなので、受験生の皆さんはぜひ注意してください。
【5ステップ】論文の書き方

公務員試験の論文は最初の「構成」が命であり、構成がうまくできればほぼ成功していると言っても過言ではありません。
具体的な構成のやり方について解説していきましょう。
①課題を把握する(定義)
論文では、課題がどのような現状か、どのように認識しているか(どう捉えているか)を最初に書くのが定石です。
例えば「地球温暖化」が課題となっている場合には「温暖化とは~」などと書き始め、課題の状況が実際どのようになっているのか、客観的に分析して具体的に書き進めていきます。
ここでは客観的に書くことがポイントになるので、例えば「温暖化なんてものはそもそもウソである」「今さら温暖化は止められない」などの極端な主張や主観を入れるのはNGです。
②その問題が発生した原因を捉える(背景)
次に、問題が発生した原因について分析します。
原因が不明のままでは、具体的な解決策について書くことはできないからです。
きちんと原因を追究できれば、例えば「人口減少」が課題の場合には、
出生率が下がったことが原因で人口が減少し、労働人口も減少傾向にある。そのため、出生率を上げて人口減少を食い止めなくてはならない。
などと書くことができます。
③今後発生する可能性がある問題について予想する(問題提起)
現時点で問題になっていることを交えつつ(根拠にしつつ)、「今後このような問題が起きる可能性があります」と問題提起をすると解決策が見えてきます。
そして、ここまでの①定義・②背景・③問題提起をまとめて「序論」と言います。
序論は全体の2~3割ほどに留め、全体のバランスを考えて書き上げるようにしましょう。
④問題の解決策について書く(解決策)
解決策とは、自分で提起した問題の答えのことを意味するため、この部分が論文において一番大事なパートとなります。
「私はこのような問題があると考えている→その問題はこのようにして解決できる」という流れですね。
解決策は全体の6~7割ほどで書いていきます。
論理的な説明が多くなる「論文の中心」となる部分なので、一番ボリュームが大きくなるように調整します。
⑤問題と解決策についてまとめる(結論)
最後に、結論を書いて締めます。
「本論で細かく述べているのでまとめは書かない」という人もいますが、これをすることで、論文全体の見た目も美しくスッキリまとまりやすくなります。
ここまでで9割前後は書いているはずですから、結論は全体の1割ほどになります。
結論での注意点としては、この段階でもう一度「問題+解決策」に関して詳しく記述しないことです。
詳しい主張は本論で既に述べているので、結論では今後の方向性のようなものを記述すると文章にまとまりが出ます。
また、文章量が序論よりも多いとバランスが悪くなるので注意しましょう。
例えば「少子化」が課題の場合、
少子化を原因とする問題は、この先さらに悪化し得る。より一層少子化対策に力を入れ、少子化を食い止めなくてはならない。
などとなるでしょう。
こうした締めくくり以外に、例えば最後の一文で「今後○○職員として貢献していきたい」などの抱負を述べる形でもよいでしょう。
【公務員試験ならでは】論文を書くときのポイント

論文の書き方を理解できたところで、公務員試験の論文ならではのポイントを紹介します。
大学のレポートや学校の論文などと比較すると注意すべき点が異なるので、違いをしっかり理解し論文に反映しましょう。
①公務員の立場で論じる
公務員試験の論文では「○○(市役所職員、警察官など)としてどうしたいか」という出題が比較的多く、論文を通して公務員の立場になって考えることが求められています。
そのため、例えば「WHOと連携して~」などと書くと、公務員という立場からの考えではなくなるため、大きく減点されてしまうかもしれません。
「自分が地域のボランティア活動に参加して~」なども一見イメージは良さそうですが、公務員の立場が直接関係するわけではありません。
公務員の立場になって書くためには、事前に志望先の取組や関連情報についてしっかり調べておくことが重要です。
試験本番でいきなり書けるようにはならないので、日々少しずつ情報収集していきましょう。
②必ず自分の主張を入れる
公務員試験の論文においては、単に知識を並べるだけではだめです。
学校の小論文などであれば知識の羅列でも途中点をくれたり、ギリギリ合格点をくれたりすることもあるかもしれませんが、公務員試験ではそのようなことはありません。
なぜなら、試験官が最も重視しているのは受験生の主張や考えだからです。
もちろん論文を書くにあたって背景知識などは必要ですが、それが一番重要か?と言われるとそういうわけでもないのです。
それよりも「そこから自分が何を考え、どうすべきと思うのか」をきちんと述べられるようにしておくことが最も重要です。
③一文を短くする
論文の読みやすさを上げるために誰でも今日から実践できることとして、一文を短くするということが挙げられます。
例えば、
のような文章だと、一文が長くて読みにくいですが、
などと一文を短く区切ってあると、格段に読みやすくなります。
また一文を長くしてしまうと、自分で後から読み返して確認するときにも分かりにくくなってしまいます。
一般的な論文や作文の場合、一文を80~120字以内にするべきとよく言われていますが、公務員試験の論文では、できれば60字以内くらいに収めるのが理想です。
特に100字を超えてくると読みにくさを感じやすくなるので注意が必要です。
論文で高得点を取る勉強法!

さて、ここまで論文の書き方について解説してきました。
しかし中には、
・書き方は分かってもどうやって勉強していいのか分からない
と途方に暮れている人もいるかもしれません。
そこでここからは、誰でも高得点を目指せる勉強方法について解説していきます。
①模範解答を読み込む(暗記する)【おすすめ模範解答集も紹介】
これまで解説してきたようなやり方を実践に移したとしても、いきなり完成度の高い論文を書くのは難しいでしょう。
そのため、まずは論文の模範解答を読み込む(暗記する)という方法をとるのがおすすめです。
いくつか模範解答に触れていくと、文章の構成について理解できるようになります。
また、機械的に読んだり写したりするのでない限りは、テーマごとの知識もある程度入れることができます。
自分で一から模範解答を作ろうとしてしまうと、時間がかかりすぎてしまい他の試験対策に支障をきたしてしまいかねません。
また、仮に作成できたとしても、第三者から添削を受けたものではない限りは「自分で書いたものが模範解答である」という確信を持つこともできないでしょう。
そのため、模範解答に頼ることが合格への近道であると言えます。
特に近年は、合格者の多くが模範解答集を使っている傾向にあるため、他の受験生と差をつけられないためにも、模範解答を手元に準備しておくのが得策です。
なお、論文道場では公務員試験講師が執筆した模範論文を無料公開しています。
下記の記事では公務員試験の論文模範回答例を多数紹介しているので、論文対策にぜひ活用してください。
あわせて、論文予想テーマを集約した自治体別の模範解答セットも提供しているので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
②メモリーツリーを使う
メモリーツリーとは、課題に対して思いついたことをとにかく書いていくという手法のことです。
例えば、「あなたの理想の公務員像」がテーマであれば、
| 理想の公務員像 | ||
| 「住民目線で考えられる」 ↓ 学生の頃そういう公務員が 良いと思った ↓ : |
「住民が相談しやすい」 ↓ 実際に窓口で親切に 対応された経験 ↓ : |
「自治体が理想とする人」 ↓ 自治体の問題を 解決できる人物 ↓ 自治体の問題とは? |
などと広げていきます。
こうすると、論文で書く内容が定まりやすくなります。
内容が決まったら、箇条書き形式で論文を書いてみましょう。
このトレーニングを続けているうちに、徐々にメモリーツリーを使わず、かつ箇条書きでなく正式な文章の形で書けるようになっていきます。
特に論文に苦手意識を持っている人は、このように情報を一つずつ整理するところからやっていきましょう。
まとめ
公務員試験の論文は、学生の小論文や作文のように「文字数が足りてさえいれば最低限の点はもらえる」ということはなく、要点を押さえていないと大きく減点されてしまうシビアな試験です。
ですから、まずは今回紹介した文章構成や、公務員試験の論文ならではの注意点についてきちんと理解しておくことが大切です。
理解ができたら本記事で説明したステップを参考に、実際に論文を書いてみましょう。
「まだ書けない」という人も、メモリーツリーを活用して箇条書きスタイルから始めてみてください。
なお、論文道場では【論文予想テーマセット】を提供しています。
県庁・市役所の出題傾向を分析し、予想テーマと模範解答としてまとめたセットとなっています。
自治体別に対応しているため、あなたの志望先に特化して対策することができます。




