公務員試験の論文について、
・論文を作る上でのポイントや注意点は?
・論文を書く上でのNG事項はある?
・学生時代の論文もまともに書けなかったけれど大丈夫?
上記のことが気になっている方に向けて、「公務員試験の論文で高得点を取る書き方」を紹介していきます。
これまでほとんど論文を書いた経験のない方や、学生時代の論文で良い点を取れたことがない方でも、このやり方を実践することでハイレベルな論文を書けるようになるのでご安心ください。
良い論文は「ポイントを抑えること」さえできれば書けるようになり、センスは不要です。
ちなみに、下記の記事では「公務員試験の論文頻出テーマ」をまとめています。
全国の市役所・県庁の出題傾向を徹底的に分析しているので、ぜひ読んでみましょう。
知っておくべき「全体の流れ」
まず初めに、絶対にやってはいけないのは「全体像を考えずにとりあえず書き始めてしまうこと」です。
言い換えると「書きながら考えていく」ということになりますが、このやり方で無事に着地して「合格できる論文」を書ける人はほとんどいません。
そのため、全体の流れは以下のように進めていくことが肝となります。
②必要事項を整理する
③結論をはっきりと出しておく
④文章全体の流れを決める
⑤書き始める
遠回りしているように見えるかもしれませんが、結局のところこれが最も効率的であり、率直に言って他に適切な方法はありません。
NG事項6つ
公務員試験の論文では「美しい文章を書こう」と考えるのではなく、「足切りされない文章を書く」という意識を持つ必要があります。
実際、論文試験においては最低限厳守しなければならないポイントがいくつかあり、仮にそのポイントを破っている場合、文章を全部読んでもらう前に不合格と判断されてしまう可能性が高くなってしまいます。
以下に6つのNG事項を挙げるので、一つずつ見ていきましょう。
指定文字数の7割未満
(本当は8割くらいでもNGかもしれませんが)指定文字数の7割未満となってくると、読む側としては「スカスカだな」「やる気がないな」という印象を受けてしまいます。
ただ、適切に論文を書いていけば自然と7割は超えるはずなので、ここに関してはあまり心配する必要はないでしょう。
基本的に、7割未満の文字数で内容に過不足のない論文を書くことはまずできないからです。
また、指定文字数を超えるのも当然厳禁です。
例えば「2~3文字超えたので欄外に書く」といったことをしてしまうと、ルールを守っていないと判断されてしまうので注意しましょう。
字が丁寧ではない
いわゆる「美しい字」である必要はありませんが、「汚い字」となると面接官に読んでもらえません。
仮に読んでもらえたとしても、「読みにくいな」と印象が良くない状態で読み進められることになるので、高評価を得ることは難しいでしょう。
「字が綺麗なこと」と「字が丁寧なこと」はイコールではありません。
そのため、仮に字の綺麗さに自信がなくとも、日頃から文字を「丁寧に書く」練習をすることが大切です。
また、「汚い字になりやすくなる習慣」として、例えば「普段の論文(&その他の分野)の勉強をずっとパソコンで行う→本番のみ手書き」という方法が挙げられます。
このように、全く字を書かない生活を続けていると驚くほど字が下手になるので、特に普段から字を書く機会が少ない人は気を付けるようにしてください。
さらに、普段から字を書かないでいると、本番で「漢字や言葉が出てこない」という状況にもなりやすくなってしまいます。
実際に文字を書くことも受験勉強の一つと考え、普段から練習をしておきましょう。
ちなみに、文字の書き方に自信のない人は、「とめ・はね・はらい」を意識したり、全体の文字の大きさをそろえたりするだけでもだいぶ印象が変わるので実践してみてください。
名前を書き忘れる
信じられないかもしれませんが、名前を書き忘れる受験生が毎年それなりの人数います。
大きなプレッシャーの中で試験を受けることになるため、書き忘れてしまう人が一定数いるのでしょう。
そのため、答案用紙をもらって試験が始まったら、すぐに名前を書くようにしてください。
「論文を書き終えたら名前を書こう」「自分は大丈夫」などと考えている人ほど、忘れてしまう可能性が高いので注意しましょう。
このような事態を防ぐおすすめの対策としては、普段の論文を書くトレーニングにおいても最初に名前を書く習慣をつけることです。
当たり前ですが、名前も丁寧な文字で書くことを忘れないでくださいね。
文章構成が悪すぎる
「文章構成が悪い論文」には以下のようなものが少なくありません。
・同じことを何度も言っている
・「よって~である」と書かれているが、そこに至る「理由」が書かれていない
このようなでたらめな構成の文章では、評価を得ることができず不合格になってしまいます。
最初にお伝えした通り、まず「全体の流れ」を決めてから書き始めることができれば、このように文章構成がおかしくなることはありません。
全体の流れから逸脱せずに書き上げるようにしましょう。
論点がズレている
論点がズレているのは、論文においてご法度です。
答えるべき問いに答えられていないのですから、当たり前と言えば当たり前です。
例えば、「あなたの考えを述べよ」と問われているのに「問題点を並べるだけ」という論文がしばしば見受けられます。
列挙している問題点自体は合っていても論点が完全にズレていますから、こういった論文は当然不合格となってしまいます。
そのため、論文を書き始める前に問題文をしっかりと読み、何について論述しなければならないのかを正確に把握することから始めなくてはなりません。
最後まで書けていない
最初に全体の流れを決めずに書いたり、そもそも論文を書くトレーニングの回数が少なかったりすると、「最後まで書けない」という事態になってもおかしくはありません。
実際、最後まで書ききることができずに不合格となっている受験生が毎年います。
指定字数を満たすというのは必須条件となるので、日頃から制限時間内に書ききる練習をしておきましょう。
また、残念ながら公務員試験の論文は、学生時代の論文とは異なり「本論以外は書けているのだから、それなりの点数をあげよう」ということはありません。
全体を通して完成度の高い論文であることは公務員試験においてとても大切なポイントなので、受験生の皆さんはぜひ注意してください。
論文の「構成」の作り方
公務員試験の論文は最初の「構成」が命であり、構成がうまくできればほぼ成功しているといっても過言ではありません。
それでは「論文形式」「作文形式」に分けて、構成の仕方について解説していきましょう。
論文形式の5ステップ
まずは「論文形式」の場合について解説します。
①課題を把握する(定義)
論文形式の場合、「課題に対してどのように認識しているか(どう捉えているか)」を最初に書くのがセオリーです。
一例として「温暖化とは~」など、「課題が指す状況」がどのようなものなのか、客観的に分析して具体的に書き進めていきます。
ここでは「客観的に書く」というのがポイントになるので、例えば「温暖化なんてものはそもそもウソである」「今さら温暖化は止められない」などの極端な主張や主観を入れるのはNGです。
②その問題が発生した原因を捉える(背景)
次に、問題が発生した原因について分析します。
原因が不明のままでは、具体的な解決策について書くことはできないからです。
きちんと原因を追究できれば、例えば以下のように、
出生率が下がったことが原因で人口が減少し、労働人口も減少傾向にある。
そのため出生率を上げて、人口減少を食い止めなくてはならない。
などと書くことができます。
③今後発生する可能性がある問題について予想する(問題提起)
「現時点で問題になっていること」を交えつつ(根拠にしつつ)、「今後このような問題が起きる可能性があります」と問題提起をすると解決策が見えてきます。
そして、ここまでの①定義・②背景・③問題提起をまとめて「序論」といいます。
序論は全体の2~3割ほどに留め、全体のバランスを考えて書き上げていきましょう。
④問題の解決策について書く(解決策)
「解決策」とは「自分で提起した問題の答え」のことを意味するため、この部分が論文において一番大事なパートとなります。
「私はこのような問題があると考えている→その問題はこのようにして解決できる」という流れですね。
解決策は全体の6~7割ほど書いていきます。
論理的な説明が多くなる「論文の中心」となる部分なので、一番ボリュームが大きくなります。
⑤問題と解決策についてまとめる(結論)
最後に「まとめ」を書いて締めます。
「本論で細かく述べているのでまとめは書かない」という人もいますが、これをすることで、論文全体の見た目も美しくスッキリまとまりやすくなります。
ここまでで9割前後は書いているはずですから、結論は全体の1割ほどになります。
結論での注意点としては、この段階でもう一度「問題+解決策」に関して詳しく記述しないことです。
詳しい主張は本論で既に述べているので、結論では今後の方向性のようなものを記述すると文章にまとまりが出ます。
また、文章量が序論よりも多いとバランスが悪いので注意しましょう。
一例としては、
少子化を原因とする問題は、この先さらに悪化し得る。
より一層少子化対策に力を入れ、少子化を食い止めなくてはならない。
などとなるでしょう。
こうした締めくくり以外に、例えば最後の一文で「今後○○職員として貢献していきたい」などの抱負を述べるというのもアリです。
結論を短い文章で書き上げることも意外と難しいですから、しっかり練習しておきましょう。
作文形式の4ステップ
続いて、「作文形式」の場合について解説します。
作文形式では論文形式とは異なり、「あなたの考え」や「感じたこと」を書くケースが多いのが特徴です。
一例として、
・あなたが一番大事にしていること
・あなたが最も努力したこと
・あなたが考える「チームワークの大切さ」とは
などがあります。
論文形式よりは比較的簡単ではありますが、文章構成がおかしければ当然点数はもらえないので注意しましょう。
①自分の主張(結論)
作文形式の試験では基本的に「その受験生の考え」を聞いているため、基本的にまず自分の主張(結論)を述べるのがセオリーです。
例えば「あなたの理想の公務員像」というテーマであれば、
私の理想の公務員像は、住民(国民)目線で考え行動する人です。
などとなります。
②その結論になる理由(理由)
次に、その結論に至った理由を述べます。
一例としては、
常に住民(国民)目線で考え行動することで、住民(国民)が暮らしやすい街をつくることができるからです。
などです。
上記の例は「ほぼ誰から見ても正しい一般論」でもあります。
だからこそ、何も考えていないと「理由」を述べることができなくなってしまうので気を付けましょう。
③その理由の裏付け(根拠)
次に、「なぜその理由になるのか」という根拠を説明していきます。
例えば、「○○という取組をすることで、□□が○%アップしたというデータがある」という具体的な数値や、「私自身、○○を体験しており~」などと自分の経験を交えることができると説得力を出すことができます。
論文では客観性が重要視されるため、基本的にはデータなどをもとに記述していくことになりますが、作文はテーマによって多少自分の経験(主観)を入れても問題ない場合が多いです。
根拠が薄いと判断されないように、なるべく具体的な内容を記述しましょう。
④もう一度結論を述べる(再結論)
最後に、作文の冒頭で出した結論をもう一度出します。
結論→理由→根拠と様々述べていくと、読み手が「結局何が言いたいんだっけ?」と混乱する可能性があるため、まとめを書きます。
最後に「だから私は○○だと思っている」と再度書くことで、読みやすさを格段に上げることができます。
「試験官の心情」という観点からも、好ましい構成となるでしょう。
論文に関する注意点
形式ごとの書き方を理解できたところで、続いて「公務員試験の論文ならではの注意点」を挙げます。
大学のレポートや学校の論文などと比較すると注意すべき点が異なるので、違いをしっかり理解し論文に反映しましょう。
①公務員の立場になって作成する
公務員試験の論文では「○○(市役所職員、警察官など)としてどうしたいか」という出題が比較的多く、論文を通して「公務員の立場になって考えること」が求められています。
そのため、例えば「WHOと連携して~」などと書くと、公務員という立場からの考えではなくなるので大きく減点されるかもしれません。
「地域のボランティア活動に参加して~」なども一見イメージは良さそうですが、公務員の立場が直接関係するわけではないため減点される可能性が高いです。
公務員の立場になって書くためには、事前に志望先の取組や関連情報についてしっかり調べておくことが重要です。
試験本番でいきなり書けるようにはならないので、日々少しずつ情報収集していきましょう。
②必ず自分の主張を入れる
公務員試験の論文においては、単に知識を並べるだけではほぼ間違いなく不合格になります。
学校の小論文などであれば、「知識の羅列」でも途中点をくれたりギリギリ合格点をくれたりすることもあるかもしれませんが、公務員試験ではNGです。
なぜなら、試験官が最も重視しているのは「書き手の主張・考え」だからです。
もちろん論文を書くにあたって背景知識などは必要ですが、それが一番重要か?と言われるとそういうわけでもないのです。
それよりも「そこから自分が何を考え、どうすべきと思うのか」をきちんと述べられるようになることが大切です。
③一文を短くする
論文の読みやすさを上げるために誰でも今日から実践できることとして、「一文を短くする」ということが挙げられます。
例えば、
のような文章だと、一文が長くて読みにくいですが、
などと一文を短く区切ってあると、格段に読みやすくなります。
それに、一文を長くしてしまうと、自分で後から読み返して確認するときにも分かりにくくなってしまいます。
一般的な作文の場合、一文を80~120字以内にするべきとよく言われていますが、公務員試験の論文に関しては、できれば60字以内くらいに収めるようにしましょう(もちろん目安なので柔軟に考えてください)。
特に、100字を超えてくると読みにくさを感じやすくなるので要注意です。
ちなみに、ある文章校正のプロは「一文を長くすると賢く見えると思い込んでいる人がいる。だがそれは全くの逆である」と語っています。
高得点を取る秘訣
さて、ここまで論文の書き方について解説してきましたが、中には、
「文章を書くこと自体が苦手」
「そもそもどうやって勉強していいのか分からない」
と途方に暮れている人もいるかもしれません。
そこでここからは、誰でも高得点を目指せる勉強方法について解説していきます。
模範解答を読む・真似する
これまで解説してきたようなやり方を実践に移したとしても、いきなり完成度の高い論文を書いていくのは難しいでしょう。
そのため、まずは論文の模範解答を読んで・書き写すという方法をとるのがおすすめです。
いくつか模範解答に触れていくと、文章の構成について理解することができるようになります。
また、機械的に読んだり写したりするのでない限りは、テーマごとの知識も入れることができます。
自分で一から模範解答を作ろうとしてしまうと、時間がかかりすぎてしまい他の勉強に支障をきたしてしまいかねません。
また、仮に作成できたとしても、第三者から添削を受けたものではない限りは「自分で書いたものが模範解答である」という確信を持つこともできないでしょう。
そのため、素直に模範解答集に頼ることが合格への近道であると言えます。
合格者の多くは模範解答集を使っていますから、「模範解答を利用するなんてズルい」などと考える必要は一切ありません。
なお、下記の記事で「公務員試験の論文模範解答」を多数紹介しているのでぜひ読んでみましょう。
メモリーツリーを使う
メモリーツリーとは、「課題に対して思いついたことをとにかく書いていく」という手法のことです。
例えば「あなたの理想の公務員像」がテーマであれば、
理想の公務員像 | ||
「住民(国民)目線で考えられる」 ↓ 学生の頃そういう公務員が 良いと思った ↓ : |
「住民(国民)が相談しやすい」 ↓ 実際に窓口で親切に 対応された経験 ↓ : |
「自治体が理想としている人物」 ↓ 自治体の問題を 解決できる人物 ↓ 自治体の問題とは? |
などと広げていきます。
こうすると、論文で書く内容が定まりやすくなります。
内容が決まったら、まずは箇条書きからでも構わないので実際に論文を書いてみましょう。
このトレーニングを続けているうちに、徐々にメモリーツリーを使わず、かつ箇条書きでなく正式な文章の形で書けるようになっていきます。
特に論文に苦手意識を持っている人は、このように情報を整理するところからやってみると良いと思います。
おわりに
公務員試験の論文は、要点を抑えていないと採点すらしてもらえないかもしれません。
高校生くらいまでの小論文や作文のように「文字数が足りてさえいれば最低限の点はもらえる」ということはないのです。
ですから、まずは今回紹介した文章構成や、公務員試験の論文ならではの注意点についてきちんと理解しておくことが大切です。
理解ができたら本記事で説明したステップを参考に、実際に論文を書いてみましょう。
「まだ書けない」という人も、メモリーツリーを活用して箇条書きから始めてみることをおすすめします。
なお、論文道場では【論文予想テーマセット】を提供しています。
県庁・市役所の出題傾向を分析し、予想テーマと模範解答としてまとめたセットです。
自治体別に対応していますから、あなたの志望先に特化して対策することができます。